停年は永遠のテーマ

「喧嘩太郎」(1960年、日活)
監督舛田利雄/原作源氏鶏太/脚本松浦健郎/石原裕次郎芦川いづみ中原早苗東野英治郎/白木マリ/芦田伸介/三津田健/嵯峨善兵/神山繁内藤武敏/安部徹/二谷英明/藤村有弘/深見泰三

「天下を取る」の感想で触れた渡辺武信さんの要約文(→7/6条)からすれば、大学を卒業してサラリーマンになって2年が過ぎた主人公裕次郎は、憂さ晴らしにボクシングの試合を観に行ったとき、思わず興奮して前に座っていた男と喧嘩になり、その場にいたライバル会社の社長=大物(三津田健)に気に入られる。
その男性的魅力で、社長令嬢(中原早苗)に気に入られ、また、警察で取り調べを受けたときに同席していた婦人警官(芦川いづみ)と相思相愛の仲になる。その後なんだかんだと騒動があって、自分の会社の社長(嵯峨善兵)と上役(芦田伸介)が企んでいた汚職を摘発し、最後には芦川と結ばれて「めでたしめでたし」となるのであった。
この映画の場合は、社長の汚職を摘発するのだから、自分が属する組織が自明ではなく、むしろ正義感第一に行動する人間ということになるだろうか。「天下を取る」では、定年間際の哀愁漂う老社員だった嵯峨善兵が、今度は社長なのだから面白い。
この映画では、裕次郎の直接の上司東野英治郎が停年を迎える。東野は裕次郎を快く思っていない。裕次郎も東野がうるさい。そもそもボクシングの試合観戦でも、つい空想で自分の闘っている相手の姿が東野になっていて、それで興奮してしまったこともある。
つまり空想シーンではあるが、ボクサー姿の裕次郎東野英治郎がボクシングをするという場面があって、これはなかなか見物と言うべきだろう。合成などでなければ、けっこうこの頃の東野英治郎も若々しい。
その東野が停年を迎えた日、一人しょんぼり机に座った東野に、部下の裕次郎は「課長、判を下さい」と声をかける。部下の誰もが腫れ物にさわるように自分を避けているなかで声をかけてくれた裕次郎に東野は感激し、以後二人は意気投合する。
こんな停年シーンこそ、やはり源氏鶏太原作らしいと言うべきなのだろう。停年というテーマは、源氏作品と切っても切り離せないのだ。
芦川いづみファンとしては、婦警のコスプレよりも、裕次郎と夜の遊園地でデートに行き、ジェットコースターやお化け屋敷で怖がっている姿(素に近い?)に心動かされた。

喧嘩太郎【ワイド版】 [VHS]

喧嘩太郎【ワイド版】 [VHS]