2007-07-01から1ヶ月間の記事一覧

とうとう遺作を

映画×温泉 湯けむり日本映画紀行@ラピュタ阿佐ヶ谷 「乱れ雲」(1967年、東宝) 監督成瀬巳喜男/脚本山田信夫/司葉子/加山雄三/草笛光子/森光子/浜美枝/加東大介/土屋嘉男/藤木悠/中丸忠雄/中村伸郎/十朱久雄/浦辺粂子/龍岡晋/左卜全 仕事帰…

病のなかに身をおいて

勤務先の図書室に架蔵していないマイナーな地方自治体史のたぐいを、まれに経済学部の図書室が持っていることがある。経済史あるいは農業史(農政学)を専攻していた経済学部の先生が集めたものなのだろうか。 それらを借りるため時々経済学部の図書室を訪れ…

赤瀬川原平は警告する

赤瀬川原平さんの新著『日本男児』*1(文春新書)を読み終えた。 タイトルから想像されるような、最近ひ弱になった「日本男児」の魂を復活させようと意気込んだ本ではない。もともと「頭からウロコ」というタイトルで『オール讀物』に連載されていたものが、…

二日つづけて神保町シアター

川本三郎編映画の昭和雑貨店 こどもたちのいた風景@神保町シアター 「つづり方兄妹」(1958年、東京映画・東宝) 監督久松静児/原作野上丹治・野上洋子・野上房雄/脚本八住利雄/織田政雄/望月優子/藤川昭雄/武野マリ/頭師孝雄/香川京子/津島恵子/…

はじめての神保町シアター

川本三郎編映画の昭和雑貨店 こどもたちのいた風景@神保町シアター 「秋立ちぬ」(1960年、東宝)※二度目 製作・監督成瀬巳喜男/脚本笠原良三/大沢健三郎/一木双葉/乙羽信子/夏木陽介/原知佐子/加東大介/河津清三郎/藤原釜足/賀原夏子/菅井きん…

ドーダの罠

鹿島茂さんの新著『ドーダの近代史』*1(朝日新聞社)の感想は、次のような挿話から書き出そうと考えていた。すなわち… …本書を書店で初めて見たのは神保町の東京堂書店だった。「とうとう『ドーダ〜』が出たか。明日にでも書籍部で買おうっと」。ほくそ笑み…

フランキー堺初主演作

フランキー堺没後10年特集 ザッツ・フランキー!最終回@衛星劇場(録画HDD) 「猿飛佐助」(1955年、日活) 監督・脚本井上梅次/脚本西沢裕/フランキー堺/市川俊幸/有島一郎/水島道太郎/広岡三栄子/遠山幸子/小川虎之助/三木のり平/名和宏/小林…

小林旭と吉永小百合

日活名画館・小林旭シアター@チャンネルNECO(録画HDD) 「黒い傷あとのブルース」(1961年、日活) 監督野村孝/原作山野良夫/脚本山崎巌・吉田憲二/小林旭/吉永小百合/大坂志郎/稲葉義男/神山繁/郷硏治/近藤宏 奸計にはめられて数年の刑務所暮し…

水上ミステリに注目

昨日触れた開高健『日本人の遊び場』(光文社文庫)は、「開高健ルポルタージュ選集」というシリーズの第一冊目。続刊として、これも昨日言及した『ずばり東京』や、『過去と未来の国々』『声の狩人』など、開高さんのルポルタージュの代表作品が予定されて…

子供に付き合う

MOVIX亀有 「劇場版ポケットモンスター ダイヤモンド・パール ディアルガVSパルキアVSダークライ」(ピカチュウプロジェクト・東宝、2007年) 監督湯山邦彦 テレビでは何度も観させられているが、ポケモン映画を劇場で観たのは初めて。告白すれば、ひところ…

血まなこで本を読む

小玉武『『洋酒天国』とその時代』*1(筑摩書房、→6/28条)の開高健を論じた章(第3章「開高健の〈雑誌狂〉時代」)のなかで、開高さんのルポルタージュは、彼が書いていた『洋酒天国』の特集原稿や巻末コラムの視点と共通するものがあったという指摘に惹か…

香川京子と一緒に泣く

清水宏大復活!@シネマヴェーラ渋谷 「しいのみ学園」(1955年、新東宝) 監督・脚本清水宏/原作山本三郎/宇野重吉/花井蘭子/香川京子/河原崎健三/島崎雪子/岩下亮/龍崎一郎 シネマヴェーラで映画を観るのは初めて。渋谷に出るのも久しぶりで、道玄…

褒め言葉より毒を

高島俊男さんの『座右の名文―ぼくの好きな十人の文章家』*1(文春新書)を読み終えた。 本書は、メインタイトル(「座右の銘」の駄洒落なのだろう)にあるように、「名文」を書いた文章家を取り上げ、彼らがいかに名文家であるかを述べた本ではない。むしろ…

師弟というもの

由良君美という名前を知ったのはご多分に漏れず幻想文学ルートであって、フランス文学の澁澤龍彦、ドイツ文学の種村季弘両氏の著書にひととおり熱中して、さらに周囲を見渡せば、イギリス文学の由良君美という名前が自然に目に飛び込んできた。 種村さんは國…

サラリーマンか男か

裕次郎映画で学ぶ会社処世術@チャンネルNECO(録画HDD) 「青年の椅子」(1962年、日活) 監督西河克巳/原作源氏鶏太/脚本松浦健郎/石原裕次郎/芦川いづみ/水谷良重/宇野重吉/滝沢修/東野英治郎/芦田伸介/谷村昌彦/藤村有弘/高橋昌也/山田吾一…

福助の愛敬

歌舞伎鑑賞教室@国立劇場 新版歌祭文 野崎村 野崎村の百姓久作の娘お光(福助)は、奉公先の商家から帰っていた養子の久松(松江)と近々祝言をあげるということで、そわそわしながら暮らしている。鏡の前に座って髪の毛を直しているとき、眉を剃り落とした…

表と裏、そして奥

定説となっているような歴史的事実について、根拠となっている史料を丹念に読み直してみると実は違っており、本当はこうだった…などという真相をつきとめるのは実に気持ちのいいことである。 その定説が一般的にも受け入れられているような確固たるものであ…

父の苦悶

映画監督 川島雄三@東京国立近代美術館フィルムセンター 「風船」(1956年、日活) 監督・脚本川島雄三/原作大佛次郎/助監督・脚本今村昌平/美術中村公彦/森雅之/三橋達也/北原三枝/左幸子/芦川いづみ/新珠三千代/二本柳寛/高野由美 とにかく映…

停年は永遠のテーマ

裕次郎映画で学ぶ会社処世術@チャンネルNECO 「喧嘩太郎」(1960年、日活) 監督舛田利雄/原作源氏鶏太/脚本松浦健郎/石原裕次郎/芦川いづみ/中原早苗/東野英治郎/白木マリ/芦田伸介/三津田健/嵯峨善兵/神山繁/内藤武敏/安部徹/二谷英明/藤…

心を無駄に使わない

映画×温泉 湯けむり日本映画紀行@ラピュタ阿佐ヶ谷 「風流温泉 番頭日記」(1962年、宝塚映画・東宝) 監督青柳信雄/原作井伏鱒二/脚本長瀬喜伴/小林桂樹/司葉子/池内淳子/志村喬/三木のり平/加藤治子/塩沢トキ/沢村いき雄/森川信/藤木悠/万代…

工手学校への好奇心

茅原健さんの『工手学校―旧幕臣たちの技術者教育』*1(中公新書ラクレ)を読み終えた。 工手学校は明治20年(1887)、中堅工業技術者養成のため設立された私立学校で、現在の工学院大学の前身である。 工手学校に対する関心が芽生えたのは、初田亨さんの『職…

百姓の怨念

木下惠介の全貌 第十一集@衛星劇場(録画DVD) 「笛吹川」(1960年、松竹大船)※二度目 監督木下惠介/原作深沢七郎/美術伊藤熹朔・江崎孝坪/高峰秀子/田村高廣/市川染五郎/中村萬之助/岩下志麻/織田政雄/加藤嘉/山岡久乃/市原悦子/川津祐介/田…

第6 幻景としての笛吹川

先の週末、一泊二日で石和温泉に行ってきた。 と言うといかにも聞こえはいいが、これが自発的に余暇を利用して湯治に赴いたのならまだしも、当地で開催された学術的シンポジウムのパネラーとして参加したという受け身の動機だった。 人前で話すことが苦手な…

「天下」の中味

裕次郎映画で学ぶ会社処世術@チャンネルNECO(録画HDD) 「天下を取る」(1960年、日活) 監督牛原陽一/原作源氏鶏太/脚本松浦健郎/石原裕次郎/長門裕之/北原三枝/中原早苗/益田喜頓/藤村有弘/笹森礼子/小沢昭一/三島雅夫/金子信雄/清水将夫/…

山村聰のシャツの襟

原作 井上靖の世界part2@衛星劇場(録画HDD) 「河口」(1961年、松竹大船) 監督中村登/原作井上靖/脚本権藤利英/岡田茉莉子/山村聰/田村高廣/杉浦直樹/東野英治郎/滝沢修/沢村貞子 筋としてはさほど面白くはない。一人のヒロイン(岡田茉莉子)…

松本清張を分析する

近年の“(松本)清張ブーム”とは、いつ頃発したものなのだろう。中居正広主演でドラマ化された『砂の器』がきっかけだとすれば、2003年の年末から2004年初頭にかけてのことだ(→2004/1/17条)。 もとより松本清張の作品はブームの有無にかかわらず「忘れ去ら…

川島作品で気散じ

映画監督 川島雄三@東京国立近代美術館フィルムセンター 「縞の背広の親分衆」(1961年、東京映画・東宝) 監督川島雄三/脚本柳沢類寿/森繁久弥/フランキー堺/淡島千景/団玲子/有島一郎/桂小金治/西村晃/ジェリー藤尾/藤間紫/田浦正巳/春川ます…

山口瞳表から裏から

いま現在の読書の流れは、大きく分ければ、昨日一昨日と連続で触れた“体感的東京本”と、『『洋酒天国』とその時代』*1(筑摩書房、→6/28条)を水源とした“山口瞳本”の二つになっている。 昨日、とある寄合に出るため青森市に日帰りで行ってきた。わたしは海…