「海軍」(1943年、松竹)
田坂具隆監督/獅子文六原作/撮影伊佐山三郎/山内明/志村喬青山和子水戸光子小沢栄太郎東野英治郎笠智衆

真珠湾奇襲から2年後の1943年12月8日に公開された国策映画。海軍省が全面的にバックアップしている。原作が面白かったので楽しみにしていたのだが、その原作で面白かった部分がことごとくカットされて、台無し。海軍画家になった牟田口(志村喬のはず)は最初しか出てこない。また谷真人とエダのロマンスも当然カット。ただひたすら真人の江田島海軍兵学校での暮らしを描写するのみ。海軍兵学校の実態を知ったという利点しかなし。小林信彦さんも『一少年の観た〈聖戦〉』(筑摩書房)のなかで、特撮は前年の「ハワイ・マレー沖海戦」(円谷英二が担当)よりかなり見劣りしたと書いている。