2004-05-01から1ヶ月間の記事一覧

巧さ変わらず

横山秀夫さんの新作『臨場』*1(光文社)を読み終えた。横山さんの作品を読むのは、今年正月に読んだ『半落ち』以来(→1/2条)。新作を新作という状態のときに読んだのは初めてかもしれない。とはいえ新刊書店で買い求めたわけではないから偉そうに胸を張れ…

新潮文庫の白背のはなし

昨日触れた都筑道夫さんのエッセイ集『昨日のツヅキです』*1は新潮文庫である。都筑さんの新潮文庫での背の色は白だ。都筑さんの場合は偶然かもしれないけれど、新潮文庫では、白背はまとまった数の著作がない単発の著者に用いられることが多いのではないか…

たなべ書店南砂店 ★山本夏彦『生きている人と死んだ人』(文春文庫)ISBN4167352060 カバー、200円。山本さんの文春文庫で唯一持っていなかった本。たなべ書店にあった山本夏彦さんの著作中あったのはこれだけ。私に買ってくださいといわんばかりの出会い。 …

畳の下から出てきた古新聞

戸板康二さんを媒介にしてネット上で知り合ったふじたさん(id:foujita)とは、戸板さんのことだけでなく、本のこと、さらにその他の趣味嗜好のことでお互い影響を与えあう得がたい書友である。どちらかといえば、私のほうが多くの影響を受けているのではあ…

お金がないというのに買いすぎ

自宅近くの新古書店 ★横山秀夫『臨場』(光文社)ISBN4334924298 カバー・帯、1260円。ようやく古本屋で入手。少し高かったけれど、「ないかなあ」と思いながら探していたので仕方がない。 ★都筑道夫『退職刑事2』(創元推理文庫)ISBN4488434037★都筑道夫…

平成の隅田川絵師

“平成の隅田川絵師”と呼びたい松本哉さんの『すみだ川を渡った花嫁』*1(河出書房新社)を読み終えた。 最近寺田寅彦や幸田露伴の著書を出されたように(『寺田寅彦は忘れた頃にやって来る』*2集英社新書/『幸田露伴と明治の東京』*3PHP新書)、隅田川から…

宗文館書店@東大前 ★北見治一『回想の文学座』(中公新書)ISBN4121008499 店頭本。ビニールカバー・帯、200円。 獅子文六『娘と私』を読み終えた直後だけに引っかかった。文学座の俳優として所属していた著者による創立から三島由紀夫『喜びの琴』事件まで…

大学堂書店@本郷三丁目 ★川本三郎『今日もお墓参り』(平凡社)ISBN4582829309 カバー・帯、700円。ダブり。 ★杉森久英『美酒一代―鳥井信治郎伝』(新潮文庫)ISBN4101493014 カバー、150円。サントリー創業者の評伝。開高健・山口瞳両氏による社史『やって…

シングル・ファーザーと夫婦関係

先日テレビを観ていたら“シングル・ファーザー”を取り上げた特集があった。日本語には「男やもめ」という言葉があるが、これは辞書をひくと単身者を意味するから、シングル・ファーザーという概念はかつては考えられなかったのだろうか。 取材されていた二組…

追悼 三橋達也

録画DVD 「青春怪談」(1955年、日活) 市川崑監督/獅子文六原作/山村聰/轟夕起子/三橋達也/北原三枝/芦川いづみ/山根寿子/瑳峨三智子 以前WOWWOWで放映されたときやっきさんに録画をお願いして、そのまますっかり忘れていたのだけれど、先日お会い…

旅慣れぬ人間の憧れ

私は旅をするのが苦手である。荷物はうまくまとめられず必要以上に大きくなってしまうし、旅先でも、せっかくなのでと限られた時間のなかできるだけ多くの場所をまわろうとする。 前者の場合「旅慣れない」という表現が似合う。ただこの問題は、いまの職業に…

藤牧義夫を観に

この間入手した『芸術新潮』1994年11月号(特集「今こそ知りたい! 洲之内徹 絵のある人生」→4/28条)をめくっていたら、急逝によってはからずも「気まぐれ美術館」のラストとなってしまった文章は藤牧義夫について書かれたものであることを知った。藤牧義夫…

「再考 近代日本の絵画―美意識の形成と展開」(第一部)@東京藝術大学大学美術館

★洲之内徹『さらば気まぐれ美術館』(新潮社)ISBN4103110066 これで「気まぐれ美術館」シリーズの元版は『絵のなかの散歩』を含めてすべて揃った。

夢のような

「種村季弘 綺想の映画館」対談(種村季弘×川本三郎)@アテネフランセ・文化センター 本日から始まった種村さんセレクトによる映画上映だが、初日の「東海道四谷怪談」・「KINTOKI」(種村さんが出演)・「木乃伊の恋」(鈴木清順監督によるテレビドラマ)…

無名という尊さ

先日観た成瀬巳喜男監督の映画「旅役者」は旅回りの一座の物語で、馬の前足と後足に入る下っ端役者の藤原鶏太と柳谷寛を中心とした、戦時中にしては(戦時中だからか)ほのぼのとした内容の映画だった。 一座の出し物は、三遊亭圓朝の人情噺を劇化した「塩原…

命がけの特権意識表明

私は批評という行為が好きではない。いや正確に言えば、批評ができない。批評(批判)が物事を前進させるものであることを認識してはいるけれど、性分として好きにはなれない。このことは、私のような職業の人間にとっては致命的な欠点である。いまさら欠点…

信楽町の謎

東京に移り住んで6年が過ぎた。この間ずっと再読の機会をうかがっていた本があった。吉田健一の『東京の昔』*1(中公文庫)である。今回ようやく再読することがかなった。 過去の日記を検してみると、読んだのは約13年前の1991年8月26日。仙台の本屋でこの中…

音曲は経営者の条件

山口昌男さんの新著『経営者の精神史―近代日本を築いた破天荒な実業家たち』*1(ダイヤモンド社)を読み終えた。先日読んだ大村彦次郎さんの『文壇挽歌物語』*2(筑摩書房、→4/29条)と一緒に、東京堂書店ふくろう店の“坪内祐三コーナー”で買った本である。…

家族の歴史とノスタルジー

重松清さんの短篇集『口笛吹いて』*1(文春文庫)を読み終えた。この本を電車で読もうと決め、電車本にいつも掛けているブックオフのブックカバーをかけながらすでに胸が詰まってくる。いくら重松作品が好きだとはいえ、これは異常だろう。自分でもそう思う…

「プロパガンダ1904-1945―新聞紙・新聞誌・新聞史」展/「東大総長のプレゼンス―渡邊洪基から内田祥三まで」展@ //www.um.u-tokyo.ac.jp/" target="_blank">東京大学総合研究博物館:もともと理学部で所蔵され、その後博物館植物部門で整理されていた「おし…

ベル・エポックという切り口

わが国では元号という年号表記があるから、西暦の表記と併用して混乱することがある。逆にふた通りあることが、何かと時代把握に便利なときもある。 日本史をやっていると、「十五世紀の○○は…」などと書きながら、当時においては西暦による時間把握は当然な…

原作に忠実

レンタル 「どですかでん」(1970年、東宝) 黒澤明監督/山本周五郎原作/頭師佳孝/菅井きん/三波伸介/伴淳三郎/田中邦衛/井川比佐志/松村達雄/芥川比呂志/奈良岡朋子/三谷昇/ジェリー藤尾/渡辺篤/藤原釜足 山本周五郎『季節のない街』*1(新潮…

十数年来の宿望達成

まだ小林信彦さんの影響が続いている。一昨日、小林さんが紹介した三島由紀夫による久保田万太郎の追悼文を引き写しているうち、三島作品を読みたくなってきたのである。 いっぽう、新潮文庫の今月のフェア本(新カバー・改版)のなかに『沈める滝』が入って…

★小説新潮四月臨時増刊 山口瞳特集号『新入社員諸君、これが礼儀作法だ!』 発売を聞き知ってはいたものの、探し方が悪くこれまで書店で出会ったことがなかった。書画展会場にあったので購入。礼儀作法中心の山口瞳特集号。鹿島茂さんの解説が付された四冊の…

山口瞳書画展@国立・ギャラリーエソラ 一昨年から開催されていた山口瞳さんのスケッチ展だが、今年が最後になるかもしれないとのこと。『新東京百景』のさいに描かれたのではないかとおぼしき水彩画や水墨画、色紙などずらりと展示。 会場には治子未亡人が…

都会的とは何ぞや

昨日、小林信彦さんの『花と爆弾―人生は五十一から』*1(文藝春秋)について書いたなかで、影響を受けて読み出した本というのは、神吉拓郎さんのエッセイ集『男性諸君』*2(文春文庫)のことである。 「K君が現れた日」というお孫さんのことを書いた一章の…

中毒になりながらも

小林信彦さんの最新エッセイ集『花と爆弾―人生は五十一から』*1(文藝春秋)を読み終えた。本書は『週刊文春』連載単行本の第6弾にあたる。これまでのラインナップについて、「あとがき」にある著者の整理を引用する。そのあとにある日付は、「旧読前読後」…

気まぐれなるがゆえに

洲之内徹さんの『帰りたい風景―気まぐれ美術館』*1(新潮文庫)を読み終えた。本書は「気まぐれ美術館」シリーズの第2集にあたる。第1集の『気まぐれ美術館』*2(新潮文庫、感想は旧読前読後2003/9/3条)に拍車をかける「気まぐれ」「寄り道」ぶりのエッセイ…

永井龍男を読み滝田ゆうに感心す

永井龍男の短篇集『青梅雨』*1(新潮文庫)を読み終えた。本書は三年前(2001年)六月に改版のうえ復刊されたもので、私はそのとき本書の存在を初めて知り、購入しておいたものである。本棚で本書を目にするたびに読もうという気持ちになっていたのだが、今…