2004-03-01から1ヶ月間の記事一覧

サワグチ書店@神田小川町 ★獅子文六『娘と私』(新潮文庫) カバー、250円。 ★丸谷才一『雁のたより』(朝日文庫)ISBN4022603976 カバー・帯、200円。ダブり。 ★見川鯛山『田舎医者』(集英社文庫) カバー、150円。 ★水上勉『雁の寺(全)』(文春文庫) …

マイナスをプラスに転じる生きかた

池内紀さんの新著『生きかた名人―たのしい読書術』*1(発行:綜合社/発売:集英社)を読み終えた。いろいろな作家の作品を読むことをとおして、彼らがふつう世間一般では「負の特性」とみなされる要素をいかにプラスに転じたのかを考えてみるという、池内さ…

恵贈 ★永嶺重敏『〈読書国民〉の誕生―明治30年代の活字メディアと読書文化』(日本エディタースクール出版部) 著者永嶺さんは職場の同僚。頂戴しました。感謝申し上げます。前著『モダン都市の読書空間』(旧読前読後2001/4/10条参照)が大正から昭和初期を…

北陸に消えた男

『点と線』などと並ぶ松本清張の代表作『ゼロの焦点』*1(新潮文庫)を読み終えた。 広告代理店に勤務し金沢の支社に単身赴任中の男と見合い結婚した26歳の女性が主人公。有能な夫は、結婚を機に東京の本社に戻ることになった。しかし式と新婚旅行を終えたあ…

コミさんの散歩術

最近あまりこれといった収穫がなかったので、そのときもさほど期待せずに入った北千住のブックオフ。文庫の「た」のコーナーで田中小実昌『ぼくのシネマ・グラフィティ』*1(新潮文庫)を見つけた瞬間、とっさに抜きとり、中味を確認せずに購入を決めた。コ…

平岩書店@赤羽駅西口 ★山口瞳『隠居志願 男性自身シリーズ』(新潮社) 初版カバー・帯。ダブり。お譲りできます。以前この本は1000円で入手。 ★獅子文六『箱根山』(新潮文庫) カバー。講談社文庫大衆文学館版所持。解説飯沢匡。 ★丸谷才一『エホバの顔を…

第57 桜の同潤会赤羽住宅地

内田青蔵さんの『同潤会に学べ―住まいの思想とそのデザイン』*1(王国社、→2/26条)を読み、桜の時期に訪れたいと思っていた場所があった。同潤会が木造分譲住宅事業を展開し、そのなかでも最も大規模であったという赤羽である。同書によれば、昭和3年から翌…

吉岡書店@京都百万遍 ★洲之内徹『帰りたい風景 気まぐれ美術館』(新潮社)ISBN4103110031 函帯二刷、1700円。 先日お会いしたふじたさん(id:foujita)より、『sumus』の洲之内徹特集に「気まぐれ美術館」シリーズの人名索引が載っているのだけれど、元版…

八重洲古書館 ★阿刀田高編集『松本清張小説セレクション25 絢爛たる流離』(中央公論社)ISBN4124033354★阿刀田高編集『松本清張小説セレクション28 隠火の飾り・死の枝』(中央公論社)ISBN4124033389 いずれも連作短篇集。カバー・帯、500円。

東京国立近代美術館フィルムセンター(シリーズ・日本の撮影監督(1)) 「煙突の見える場所」(1953年、新東宝) 五所平之助監督/椎名麟三原作/撮影三浦光雄/田中絹代/上原謙/高峰秀子/芥川比呂志 今回の特集でもっとも観たいと思っていた映画。川本三…

入れ子状の集合住宅

36年の人生のうち、大学入学までの18年と数ヶ月は一戸建ての実家に住み、その後18年は親元を離れ、今に至るまでいわゆる「集合住宅」住まいを続けている。この4月で一戸建て住まいと集合住宅住まいがほぼ半々になるわけで、これを境に集合住宅暮らしの期間が…

歴史的に見るべからず

私は絵を鑑賞するのが嫌いではない。さげすまれ、あきれられ、見放されるのを覚悟でいえば、歴史展示がなされている博物館よりも美術館の空間にわが身を置いたほうが断然落ち着く。 絵画の見方は人それぞれであって、これ、という作法があるわけではないだろ…

「編集者による回想録」の時代

宮田毬栄さんの新書新刊『追憶の作家たち』*1(文春新書)を読み終えた。 宮田さんは中央公論社の元編集者で、『海』『中央公論文芸特集』の編集長、中公文庫副室長などを歴任された女性である。旧姓大木。父は詩人の大木惇夫。編集者になる素質はあったとい…

俳句と人生

あまり俳句と縁のない人間が「俳句的生活」という言葉を目にしたとき、まず頭に思い浮かべるイメージは何か。“俳句を詠むことが日常になっている生活”なのか、はたまた“俳句のような生活”なのか。 前者であれば、まあわかりやすい。でも“俳句を詠むことが日…

「傑作選」という便法

山本夏彦さんの『「夏彦の写真コラム」傑作選1 1979〜1991』*1(藤原正彦編、新潮文庫)を読み終えた。この本については、荷風(の文章)を高く評価した「美しければすべてよし」に触れ、すでに14日条のなかで若干言及した。 山本さんご自身も書いていること…

落語の図書館のゆくえ

辻原登さんの文庫新刊・谷崎潤一郎受賞作『遊動亭円木』*1(文春文庫)を読み終えた。 本書は全10編の短篇からなる連作短篇集である。主人公は四十代(?)の若さで糖尿病にかかり視力を失った二つ目噺家遊動亭円木。彼は視力を失ったことをきっかけに噺家を…

海坂書房@神保町 ★池部良『そよ風ときにはつむじ風』(新潮文庫)ISBN4101182213 店頭本でカバー・帯100円。高峰秀子さんと並ぶ映画スターエッセイスト。集め始めています。

実作者から見た松本清張

阿刀田高さんの『松本清張あらかると』*1(中央公論社)を読み終えた。 本書は阿刀田さんが編集に携わった中央公論社『松本清張セレクション』全36巻の各巻末に「編集エッセイ」として掲載された文章をまとめたものである。本質的には各巻に収録された清張作…

植物生活は思索の源

木や花を育て上げる営為、今風に言えばガーデニングを、「園芸」と「芸」を付けて呼ぶのはなぜだろう。たんに水や肥料をやって育てればいいというものではない。さまざまな色の花を咲かせ実を実らせ、また各種の植物を限られた空間に配置する、そんな技術は…

憧れの荷風全集

長男が赤ん坊の頃からお世話になっている保育ママさんの娘さんは音楽家で、子供を対象に自宅でピアノや声楽を教えている。長男にもひとつ音楽を習わせてみよう、才能がなければやめさせればいいのだから、と自然の流れで週一日のレッスン通いが始まった。幼…

青山堂@市川真間 ★佐野洋『喝!四十二歳』(文春文庫)ISBN4167214202 取り立てて珍しい本ではない。ここで本を買ったという記憶を刻すために。カバー・帯、200円。 お花茶屋駅前の新古本屋 ★泡坂妻夫『迷蝶の島』(文春文庫)ISBN4167378027 以前来たとき…

第56 荷風の市川

昨日市川市文化会館で「第五回市川の文化人展 永井荷風―荷風が生きた市川―」を見、また川本三郎さんの講演を聴き、市川と荷風の結びつきの強さ、市川の人びとの荷風に寄せる暖かなまなざしを知るにつれ、市川という町に親近感をおぼえた。 帰りに立ち寄った…

ブックオフ本八幡駅前店 ★山本夏彦『死ぬの大好き』(新潮社)ISBN4103413093★山本夏彦『寄せては返す波の音』(新潮社)ISBN4103413107 運のいいことに開店2周年半額セール。各350円(カバー)。写真コラムのシリーズだが、全編文庫化は『死ぬの大好き』の…

川本三郎「偏奇館炎上それからの荷風」@市川市文化会館 戦後創作意欲が衰えた荷風をただ厳しく批判するのではなく、なぜそうなったのか理由を探るというテーマでのお話。 荷風は場所・町・風景を自らの小説の支えとしている(漱石のように人間関係を支えと…

「第五回市川の文化人展 永井荷風―荷風が生きた市川―」@市川市文化会館 荷風は戦後昭和21年から亡くなる同34年まで13年間を市川で過ごした。その市川での荷風の足跡をたどる展示。『断腸亭日乗』原本から書簡、戸籍・質札などの資料、日用品、蝙蝠傘や買物…

重なる出会いの果てに

一冊の本との出会いにはさまざまなパターンがあるが、その本にまつわる出来事が偶然のように重なり合って興味を抱き、最終的にその本の現物と出会ったとき、すでに買うという選択肢しか選び取れないような状況に立っていることがある。こんなことを書くとさ…

「家族の歴史」の終着点

重松清さんの連作短篇集『送り火』*1(文藝春秋)をようやく読み終えた。「ようやく」という言葉には、昨年11月に新刊で出たときに即購入し、今年1月に読み始めていながら、また、重松さんの作品に強く惹かれていながら、という意味が込められている。この間…

棚澤書店@本郷(店頭本) ★竹本健治『囲碁殺人事件』(河出文庫)ISBN4309401260 最近創元推理文庫で復刊されたばかり。カバー・帯、100円。解説中井英夫。 ★桐野夏生『残虐記』(新潮社)ISBN4104667013 つい先日発売されたばかりの新刊ではなかったか。桐…

湿り気巴水

リンボウ先生こと林望さんの『イギリスはおいしい』*1(文春文庫)にはじまるイギリス・エッセイの愛読者であったし、またそれにとどまらず、本業の書誌学関係の著作『書誌学の回廊』*2(日本経済新聞社、『リンボウ先生の書物探偵帖』*3として講談社文庫で…

洲之内コレクション形成史

洲之内徹さんの『絵のなかの散歩』*1(新潮文庫)を読み終えた。7日条で触れたように、本書を仙台に携えていった。 彼の蒐集した「洲之内コレクション」を宮城県美術館で実見するまでに前半四分の一程度読み進んでいたが、今回展示されていた絵の多くについ…