2010-04-01から1ヶ月間の記事一覧

風景と静物

長谷川潾二郎展―平明・静謐・孤高―@平塚市美術館 平塚の町。これまでわたしにはまったく縁がなかった。町の名前で思い出すのは、ベルマーレ平塚(湘南ベルマーレの前身)、箱根駅伝の中継所であり、中学高校時代同じ苗字の同級生がいたなあという程度。東海…

木村荘八の挿絵本

永井荷風の『墨東綺譚』。もちろん小説としてのできばえには文句のつけようがないけれど、本を手に取って文字を追うときのあの心地よさは、木村荘八の手になる挿絵の力にあずかるところ大だ。繰り返しページを開きたくなるのもあの挿絵のおかげだし、すでに…

追悼井上ひさしさん

井上ひさしさんの訃報を知り、がっくり肩を落とした。わが郷里山形の誇る作家として、丸谷才一さんとならび敬意を抱いてきた人だけに、残念きわまりない。もっともこの二人、井上さんは置賜、丸谷さんは庄内なので、山形市出身のわたしから見ればたんなる同…

南方熊楠と中沢新一

新聞の新刊広告に、『高山寺蔵 南方熊楠書翰 土宜法龍宛1893-1922』(藤原書店)という本を見つけて、しばらくぶりに南方熊楠の世界に触れた思いがした。 広告には、「新発見の最重要書翰群、ついに公刊!」「2004年に、栂尾山高山寺で発見された書翰全43通…

丸谷才一さんの本

本の箱詰め作業に追われているいっぽうで、新刊本も買いつづけている。でも引越まで時間的余裕がないため、買ってもじっくり読むことはできない。こういう場合、拾い読みのできる、短くて比較的軽めのエッセイ集があればいい。 積まれた本の上に、丸谷才一さ…

大相撲のすがた

ドイツ文学者の高橋義孝さんは、山口瞳さんが師と仰ぐ一人だ。晩年は人生論や礼儀作法に一家言もつ随筆家として、何冊かのエッセイ集を出している。 古本屋で高橋さんの文庫本を見かけると、ひとまず買っておくようにしていたところ、何冊か集まってきた。け…

お楽しみはこれからだ

シリーズ物は一冊はまると厄介だ。コレクター気質があるから、その他の本も集めないでは気がすまなくなる。そのシリーズが現役ならばまだいい。すでに過去のものである場合、品切本を集めるのに苦労する。昨日の話ではないが、それこそ最終的にはネット古書…

川本三郎から松本清張へ

大好きな書き手である川本三郎さんの著作は、本棚の一角、鹿島茂さんと隣同士に並べていた。もちろん鹿島さんも川本さんも次々本を出されるので、そこには収まりきらなくなる。やむをえず別集団が積ん読山を構成することになるが、なるべくバラバラにならず…

月曜日の朝

山口瞳さんの作品は、肝心の「男性自身」シリーズをのぞけばたいてい文庫で読めるし、本づくりに凝って単行本も集めたくなるような作家ともちがうので、単行本まで買い集めるには至っていない。 とはいえ文庫本とは違った構成の短篇集だとか(たとえば『犬の…