2008-02-01から1ヶ月間の記事一覧

歩くモダン

監督市川崑の映画たち@日本映画専門チャンネル(録画DVD) 「足にさわった女」(1952年、東宝) 監督・脚本市川崑/原作沢田撫松/脚本和田夏十/音楽黛敏郎/越路吹雪/池部良/山村聰/伊藤雄之助/沢村貞子/加東大介/三好栄子/岡田茉莉子/藤原釜足/…

駅前食堂の思想

川本三郎さんの新著『東京暮らし』*1(潮出版社)を読み終えた。 同じ版元から出た『旅先でビール』*2(2005/11/13条)とつくりが似て(カバーイラスト小林愛美、装幀鈴木成一デザイン室)、内容的にも似た感じの文章が収められているから、姉妹編的なエッセ…

これぞ痛快無比

東宝アクション!@シネマヴェーラ渋谷 「奴が殺人者だ」(1958年、東宝) 監督丸林久信/原作樫原一郎/脚本橋本忍/佐藤允/土屋嘉男/天本英世/山茶花究/淡路恵子/横山道代/中田康子/東郷晴子/中丸忠雄/堺左千夫/峯京子/笠間雪雄 「暗黒街の弾痕…

文法表現としてのパサージュ

鹿島茂さんの最近のお仕事のなかでもっとも印象的なのは、パリの都市論、とりわけパサージュについてのものだ。『文学的パリガイド』*1(NHK出版、→2004/8/6条)では、160年にわたって寂れ続けているパサージュがあると紹介している。「160年にわたって寂れ…

橋の展覧会ふたつ

企画展 隅田川の橋づくし@タイムドーム明石 企画展 千住で一番江戸で一番千住大橋展@荒川ふるさと文化館 長男を連れて散歩に出かける。今日の目的は、ふたつの区立ミュージアムで開催中の、隅田川に架かる橋梁に関する展覧会。別に連動しているわけではな…

ジェリーの陰に隠れて

特殊学園Q@シネマヴェーラ渋谷 「偽大学生」(1960年、大映)※二度目 監督増村保造/原作大江健三郎/脚本白坂依志夫/ジェリー藤尾/若尾文子/藤巻潤/村瀬幸子/船越英二/岩崎加根子/中村伸郎/伊丹一三/三津田健/高松英郎/三田村元/大辻伺郎/森…

『荷風全集』検印考

大正9年一年間の『断腸亭日乗』を読もうとして手に取ったのは、自宅にあるテキストである。これは岩波書店から出た第一次全集のうち、『断腸亭日乗』部分のみを抜き出して7冊に編集し直した版である。 実は第一次全集のほうも持っていて、こちらはかつて職場…

本厄の荷風

正岡子規が脊椎カリエスで苦しんだすえに息絶えた34歳、芥川龍之介が睡眠薬(青酸カリ説もあり)を飲んで自殺した35歳はとうに越え、太宰治が玉川上水に入水して果てた38歳は意識せぬまま通り過ぎていた。そうしているうち、三島由紀夫が陸上自衛隊市ヶ谷駐…

荷風像の価値転換

わたしが永井荷風に関心を持ちだした1980年代末頃(岩波文庫に『摘録断腸亭日乗』が入ったのが87年だからその頃だろう)、荷風という人間像をひと言で言いあらわせば、「変人」、だったように思う。現在でもそのようなイメージは払拭されずにいるかもしれな…

初めての谷口千吉作品

映画監督・谷口千吉@川崎市市民ミュージアム 「33号車応答なし」(1955年、東宝) 監督・脚本谷口千吉/脚本池田一朗/池部良/司葉子/志村喬/中北千枝子/平田昭彦/根岸明美/沢村宗之助/上田吉二郎/河内桃子/土屋嘉男/大村千吉/柳谷寛 世田谷文学…

大充実の世田谷文学館

永井荷風のシングル・シンプルライフ@世田谷文学館 「脚本と映画 橋本忍の仕事」特集展示@世田谷文学館 先日訪れた東京都庭園美術館の「建築の記憶」展もそうだったが、今回の「永井荷風のシングル・シンプルライフ」展も初日にさっそく駆けつけた。だから…

追悼市川崑監督

監督市川崑の映画たち@日本映画専門チャンネル(録画DVD) 「プーサン」(1953年、東宝) 監督市川崑/原作横山泰三/脚本和田夏十/伊藤雄之助/越路吹雪/藤原釜足/三好栄子/加東大介/杉葉子/小林桂樹/八千草薫/杉葉子/木村功/菅井一郎/小泉博/…

手を替え品を替え

「手を替え品を替え」という成語には、「あれこれさまざまな手段で試みるさま。あの手この手」(『広辞苑』第四版)という意味がある。いまだ達成されていない目的に対し、いろいろな手段を用いて達成しようとする様子がイメージされる。 だから、重松清さん…

丑年の年賀状には

初代松本白鸚二十七回忌追善二月大歌舞伎・昼の部@歌舞伎座(幕見席) 菅原伝授手習鑑 車引 今日の目的は吉右衛門の「関の扉」なのだが、混雑することを予想して、ひとつ前から観ることにした。幕見料金としては、一番最初の「小野道風青柳硯」と込みだけれ…

文化の発信源について

山形県酒田市にあるフランス料理店「ル・ポットフー」の名前を聞いてまず思い浮かべたのは、吉田健一・山口瞳の二人だった。 山口さんの場合、『酔いどれ紀行』*1(新潮文庫、旧読前読後2003/2/13条)がある。当地に宿泊した4日間のディナーがすべてここだっ…

切ない東京ミステリ

川本三郎『ミステリと東京』*1(平凡社)の、今度は内容についての影響の話。同書の一番最初に取り上げられている島田荘司さんの長篇『火刑都市』*2を読み終えた。 島田作品は学生時代いくつか読んだことがある。ただ『火刑都市』は名前だけ知っていて、未読…

若冲は死して謎を残す

新刊で出た、狩野博幸・森村泰昌ほか『異能の画家 伊藤若冲』*1(新潮社とんぼの本)を読んでいて、昨年5月に日帰りで駆けつけた相国寺承天閣美術館での若冲展(→2007/5/25条)を思い出した。 あの日は雨が降っていたこともあって、とても蒸していた。しばら…

植田正治の撮った東京

川本三郎『ミステリと東京』*1(平凡社、→2007/10/31条・2007/11/12条)の影響がまだ残っている。しかも影響はそのなかで触れられている作家・作品にとどまらない。 本書のカバーに、写真家植田正治さんの作品「水道橋風景」が使われている。1932年の作品だ…

踊りの迫力

日曜邦画劇場@日本映画専門チャンネル 「フラガール」(2006年、シネカノン/ハピネット/S・D・P) 監督・脚本李相日/脚本羽原大介/松雪泰子/蒼井優/豊川悦司/山崎静代/岸部一徳/富司純子/池津祥子/徳永えり/寺島進/高橋克実 いつか観ることに…

人生はレイアウトだ

先日久しぶりに堀切の青木書店に行ってみた。ブックオフではなく普通の古本屋でしか手に入れられない、というわけではないが、普通の古本屋で手に入れてこそ喜びがわくような本を何冊か購った。そのうちの一冊が、三國一朗『鋏と糊』*1(ハヤカワ文庫NF)だ…