2008-01-01から1ヶ月間の記事一覧

たまにほのぼの気分

「本の街・神保町」文芸映画特集Vol.1 中村登と市川崑@神保町シアター 「春を待つ人々」(1959年、松竹大船) 監督中村登/脚本柳井隆雄・沢村勉/佐分利信/有馬稲子/佐田啓二/岡田茉莉子/高橋貞二/沢村貞子/田村高広/川津祐介/高千穂ひづる/水戸…

明治の香りを求めて

東雅夫編『文豪怪談傑作選特別篇 百物語怪談会』*1(ちくま文庫)を読み終えた。 最近この手の怪談もしくは幻想文学に類する小説に対し、そのように意識して読むことがなくなった。「そのように意識して」と付言したのは、本書の場合、読もうと思った動機が…

川本さんとニアミス!

「本の街・神保町」文芸映画特集Vol.1 中村登と市川崑@神保町シアター 「いろはにほへと」(1960年、松竹大船) 監督中村登/原作・脚本橋本忍/佐田啓二/伊藤雄之助/宮口精二/三井弘次/殿山泰司/織田政雄/藤間紫/柳永二郎/佐々木孝丸/城山順子/…

建築と建築家と写真家と

建築の記憶―写真と建築の近現代―@東京都庭園美術館

第94 アール・デコと内田ゴシックの白金

東京都庭園美術館の展覧会「建築の記憶―写真と建築の近現代―」を心待ちにしていたので、初日の今日、さっそく白金に足を運んだ。庭園美術館、つまり旧朝香宮邸を訪れるのは三度目か四度目になるだろう。 展覧会は、明治維新直後、記録のため撮された江戸城や…

「読書の楽しみ」の発見

最近、仕事で書誌学者川瀬一馬さんの名前に触れる機会があった。そんなことも手伝って、川瀬さんが校注・現代語訳を担当した講談社文庫版『徒然草』*1をつれづれなるままに拾い読みする。 古文の教材という強迫観念から解き放たれたいま、読み返してみると、…

夕刊フジと重松清

夕刊フジ連載エッセイについては、かねてから関心を向けてきた(文末参照)。今度出た重松清さんの文庫オリジナルエッセイ集『オヤジの細道』*1(講談社文庫)は、その夕刊フジ連載エッセイ本だという。重松作品のファンとしても、夕刊フジ連載エッセイのフ…

博物館の落とし穴

宮廷のみやび 近衛家1000年の名宝@東京国立博物館 先日国立美術館のキャンパス・メンバーズについて書いた。このとき東京国立博物館にも同様の制度があることを紹介した。東博の場合、メンバーになっている大学の教員・学生は美術館と同じく常設展無料であ…

短篇から連作へ

すぐれたアンソロジーはすぐれた読書案内である。アンソロジーだから、必ずしも好きな作家や好きな傾向だけの作品が収められているとはかぎらない。編者の魅力や、ある作家の作品に対する魅力でアンソロジー本を購うと、関心が及ばなかった作品の面白さにも…

短篇の醍醐味

北村薫・宮部みゆき編の短篇小説アンソロジー『名短篇、ここにあり』*1(ちくま文庫)を読み終えた。 本書は『小説新潮』2006年11月号(特集「北村薫と宮部みゆきが愉しく選んだ歴代12篇 創刊750号記念名作選)がもとになっている。同誌が発売されたとき珍し…

喧嘩を売るまでもなく完敗

昨年末文庫に入った宮部みゆきさんの『誰か Somebody』*1(文春文庫)は、購ってそのままわたし以上の宮部ファンである妻に手渡した。妻は読みはじめてまもなく、既読であることを悟った。ということは、単行本でも購い、わたしは未読のままいまでも本置き部…

キャンパス・メンバーズという恩恵

所蔵作品展「近代日本の美術」@東京国立近代美術館 特集 国吉康雄―寄託作品を中心に―@東京国立近代美術館 いつだったか、職場のあるキャンパスを歩いていたとき、学内掲示板に貼られてあった一枚のポスターにふと目がとまった。勤務校が「国立美術館キャン…

人生の忘れもの

沢木耕太郎さんに『世界は「使われなかった人生」であふれてる』という映画エッセイ集があったが(→2007/5/1条)、佐伯一麦さんの長篇小説『鉄塔家族』上*1・下*2(朝日文庫)を読んで、タイトル中にある「使われなかった人生」という言葉を思い出した。 佐…

源氏鶏太作品の社会性

かねがね源氏鶏太がデビューしてから直木賞を受賞するまでの初期作品を読みたいと思っていたが、ようやくそれがかなった。角川文庫版の『英語屋さん・初恋物語』である。年末年始実家に帰ったとき、地元山形市内のブックオフで手に入れた。 本書は表題作(2…

「痴人の愛」はかくあるべし

荷風と谷崎@ラピュタ阿佐ヶ谷 「痴人の愛」(1960年、大映) 監督・脚本木村恵吾/原作谷崎潤一郎/叶順子/船越英二/田宮二郎/川崎敬三/多々良純/三國一朗/菅井一郎/岩崎加根子/春川ますみ/角梨枝子 先日観た(→2007/12/17条)のは1949年木村恵吾…

売られた喧嘩を買った結果

年末に読んだこともあり、昨年読んで印象に残った本のなかに一冊書き落としたものがあった。木村晋介さんの『キムラ弁護士、ミステリーにケンカを売る』*1(筑摩書房)だ。 めっぽう面白かったので、感想を書く前に弁護士ネタ好きの妻に渡してしまい、感想を…

2007年の読書―負のスパイラル

昨年一年間に読んだ本のなかで、印象に残ったものを下記に掲げる。このうち純粋な新刊で夢中にさせられた本をあげるとするなら、石上三登志『名探偵たちのユートピア―黄金期・探偵小説の役割』、重松清『カシオペアの丘で』、堀江敏幸『バン・マリーへの手紙…

2007年の映画

例によって昨年一年間に観た映画を回顧したい。 本数。2004年36本、2005年80本、2006年は155本と倍々ゲームのように増えていたが、昨2007年はとうとう前年を下回った。計116本だった。それでも月平均10本ペースだから多いほうだろう。今後もせいぜいこのペー…