2003-01-01から1年間の記事一覧

山形市近郊ブックオフ二店(03.12.31)

天童郵便局前店 ★川本三郎『映画の昭和雑貨店』(小学館)ISBN4093430314★川本三郎『続・映画の昭和雑貨店』(小学館)ISBN4093430322★川本三郎『続々・映画の昭和雑貨店』(小学館)ISBN4093430330★川本三郎『続々々・映画の昭和雑貨店』(小学館)ISBN4093…

中間小説への誘惑

『文壇うたかた物語』*1(筑摩書房、感想は12/12条)につづいて、大村彦次郎さんの新田次郎賞受賞作『文壇栄華物語―中間小説とその時代―』*2(筑摩書房)を読み終えた。「巻を置くあたわざる」とはまさにこのことで、読んでいて章の区切り、節の区切りになる…

露伴の風景

松本哉さんの新書新刊『幸田露伴と明治の東京』*1(PHP新書)を読み終えた。松本さんといえば、『永井荷風の東京空間』『永井荷風ひとり暮し』『荷風極楽』『女たちの荷風』といった一連の荷風本、また最近では『寺田寅彦は忘れた頃にやって来る』(集英社新…

山形市内ブックオフ四店めぐり

どの店にも、新潮社・筑摩書房・中央公論社など各社の「日本文学全集」バラがかなり並んでいます。 寿店 実家から歩いて数分の店。収穫まったくなし。数年前旺文社内田百間文庫十数冊を見つけた夢はいずこ。 桜田店 ★山口瞳『男性自身シリーズ 少年達よ、未…

紀行文と評伝でたどる美術館

東京に来て変わった面はいろいろある。そのひとつは博物館・美術館好きになったことだろう。むろん職業柄博物館好きで“なければならない”のだが、天邪鬼かつせっかちな私は、まわりの人びとが博物館好きで展示などをひとつひとつゆっくりじっくり見ているの…

2003年の印象に残った本

恒例の今年読んで印象に残った本を羅列してみたい。( )内はその月に読んだ冊数、★印の本は今年の新刊書である。いまのところ230冊読んだことになる。ここからさらに絞るとなれば、やはり今年は私にとっては“川本三郎イヤー”になるのだろうと思う。『林芙美…

明治東京のわすれもの

仲田定之助さんの『明治商売往来』*1(ちくま学芸文庫)を読み終えた。本書は日本エッセイスト・クラブ賞受賞作ということであるが、たしかにそれに値する名著である。もし文庫化されなかったらまったく知らないままだったかもしれず、筑摩書房に感謝したい…

歌舞伎における女性の存在

歌舞伎座に入ると、脇目もふらず一目散に座席を目指すのではなく、まずゆるりとロビーを見回す。頭上に掲げられている翌月・翌々月の狂言立てを確認するということもあるけれど、綺麗に着飾った歌舞伎役者の奥様(らしき人)がいないかどうか確かめるという…

古書ほうろう ★和田芳恵『接木の台』(集英社文庫) 北上次郎『情痴小説の研究』でも取り上げられていた『接木の台』『抱寝』二つの短篇集を合わせたもの。これはいいものを手に入れた。解説野口冨士男。500円。

今年出会った作家(その4)―山本周五郎

藤沢周平の作品世界に自分の気持ちがしっくりとなじむようになったことにも驚いたけれど、まさか山本周五郎にも同様にはまりこむとは思いもしなかった。あの新潮文庫の青メタリック風の背表紙がわが蔵書になるとはよもや想像もしなかったのである。 めぼしい…

60年代の開高健と山口瞳

12/16条で触れた重松清さんの文庫新刊『世紀末の隣人』*1(講談社文庫)の最終章は、「AIBOは東京タワーの夢を見るか」というタイトルで、著者は自らの持つ犬型ロボットAIBOを連れて東京タワーに上り、眼下に広がる東京の町並みをAIBOに眺めさせている。 こ…

「物語る」藝の呪力

茺田研吾さんの『徳川夢声と出会った』*1(晶文社)を読み終えた。 一人の大学生が、好きな作家だった石川達三が対談相手として登場していたという理由で徳川夢声の対談集(「問答有用」のアンソロジー)を買い求め、それをきっかけに彼のとりこになり進級論…

トンネルを抜けると…

百貨店の天井の低くて長いトンネルを抜けると、そこは“本の天国”だった。―― 池袋リブロを最初に訪れたときの印象である。池袋駅構内から西武百貨店の地下惣菜売場を抜けると天井の低い地下通路(=トンネル)があって、そこを抜けると興奮を誘うような書店の…

北村薫×大野隆司「谷中安規の夢」

「谷中安規の夢―シネマとカフェと怪奇のまぼろし」@渋谷区立松濤美術館(二度目)

東京のハレの日は

森まゆみさんの『カラー版 明治・大正を食べ歩く』*1(PHP新書)を読み終えた。明治・大正の時代に創業しいまでも営業をつづけている飲食店の老舗を取材したルポルタージュである。むろん一面でグルメガイドになっているが、それが本書の一面をあらわすに過…

奥村書店四丁目店 ★戸板康二『午後六時十五分』(三月書房) 戸板さんのエッセイ集は少しずつ集めているところ。

書かれるべくして

12/7条で重松清『流星ワゴン』*1(講談社)の感想を書いたとき、書ききれないことがあった。書くのを憚ったというわけでなく、文章の流れにうまく収まらなかったので、やむなく切ったのである。「余滴」として掲示板に書き込もうと思ったが、そのうち忘れて…

入り口と思ったらそこは出口

このところすっかり川本三郎的町歩きのとりこになっている。人間で混雑していない町や路地奥をひとしきり歩いたあと、おもむろに安居酒屋に入って酎ハイで人心地つく。こんなことをいつかやってみたい。この川本三郎的町歩きには先達がいる。種村季弘さんで…

大学堂書店@本郷三丁目 ★宮脇俊三『室町戦国史紀行』(講談社文庫)ISBN4062739186 室町時代・戦国時代に由緒のある場所を訪れる紀行。今月の新刊。前著『平安鎌倉史紀行』も買ったのでこれもと思いつつ、まだ買っていないうちに古本で発見。ラッキー。400…

裏返しの「坊っちゃん」

毎回のように言及して恐縮だが、書友ふじたさん(id:foujita)が、14日条の拙文をご覧になって獅子文六の『信子』をさっそく読んでくださっているとは、嬉しいかぎり。私のほうは読み終えたので(朝日新聞社刊『獅子文六全集』第二巻所収)、ひと足先に感想を…

ふじたさん(id:foujita)が昨日神保町で「徳川夢声と出会った」話を読んで、私も無性に行きたくなりました。ふじたさんの後追いで、同じところで同じ本を購入。実は私、書肆アクセスには初めて足を踏み入れたのでした。数え切れないほど神保町を訪れながら、…

今年出会った作家(その3)―佐野洋

学生時代仙台の古本屋でバイトをしていた頃、主な仕事の一つに文庫本の棚入れがあった。五十音順に整然と並んだ、ブックオフの走りのような文庫棚に、整理が終わった文庫本を差してゆく。立ちっぱなし動きっぱなしで体力的に辛い仕事ではあったけれど、ほと…

今年出会った作家(その2)―重松清

私の読書スタイルとして、良くも悪しくも「読み惜しみ」がある。13日条で書いたように、ある書き手が好きになると、ひとまず著作を熱心に買い集め、揃えるところから入る。集めたからといってすぐ読みはしない。読み惜しみしながら少しずつ間をあけて読むの…

第52 獅子文六の赤坂を訪ねて

昨日触れた福本信子さんの『獅子文六先生の応接室―「文学座」騒動のころ』*1(影書房)の口絵として、面白い写真が掲載されている。岩田邸で働いていた頃の福本さんを撮したものなのだが、岩田邸のテラスに立つ福本さんの背後の庭に椅子とテーブルがセットさ…

「大見世物―江戸・明治の庶民娯楽」@たばこと塩の博物館 「谷中安規の夢―シネマとカフェと怪奇のまぼろし」@渋谷区立松濤美術館

今年出会った作家(その1)―獅子文六

これから断続的に何回かに分けて、今年初めて読んだ作家について書いていきたい。今年私に古本屋めぐりのモチベーションを与えてくれた書き手たちである。なかでももっともインパクトが強かったのは、獅子文六(岩田豊雄)である。 もとより彼の食味随筆系の…

冬のボーナスが出て、懐が少し暖かい。 古書桃李@根津 ★冨田均『東京徘徊―永井荷風『日和下駄』の後日譚』(少年社) 『日和下駄』を模した東京散策エッセイ。欲しいなあと思いつつ、マイナーっぽいので見つからないだろうなあと半ば諦めていた本。とても嬉…

古本道ははてしなくつづく

メインサイト“本読みの快楽”を立ち上げてもうすぐ5年になる。そこを介して出会ったたくさんの書友の皆さんから刺激を受け、自分の関心もかなり広がった。 私は興味を持った作家については、まず著作(主に文庫本)を集めるというところから入る。爆発的にそ…

松本清張の密やかなる愉しみ

大村彦次郎さんの『文壇うたかた物語』*1(筑摩書房)の面白さにまいってしまった。近著『文士の生きかた』*2(ちくま新書、感想は10/27条)を読み、大村さんの他の著作に興味を持ちだしたという素地はあった。しかしながらその令名は聞いていてもすでに出て…