2004-02-01から1ヶ月間の記事一覧

十回前の2月29日に

先日、帰宅すると、薔薇の花束と『虚無への供物』初版本を抱えてソファに座り微笑む中井英夫のスナップ写真(92年2月29日の日付あり)を食卓の上に見つけ、一瞬不思議な気持ちに包まれた。 裏返してみると、本日より始まった「永遠の薔薇―中井英夫に捧げるオ…

書林大黒@蒲田 ★永六輔『芸人たちの芸能史』(文春文庫) 以前訪れたときにいい本が多かったという記憶がかすかに残っていたので、楽しみに行ってみると、何と閉店セールで全品50%オフ。これはいいタイミングだと鼻息荒く、細かく棚をチェックしたものの、…

池上梅園

満開の桜もいいけれど、梅もいいなあ。紅梅白梅に薄桃色の梅。香りもいい。

アンチ・ブッキッシュ宣言の書

海野弘さんの新書新刊『足が未来をつくる―〈視覚の帝国〉から〈足の文化〉へ』*1(洋泉社新書y)を読み終えた。 海野さんの本は、一昨年9月に読んだ『モダン・シティふたたび』以来久しぶり(旧読前読後2002/9/4条)。この間海野さんは次々に新著を上梓して…

主役がいっぱい

録画ビデオ(NHK-BS2) 「流れる」(1956年、東宝) 成瀬巳喜男監督/幸田文原作/山田五十鈴/田中絹代/高峰秀子/杉村春子/岡田茉莉子/中北千枝子/賀原夏子/栗島すみ子/宮口精二/加東大介 豪華としかいいようがないキャスト。誰が主役なのだろう。…

同潤会の思想は未来への扉

戦後日本の住宅環境の推移を大づかみにすれば、量から質へと規定できるだろうか。戦災復興から高度成長へとつながる「量」の時代から、現代は相対的に「質」重視の方向に傾いていると言えよう。いま慎重に「相対的」という言葉を使ったのは、いまなお必ずし…

古書桃李@根津 ★中村伸郎『おれのことなら放つといて』(ハヤカワ文庫)ISBN4150501610 俳優中村伸郎のエッセイ集。日本エッセイスト・クラブ賞受賞作。以前堀切の青木書店で見かけて買わず、あとから買っておけばよかったと思っていただけに、嬉しい。扉に…

東京国立近代美術館フィルムセンター(シリーズ・日本の撮影監督(1)) 「海軍」(1943年、松竹) 田坂具隆監督/獅子文六原作/撮影伊佐山三郎/山内明/志村喬/青山和子/水戸光子/小沢栄太郎/東野英治郎/笠智衆 真珠湾奇襲から2年後の1943年12月8日に…

紳士たるもの

ある日のこと。頭痛のきざしがあったけれど、いっぽう飲みたい気分でもあって、「ええい、飲んでしまえ」と、ふだんと同じく350mlの缶ビール2本を飲みほした。寝てしまえば翌朝にはたいてい頭痛はおさまっているのである。 ところが、というかやはりというか…

読みかけの本を後回しに

ただ言えることは、そのときすぐ読みだせるような本、読みかけの本を後回しにしても読みたくなる本、そういう本と出会えれば、一番嬉しいということだ。この発言は、「古本屋をまわったり古書目録を見たりしてどんな本を探しているのか」という問いかけに対…

デカダン文庫 ★黒木曜之助『実録 大震災最大事件』(弘済出版社) 震災文献。 ★松本清張『文豪』(文春文庫)ISBN4167106876 逍遙・紅葉・鏡花・緑雨らの連作評伝小説。逍遙の件は津野海太郎さんの本に触れられてあった。 ★川崎長太郎『鳳仙花』(講談社文芸…

本格物苦手の弁

気分転換に推理小説でも読もうかと、前々から気になっていた本を積ん読の山から探し出し、読み始めた。しかし読み終えるのに意外に時間がかかってしまった。いかに私が“本格物”が苦手かということを、はからずも身をもって知ったことになる。 読んだのは鮎川…

サンシャイン大古本市 ★文藝春秋編『なんだか・おかしな・人たち』(文春文庫)ISBN416721718X 掲示板でハマダさんからご教示のあった、徳川夢声「獅子文六行状記」収録。その他井上ひさし・古今亭志ん生・吉田健一・山本嘉次郎・扇谷正造・桐竹紋十郎・木山…

芥川賞・直木賞物語

豊田健次さんの新著『それぞれの芥川賞 直木賞』*1(文春新書)を読み終えた。豊田さんは元文藝春秋の文芸編集者で、取締役・出版総局長までつとめた重鎮。国立在住で山口瞳さんを中心とした在住者のサークル、いわゆる“国立山口組”の一員である。以前「山口…

「高峰秀子」という荷物

斎藤明美さんの『高峰秀子の捨てられない荷物』*1(文春文庫)を読み終えた。 著者の斎藤さんは『週刊文春』の記者として高峰さんと出会い、その後『オール讀物』への連載懇願などを通して徐々に接近、斎藤さんのお母さんが病気で亡くなるという出来事を機に…

大学堂書店@本郷三丁目 ★高峰秀子『いいもの見つけた』*1(集英社文庫) カバー、150円。高峰さんのエッセイ集はこれから見つけ次第買っておこうと思っております。その著書の多くは文春文庫に入っている(と思っていた)わけですが、たまたまこの集英社文…

臨時ボーナスの悲劇

俗に婚約指輪は給料3ヶ月分と言われる。この公式は現在でも通用するのだろうか。私の場合、結婚当時はいまのような給与所得者ではなかったため、この計算が成り立たない。だいいち婚約指輪がいくらしたか、まったく憶えていない。 こんなことを思い出したの…

映画はスター主義で

中野翠さんの『あやしい本棚』(文藝春秋)*1を読み終えた。「面白い本100冊+α」の書評集であるが、約3年前に出されたものであることもあって、私も読んで記憶にまだ残っている本が多い。しかも読みながら、本書が刊行されたとき、買おうかどうか迷ったこと…

古本屋の登場する映画

ラピュタ阿佐ヶ谷(「昭和の銀幕に輝くヒロイン第13弾 若尾文子スペシャル」) 「永すぎた春」(1957年、大映) 田中重雄監督/三島由紀夫原作/若尾文子/川口浩/船越英二/沢村貞子 本郷T大学正門前にある古本屋の娘(若尾文子)といいところのボンボン(…

旅情のありか

関川夏央さんの文庫新刊『豪雨の前兆』*1(文春文庫)を読み終えた。エッセイ・評論集であるが、いっぷう変わった構成だと思う。もともと『文學界』に連載されたエッセイに別の場所で書かれた作家論二篇を加えて成り立っているが、連載分のほうは一篇一篇が…

★井崎脩五郎『小説 日本競馬界』(双葉文庫)ISBN4575503630 井崎さんの本は期待を裏切らずいつも面白い。カバー、200円。

山田五十鈴恋し

シネマジャック@横浜(「女優スタイル お手本は、岸惠子―岸惠子映画特集」) 「我が家は楽し」(1951年、松竹) 中村登監督/笠智衆/山田五十鈴/高峰秀子/岸惠子/佐田啓二/高堂国典 森永製菓に勤める「万年課長」笠智衆一家の物語。世田谷羽根木に借家…

魅力は緩急とエキゾティズム

堀江敏幸さんの芥川賞受賞作『熊の敷石』*1が講談社文庫に入った。堀江作品初の文庫化である。書店で見つけてほくほくと購入し、嬉しさのあまり帰りの電車でページをめくったら止まらなくなり、帰宅後もそのまま読みついでその夜のうちに読み終えてしまった…

大女優と大監督

二泊三日で出張に行ってきた。その一週間ほど前から、出張に持って行く本をどれにしようかとあれこれ悩みとおした。旅の道連れに持って行く本を選ぶ作業ほど、悩ましくかつ楽しいものはない。 こういう機会でないと手がつけられないかもしれない骨のある長篇…

映画を観る少年

昨日古本で手に入れた小林信彦さんの『一少年の観た〈聖戦〉』*1(筑摩書房)を読み終えた。たまたま昨日は本書を購った直後、フィルムセンターで戦時中に軍隊慰問を射程に入れて制作された映画「音樂大進軍」を観たというなりゆきがあったため、その流れで…

ロッパ見たさに

東京国立近代美術館フィルムセンター(シリーズ・日本の撮影監督(1)) 「音樂大進軍」(1943年、東宝) 渡邊邦男監督・友成達雄撮影/古川緑波/岡譲二/岸井明/渡辺篤/里見藍子/若原春江/英百合子/中村メイ子 とにかく古川緑波を見たかった。南方の軍…

八重洲古書館 ★小林信彦『一少年の観た〈聖戦〉』(筑摩書房)ISBN4480813780 カバー帯、750円。読みたいと思っていた本。95年刊行なのだが、まだ文庫化されていなかっただろうか。いずれにしても森英二郎/日下潤一コンビの装幀がいいので、単行本を得られ…

物を識ること必ずしも物を創ることならず

過日、さる方から、「山本夏彦さんの『無想庵物語』*1(文春文庫)の索引はすごいですよ」といった内容のメールをいただいた。 読売文学賞受賞作品であり、山本さんの代表作のひとつに数えられていながら、現在品切。たまたま昨年11月に文庫版を古本でようや…

人生はギャンブルだ

阿佐田哲也さんの麻雀小説に興味があるものの、学生の頃少し麻雀をかじっただけでいまやほとんどルール(や面白味)を忘れていることもあって、手をつけかねている。角川文庫に多く収められているこれら麻雀小説に古本屋などで出会うと、買おうかどうかしば…

最寄駅構内の仮設ワゴン ★野呂邦暢『草のつるぎ』(文春文庫) カバー、250円。これで文春文庫の野呂作品3冊が揃った。こんなところで得られるとは。ラッキー。