平成日和下駄

第102 梅雨時の鎌倉にて

「東宝映画のスターたち part1」@鎌倉市川喜多映画記念館 「生誕100年 松田正平展」@神奈川県立近代美術館鎌倉館 昨夜ツイッターで、フォローしている魅惑の名画座さんのツイートにより、昨日から川喜多映画記念館にてこの企画展が始まったことを知った。 …

第101 そしてY市へ

松本竣介展を観に行き、「Y市の橋」探訪への気持ちが高まってきてはいたけれども、もう少し間をおいてからと思っていた。ところが、ふと思い立って松本竣介展についてつぶやいている人がいないかとツイッターの検索をかけてみたところ、「Y市の橋」に描か…

第100 あといくたびぞ谷中の桜

朝早起きして身支度も早くととのったので、子どもたちを待たずに出かけることにした。陽気も良いから、もう一度谷中墓地を通って出勤しようという算段だ。 先週木曜(5日)に谷中墓地を通った。そのとき桜は満開まであとひと息といった状態だった。最近谷中…

第99 佐伯祐三を歩く

佐伯祐三の絵を観るたび、彼がアトリエをかまえた下落合周辺を描いた作品群(「下落合風景」)が好きだと書いてきた(→2007/4/30条・2005/9/18条)。 5年前の2005年の記録では、下落合にいまも現存する佐伯のアトリエを訪れてみたいと書いている。アトリエは…

第98 『少年』の土地

最近自分に似つかわしくない日々がつづいていた。年が明けてもこの状態から解放されそうにない。そのなかで今日はようやくゆっくりと休みがとれそうだったので、「芸術の日」と洒落こむことにする。 まずは映画。シアター・イメージフォーラムでロードショー…

第97 「橋」のロケ地へ

先週、番匠義彰監督の「橋」で、笠智衆・岡田茉莉子父娘が借りたアパートの場所のロケ地を推理し、推測した場所を訪れたものの、探し当てることができなかった経緯を書いた。 情報を求めるべく呼びかけたが、「橋」などというマイナーな映画の、何か所かの場…

第96 ロケ地探索失敗譚

先日観た映画「社長太平記」(→11/21条)で加東大介が扮していたのは、海軍の元艦長だった。軍隊内での階級とは正反対に、元部下の森繁久弥・小林桂樹の下で、黙々と総務課長の仕事をこなす。 偶然ながら、これとは別に元艦長が出てくる映画を録画している。…

第95 元八まんふたたび

川本三郎さんの代表作『荷風と東京』がとうとう文庫化された。岩波現代文庫から二分冊で出た。 このうち上巻収録の第十八章「「偶然のよろこびは期待した喜びにまさる」―元八まんへの道」を再読していたら、むずむずと散策欲が湧いてきた。ちょうど砂町辺に…

第94 アール・デコと内田ゴシックの白金

東京都庭園美術館の展覧会「建築の記憶―写真と建築の近現代―」を心待ちにしていたので、初日の今日、さっそく白金に足を運んだ。庭園美術館、つまり旧朝香宮邸を訪れるのは三度目か四度目になるだろう。 展覧会は、明治維新直後、記録のため撮された江戸城や…

第93 東京西南部を南北に動く

職場にあった「東京文化財ウィーク2007」のガイドブックを眺めていたら、惹かれるイベントが二つあった。そこでこの二つを軸に一日の散策プランを組み立てる。 まず一箇所目は、大田区立郷土博物館で開催されている特別展「川瀬巴水 旅情詩人と呼ばれた版画…

第92 「東京暮色」の坂道

何事にも億劫になって、滅多に人の集まる場所に出かけることがなくなった。ましてや同業者の集まりは敬遠している。それでも諸般の事情で顔を出さねばならないこともある。そんなこんなで久しぶりに同業者の集まりに出かけた。 出かけてみると、旧友と会った…

第91 一葉記念館いまむかし

昨日付の朝日新聞朝刊地域面(東京東部版「東京川の手」)に、「由緒ある旧町名たどって歩こう」という見出しの記事があった。台東区が若手職員を中心にして『旧町名下町散歩』という冊子の改訂版を作成したという内容である。90年に出た旧版以来17年ぶりの…

第90 上野浅草初めてづくし

この週末、妻が母方の従妹の結婚式に出席するため、泊まりがけで出かけることになった。子供も一緒に来ていいよとお誘いを受けたのだが、ちょうど日曜に長男のそろばん検定試験が入っていたため、長男が行けなくなった。したがってわが家は、妻と次男、わた…

第89 北東隅から北西隅へ

昨日のテレビ東京系「出没!アド街ック天国」はお花茶屋だった。わたしの住む町からは自転車で20分も走れば行くことができる。時々ふらりと遊びに出かける隣町であり、“準生活圏”と言っていい。 そのお花茶屋が、地名から“メルヘンの街”と称されていたり、“…

第88 下山遺跡と山村遺跡

先の週末はせっかくの連休、いろいろ出歩きたいのは山々だったけれど、前に書いたような事情で土曜日の午前中ラピュタ阿佐ヶ谷に「黒い潮」を観に出かけたほかは、我慢して籠居していた。 さすがにずっと籠もりきりだと息苦しくなってくる。また「黒い潮」を…

第87 台地の実感

この週末、ある集まりに参加するため静岡県は菊川という町を訪れた。東海道線に菊川という駅がある。静岡から40分、焼津・藤枝を過ぎ、掛川のひとつ手前だ。もとは菊川町、一昨年の〝大合併〟により、隣接する小笠郡小笠町と合併して菊川市となった。人口5万…

第86 フジタと達三の秋田

家を不在にしていたため、しばらく記事が中断していた。秋田市に所用があり、滞在していたのである。ここ数年秋田と言えば県南内陸部の横手を訪れる機会がほとんどだったが、今年に入り急に県庁所在地である秋田市に赴く機会が増え、今回で三度目となる。 そ…

第85 ともかく、鮫洲へ

昨日川本三郎さんの『東京の空の下、今日も町歩き』のちくま文庫版*1について書き、講談社刊の元版と一緒に書影を掲げた。描かれている風景こそ違え、森英二郎さんよる同じ青空の下の景色だなあと思っていたが、上下に並べてみると青空の明るさに違いがある…

第84 成田詣での記

ここ数年東京での初詣はもっぱら根津神社に行くことにしている。わが家の恒例行事である。東京に移り住んだ当初は、せっかくだから参拝者数ベスト10に入っているような大きな寺社を制覇してみようという色気を出し、明治神宮や鎌倉の鶴岡八幡宮に詣でたこと…

第83 上野の看板建築・煉瓦造建築

「平成日和下駄」として書くのは4ヶ月ぶり。前回5月末の荻窪歩き以来である(→5/28条)。記録にとどめなかったことが、実際あちこち出歩く機会がなかったことを反映している。といっても今回の記録が「出歩く」ことにあたっているかと言えば、必ずしもそうと…

第82 映画三昧、川本三昧

ちょっと朝から天気が良くなかったけれど、阿佐ヶ谷めざして午前中に家を出た。今日からラピュタ阿佐ヶ谷にて、待望の特集「銀幕の東京〜失われた風景を探して」が始まるのだ。別に初日だからと意気込んだわけではないのだが、諸事予定を勘案し、上映作品中…

第81 「菊坂文庫」という古本屋

給料も入って懐が少し暖かくなったので、今日は朝起きたときから、そういうときにときどき食べに行く菊坂の洋食屋(ここについては、平成日和下駄第77でも書いた。→2005/9/30条)に行くことを決めていた。ランチメニューは何だろうとワクワクしながら店の前…

第80 『ちんちん電車』を歩く

獅子文六『ちんちん電車』*1(河出文庫)を読んで、獅子文六が伊東忠太の設計した建物が好きでなかったらしいと書いた(→4/14条)。とりわけ札の辻にあった浅野総一郎邸に対する批評は厳しいものがあった。 先日引用した部分に続いて、この浅野邸にまつわる…

第79 偕楽園の梅

金曜日、本務の休暇をとり、別の仕事のため日帰りで水戸に出張に行くつもりでいた。ところがあの日はあいにく強烈な春の嵐が吹き荒れた一日で、最寄駅から電車に乗るといきなり動かない。次の駅との間の架線にビニールが付着して、その撤去のため30分待たさ…

第78 魂を坂に預けん花見まで

東京に住んで電車通勤をして八年になろうとしているが、はじめて電車が途中停車の憂き目にあった。 朝いつもの電車に乗ったところ、次の駅に到着する直前で停止し、しばらくそのまま動かなかった。そのうち車内放送があって、何駅か先の駅で人身事故があり、…

第77 秋冷の候菊坂散歩

すっかり涼しく、空気も爽やかさが増し、長袖シャツ一枚で歩くのがちょうどいい季節になった。喜ばしいことである。暑い時期は、忙しさも多少あったが、精神的にもあまり出歩く気持ちになれなかった。昼休みも建物のなかに籠もりきりで外に一歩も出ず、家か…

第76 「閑々亭」で酒気を抜け!

ひさしぶりの二日酔い 東北の産ゆえか、黙々と呑むからか、よく人からは酒がいける口だと見られる。しかし自分では必ずしもそう思っていない。もちろん下戸ではないが、酒量は多くない。外で呑むと、自然にリミッターが作動するのか、二日酔いが前倒しできた…

第75 「最後の気まぐれ美術館」を歩く

「暑くなる前に」と考えているうち梅雨に入り夏に突入した。目標を「涼しくなってから」に切りかえる。歩きたくとも、どうにも夏の散歩はつらいから。9月に入りちょっぴりしのぎやすい日が多くなってきたので、いよいよ実行に移すことにする。目標は「一之江…

第74 近くて遠い隣町

わたしは「こち亀」の町に住んでいるが、寓居のある集合住宅は都心から見ればひとつ手前の綾瀬との中間にある。定期券の都合もあるから、たまにひとつ手前の綾瀬で途中下車することがあっても、反対に最寄駅を素通りして先の町へと足を伸ばすことはまったく…

第73 非戦災都市山形

わたしは山形市の北辺部で生まれ育った。大学に入学して仙台でひとり暮らしをはじめてから、実家は市内中心部(城下町の名残を町名に残すいわゆる「旧市内」)に引っ越した。帰省中の生活圏は市内中心部に移ったことになる。 とはいえ車中心の生活だから、買…