2006-09-01から1ヶ月間の記事一覧

第83 上野の看板建築・煉瓦造建築

「平成日和下駄」として書くのは4ヶ月ぶり。前回5月末の荻窪歩き以来である(→5/28条)。記録にとどめなかったことが、実際あちこち出歩く機会がなかったことを反映している。といっても今回の記録が「出歩く」ことにあたっているかと言えば、必ずしもそうと…

吉田健一モード

大学生協書籍部の雑誌コーナーに『ユリイカ』が積まれてあって、その表紙が吉田健一の笑顔だったのを認めた瞬間手に取り、そのまま購入してしまった(10月号*1)。『ユリイカ』を買うのはしばらくぶりのことだ。先日坪内祐三さんの『考える人』*2(新潮社、→…

「すごい」の上書き

メモリーズ・オブ・若尾文子Part15@衛星劇場(録画HDD) 「彼女の特ダネ」(1952年、大映) 監督仲木繁夫/原作今日出海/脚本舟橋和郎・棚田吾郎/京マチ子/菅原謙二/小杉勇/川崎敬三/船越英二/若尾文子/東山千栄子/三宅邦子/大泉滉 同じ作家や傾…

倍賞千恵子の啖呵

没後十年名優渥美清特集 もう一人の渥美清part2@衛星劇場(録画HDD) 「白昼堂々」(1968年、松竹) 監督野村芳太郎/原作結城昌治/脚本野村芳太郎・吉田剛/渥美清/藤岡琢也/倍賞千恵子/有島一郎/新克利/生田悦子/フランキー堺/大貫泰子/三原葉子…

映画の記憶、映画館の記憶、街の記憶

田沢竜次さんの『東京名画座グラフィティ』*1(平凡社新書)を読み終えた。渋谷、池袋、新宿、銀座・日比谷にあった名画座(二番館・三番館など)の存在を、個人的記憶を中心に跡づけてゆく、強力な意志を感じる本だった。 著者の田沢さんは1953年生まれ。“…

起承転結が肝要

監督黒澤明の仕事@日本映画専門チャンネル(録画HDD) 「用心棒」(1961年、東宝・黒澤プロダクション) 監督黒澤明/脚本黒澤明・菊島隆三/撮影宮川一夫/三船敏郎/仲代達矢/司葉子/山田五十鈴/東野英治郎/河津清三郎/山茶花究/加東大介/志村喬/…

一冊まるまる坪内流

坪内祐三さんの新著『考える人』*1(新潮社)を読み終えた。 新潮社の新雑誌『考える人』創刊号から始まった、雑誌のタイトルを冠した連載。「あとがき」によれば編集者の側からタイトルを提示されたという。 取り上げられているのは、小林秀雄・田中小実昌…

相撲懐旧談

「むかしのことを勉強して何のためになるのだ」という“歴史嫌い”を説得する論法としてよく言われるのは、「いまを知るためには過去を学ばなければならない」というものであろう。ところがこんな抽象的な言葉を何度繰り返し放ったとて、歴史を嫌う人は聞く耳…

機嫌良ければ月出づる

半藤一利さんの新著『荷風さんの戦後』*1(筑摩書房)を読み終えた。 半藤さんの“荷風本”としては、『永井荷風の昭和』*2(文春文庫)がある。こちらは昭和3年から20年まで、『断腸亭日乗』を読み込んで昭和戦前戦中の時代に荷風という文人の生活を重ね合わ…

冬の日の昏れ方に読む本は

読書を愛する人間が、目線の先に人生のゴールをとらえるようになったとき、残りの人生において未読作品を読むことより、既読作品のなかでもとくに印象に残った本の再読に向かうようになるのは自然の摂理なのだろうか。 本置き部屋が飽和状態で足の踏み場もな…

映画化が難しい傑作

ATGアーカイヴ@日本映画専門チャンネル(録画HDD) 「本陣殺人事件」(1975年、たかばやしよういちプロ・映像京都・ATG) 監督・脚本高林陽一/原作横溝正史/中尾彬/田村高廣/新田章/高沢順子/水原ゆう紀/村松英子/東龍子/常田冨士男/加賀邦男/東…

不良神父の無国籍活劇

日本映画史横断1 日活アクション映画の世界@東京国立近代美術館フィルムセンター 「ろくでなし野郎」(1961年、日活) 監督松尾昭典/脚本星川清司/二谷英明/芦川いづみ/中原早苗/長門裕之/郷硏治/安部徹/南風夕子/芦田伸介/初井言栄 1961年初頭、…

わたしの喫煙時代

わたしの喫煙時代はほぼそのまま20代に重なる。大学に入って一人暮らしを始めた頃から煙草をおぼえ(だから正確に言えば10代終わり頃からだが)、一日ひと箱、20本程度を灰にしていた。父親が喫煙者だったから、煙草を吸う環境に抵抗感はなかった。1986年にT…

芦川いづみのデビュー作

川島雄三監督大特集3@衛星劇場(録画HDD) 「東京マダムと大阪夫人」(1953年、松竹) 監督川島雄三/原作藤沢桓夫/脚本富田義朗/月丘夢路/水原真知子/北原三枝/芦川いづみ/高橋貞二/三橋達也/大坂志郎/坂本武/多々良純/丹下キヨ子 監督から俳優…

濃い義太夫狂言揃い

秀山祭九月大歌舞伎・昼の部 先日観た夜の部にくらべ、この昼の部は義太夫狂言揃いで、この手の演目を得意とした初代吉右衛門を記念する公演であるものよと感じ入る。最後まで観通すと、さすがにお腹いっぱいになるというか、胃にもたれるというか。義太夫狂…

羽織袴の柳田国男

丸谷才一・大岡信・岡野弘彦『すばる歌仙』*1(集英社)を読み終えた。 丸谷・大岡両氏が連衆となった歌仙については、去年『とくとく歌仙』(集英社、→2005/10/6条)を読み、その魅力を知った。本書には「神の留守の巻」「花の大路の巻」「葛のはなの巻」「…

憤る川本三郎

川本三郎『日本映画を歩く―ロケ地を訪ねて』*1(中公文庫)の文庫版での再読が例によって刺激的な読書体験だったので(→8/30条)、はずみがついてとうとうとっておきの本に手をつけてしまった。同じ川本さんの紀行文集『日本すみずみ紀行』*2(現代教養文庫…

井伏鱒二のモダン都市小説

夏休みのうち一日使って、日帰りで仙台に行ってきた。実家のある山形からバスで一時間強。どうせ古本屋に行くのだろうと家族は同行を渋ったので、自家用車はやめバスで行く。いまや山形・仙台間のバスは、高速道路(山形自動車道・東北自動車道)をすべて利…

ニュース映画というメディア

フランキー堺没後10年特集 ザッツ・フランキー!Part5@衛星劇場(録画HDD) 「ぶっつけ本番」(1958年、東宝・東京映画) 監督佐伯幸三/原作水野肇・小笠原基生/脚本笠原良三/フランキー堺/淡路恵子/小沢栄太郎/佐野周二/仲代達矢/吉行和子/内田良…

好色な私立探偵

温故知新 アンティークシアター@Vパラダイス(録画DVD) 「死の十字路」(1956年、日活) ※二度目 監督井上梅次/原作江戸川乱歩/脚本渡辺剣次/三國連太郎/新珠三千代/大坂志郎/三島耕/芦川いづみ/安部徹/沢村國太郎/藤代鮎子/多摩桂子/小林重四…

夢の兄弟共演

秀山祭九月大歌舞伎・夜の部 歌舞伎座で歌舞伎を観るのは、五月團菊祭(傾城反魂香・保名/藤娘・黒手組曲輪達引)以来。三ヶ月も間をあけてしまった。歌舞伎自体は、七月に国立劇場の歌舞伎鑑賞教室で梅玉・芝雀の「毛谷村」を観ているので、さぼっているわ…

脚本ができるまで

「笑の大学」(2004年、フジテレビ・東宝・パルコ) 監督星護/原作・脚本三谷幸喜/役所広司/稲垣吾郎/小松政夫/高橋昌也 警視庁検閲係の役所広司と喜劇作家稲垣吾郎の丁々発止のやりとり。何度も何度も手直しを命ぜられた脚本が、だんだん面白いものに…

京成電車が気になる

日活名画館・石原裕次郎シアター@チャンネルNECO(録画HDD) 「地底の歌」(1956年、日活) 監督野口博志/原作平林たい子/脚本八木保太郎/名和宏/山根寿子/石原裕次郎/香月美奈子/菅井一郎/高品格/二本柳寛/坪内美詠子/美多川光子 石原裕次郎デ…

藤田作品の同好者はいないか

藤田宜永さんのハードボイルド・ミステリ『モダン東京2 美しき屍』*1(小学館文庫)を読み終えた。シリーズ第1冊『モダン東京1 蒼ざめた街』を読んでから約5年が経過してしまっている(→旧読前読後2001/11/13条)。 そのときの感想にも書いたように、大きな…

田中登は散文的だが…

ロマンポルノ傑作選 ロマンポルノの女神たちpart1 宮下順子特集@衛星劇場(録画HDD) 「実録 阿部定」(1975年、日活) 監督田中登/脚本いどあきお/宮下順子/江角英明/坂本長利/花柳幻舟 結局神代辰巳にせよ、田中登にせよ、ロマンポルノの雰囲気はど…

興味が尽きない地名の話

あたりまえだが、国境、県境など、土地を分ける境界線は目に見えるように地面に引かれてあるわけではない。あくまで概念上のものであって、決めるのは人間である。まっさらな空間に線を引いて分節化し、仕分けられた場所ごとに名前をつけ認識してゆく。人間…

「ライン」から外れた傑作

日本映画史横断1 日活アクション映画の世界@東京国立近代美術館フィルムセンター 「人間狩り」(1962年、日活) 監督松尾昭典/原作・脚本星川清司/長門裕之/渡辺美佐子/大坂志郎/梅野泰靖/中原早苗/高山秀雄/高野由美/伊藤孝雄/小沢栄太郎/北林…

スクリーンで観たかった

レンタルDVD 「THE 有頂天ホテル」(2005年、東宝) 監督・脚本三谷幸喜/役所広司/戸田恵子/生瀬勝久/松たか子/佐藤浩市/伊東四朗/篠原涼子/角野卓造/原田美枝子/香取慎吾/オダギリジョー/川平慈英/堀内敬子/麻生久美子/浅野和之/唐沢寿明/…

木々高太郎の心理的恐怖

角川恐怖劇場@HORROR TV(録画HDD) 「三面鏡の恐怖」(1948年、大映) 監督久松静児/原作木々高太郎/脚本高岩肇・久松静児/木暮実千代/上原謙/新宮信子/滝花久子/水原洋一/宮崎準之助/船越英二 日本全国を電化するという夢をもつ事業家上原謙は、…

乱歩によらない乱歩

平井隆太郎さんの『うつし世の乱歩―父・江戸川乱歩の憶い出』*1(河出書房新社)を読み終えた。 副題にあるように平井隆太郎さんは乱歩の子息であり、おりに触れ寄稿した父乱歩に関する文章や参加した座談・インタビューを一書にまとめた本である。巻末には…