2012-01-01から1年間の記事一覧

マスクの大小

レンタルDVD 「東京暮色」(1957年、松竹)※三度目 監督小津安二郎/脚本小津安二郎・野田高梧/笠智衆/原節子/有馬稲子/山田五十鈴/中村伸郎/杉村春子/信欣三/高橋貞二/藤原釜足/山村聰/宮口精二/浦辺粂子/三好栄子/長岡輝子/桜むつ子/菅原…

葉山にてふたたび松本竣介

松本竣介展@神奈川県立近代美術館(葉山館) 美術館に行くということで、妻を日曜の葉山ドライブに誘い出した。わが家族のなかでもっとも絵心のある次男もついてきた。長男は自宅で留守番するという。神奈川県立近代美術館の葉山館を訪れるのは二度目だが、…

対照的な日本画

吉川霊華展 近代に生まれた線の探求者@東京国立近代美術館 所蔵作品展@東京国立近代美術館 最近毎週金曜日の仕事帰りは美術館通いが習慣になってきた。 現在東京国立近代美術館で開催されている所蔵作品展(常設展)の会期後半に、鏑木清方の「明治風俗十…

ブリヂストン美術館ふたたび

あなたに見せたい絵があります。―ブリヂストン美術館開館60周年記念@ブリヂストン美術館 このところ毎週のように金曜日は仕事帰りに美術館に立ち寄っている。やらねばならないことがあまりに多すぎて、せめて絵を観て頭をすっきりさせたいという気持ちなの…

震災後の洲之内コレクション

常設展@宮城県立美術館 毎年この季節は、出身大学・研究室の同窓学会があって、なるべく仙台に行くようにしている。先生や先輩・同輩・後輩に会うことはもちろんだが、第二の故郷である仙台は、その町にいるだけでいい心持ちになるからだ。 同窓学会では、…

カフェ・パウリスタを観に

所蔵作品展「近代日本の美術」@東京国立近代美術館 子どもにあわせて早起きしているため、とにかくこのところ金曜日になるとがっくり疲れてくる。 東京国立近代美術館開館60周年の公式ツイッターにて、大好きな長谷川利行の「カフェ・パウリスタ」をめぐる…

ふーらふらふら

世紀の大怪優2 西村晃MAGIC@ラピュタ阿佐ヶ谷 「月は地球を廻ってる」(1959年、日活) 監督春原政久/脚本大川久男/岡田真澄/中島そのみ/西村晃/小沢昭一/中村万寿子 この時期の日活映画はアクションの裏でいろいろ見所のある作品が多いので、期待し…

畑違いに惹かれる心理

今年は新田次郎生誕100年だという。新田次郎は、明治45年(大正元=1912)6月6日、長野県上諏訪町に生まれた。 書店に新潮文庫の新刊が並んでおり、まず目に入ったのは、『小説に書けなかった自伝』*1だった。手に取ってパラパラとめくり、少し心が動いたも…

インスタントコーヒーの飲みすぎは

堀江敏幸さんの新作『燃焼のための習作』*1(講談社)を読み終えた。 大好きな長篇『河岸忘日抄』と対になる作品らしいということで、初出掲載誌である『群像』2012年1月号を買ってまで読もうとしたのだが、途中で頓挫したまま単行本の発売を迎えてしまった…

パリへのあこがれ

丸の内ピカデリー 「ミッドナイト・イン・パリ」(Midnight in Paris、2011年) 監督・脚本ウディ・アレン 小林信彦さんの本を読んでいると、クリント・イーストウッドやウディ・アレンが高く評価されていて(最新刊『非常事態の中の愉しみ』*1)、洋画を観…

再読の連鎖

原田マハさんの長篇小説『楽園のカンヴァス』*1(新潮社)が、画家アンリ・ルソーをめぐるミステリであるということを知ったとき、頭に浮かんだのは、仏文学者岡谷公二さんによるルソーの評伝『アンリ・ルソー 楽園の謎』*2(中公文庫)のことだった。 手も…

第101 そしてY市へ

松本竣介展を観に行き、「Y市の橋」探訪への気持ちが高まってきてはいたけれども、もう少し間をおいてからと思っていた。ところが、ふと思い立って松本竣介展についてつぶやいている人がいないかとツイッターの検索をかけてみたところ、「Y市の橋」に描か…

岩手で観る松本竣介

生誕100年松本竣介展@岩手県立美術館 今年のゴールデンウィーク、無謀にも妻の実家がある岩手に帰省することにした。渋滞が嫌なので最初渋っていたけれども、盛岡にある県立美術館にて松本竣介展が開催中であることを知り、ならばと行くことに決めた。とこ…

山形人にとっての高橋由一

近代洋画の開拓者 高橋由一@東京藝術大学大学美術館 おそらくこの展覧会の中心的な企画者なのだろう、芸大の先生である古田亮さんの『高橋由一―日本洋画の父』*1を読んで、万全の体制で観に行った。本当は昨日の昼休みに行く予定だったが、外に出てまもなく…

仕事と趣味

館蔵品展「奥絵師・木挽町狩野家」@板橋区立美術館 「趣味と仕事(食べていくための職業)が一致する人はしあわせだ」とよく言われるが、わたしはそれに同意しかねる。 以下はあくまでわたし個人の例にすぎないことをおことわりしておく。たとえばわたしは…

ガード下の発見

地方都市から上京してまず驚くのが、異常に発達している鉄道網である。とりわけ地下鉄。ある路線から別の路線へ乗り換えるという“高等技術”を使うことに尻込みして、東京駅の地下道を使って大手町駅まで歩いていったことがあった。あれは何線に乗ろうとした…

時間感覚の不思議

所蔵作品展「近代日本の美術」@東京国立近代美術館 先週金曜夜のブリヂストン美術館に味をしめて、また金曜夜に美術館に行く。ブリヂストン美術館は京橋にあるが、今度は竹橋。東京国立近代美術館である。実はこの美術館もブリヂストン創業者の石橋正二郎氏…

アンリ・ルソーの世界へ

先日千葉市美術館に曾我蕭白展を観に行った帰り、妻と展覧会の会場に座っている監視員の人の仕事について雑談になった。 ―あの人たちはただ座って監視するだけが仕事なのか。 ―そうではなかろう。何か質問されたときには答えなければならないだろうから。 ―…

本屋大賞との接点

昨年の年末、書友の同僚とこの一年に読んだ本のベスト談義をしたとき、書友があげた本が、三浦しをんさんの『舟を編む』*1(光文社)だった。辞書編纂の話であるということで少し心が動いたはずだけれど、結局そこから一歩踏み出さないまま年を越し、桜の季…

花押変幻自在

蕭白ショック!! 曾我蕭白と京の画家たち@千葉市美術館 子供のサッカー練習の合間に、千葉市美術館で開催中の曾我蕭白展を妻と観に行く。同僚に招待券を恵んでいただいた。感謝申し上げます。行く前に、辻惟雄さんの『奇想の系譜』*1(ちくま学芸文庫)にて…

金曜日は美術館へ

あなたに見せたい絵があります。―ブリヂストン美術館開館60周年記念@ブリヂストン美術館 仕事帰りにブリヂストン美術館へ行き、開催中の「あなたに見せたい絵があります。」展を観る。金曜は20時まで開いている。以前岡鹿之助展を観に訪れたときも金曜だっ…

不思議な三角関係

よみがえる日本映画vol.4[大映篇]@東京国立近代美術館フィルムセンター 「踊子」(1957年、大映東京) 監督清水宏/原作永井荷風/脚本田中澄江/京マチ子/淡島千景/船越英二/田中春男 荷風原作ということで興味があり、観に行ってみた。原作は戦時中…

日記の裏側

拙著『記憶の歴史学 史料に見る戦国』*1(講談社選書メチエ)では、「日記に書かれなかったこと」をめぐって、それを別の視点から明らかにできる証言を取り上げ、考えてみた。 具体的に触れたのは、『古川ロッパ昭和日記』であった。正岡容の通夜の席上、ロ…

第100 あといくたびぞ谷中の桜

朝早起きして身支度も早くととのったので、子どもたちを待たずに出かけることにした。陽気も良いから、もう一度谷中墓地を通って出勤しようという算段だ。 先週木曜(5日)に谷中墓地を通った。そのとき桜は満開まであとひと息といった状態だった。最近谷中…

『わが荷風』に影響されて

野口冨士男さんの『わが荷風』*1(岩波現代文庫)を読み終えた。講談社文芸文庫版が出たときに読んで以来(→2002/12/17条)、9年半ぶりの再読である。やはり面白い。 初読のときに書いた感想はわれながら上出来だったとあとあとまで思っていて、その記憶も強…

納豆定食談義

川本三郎さんの『君のいない食卓』*1(新潮社)を読み終えた。昨年11月に出たときすぐ買ってはいたのだけれど、これに先行する“亡妻記”(川本さんご自身『君のいない食卓』のあとがきにてそう称しているので、失礼ではないだろう)『いまも、君を想う』*2(…

ふたつの写真展からさんま坂へ

幻のモダニスト 写真家堀野正雄の世界@東京都写真美術館 生誕100年記念写真展 ロベール・ドアノー@東京都写真美術館 「幻のモダニスト」という名前に惹かれ、観に行こうと思っていたところ、はからずもほぼ同時期にロベール・ドアノー展も開催されるという…

実験小説の季節

出張の夜、学生時代の飲み会ではいつも二次会に立ち寄っていた飲み屋にて、恩師・先輩と飲み、別れたあとはホテルまでまっすぐ戻らず、わざと人通りの多い道を遠回りして帰った。変わってしまった仙台の町をたしかめたいということもあった。 広瀬通と東二番…

いつしか遠く旅したと

生誕100年藤牧義夫展 モダン都市の光と影@神奈川県立近代美術館鎌倉館 昨年7月、藤牧の郷里館林にある群馬県立館林美術館で開催された藤牧義夫展のときは、会期の比較的早い時期に観にいったが(→2011/7/30条)、今回は最終日にぎりぎり間に合った。それに…

鎮魂の書

堀江敏幸さんの新刊書評集『振り子で言葉を探るように』*1(毎日新聞社)に収められた小沼丹作品の書評を読んでいたら、猛烈に小沼さんの小説を読みたくなった。それは「幸せな不意打ち」と題された『風光る丘』評のこんなくだりである。あちこちで笑いをと…