2009-04-01から1ヶ月間の記事一覧

明治の人が五代目に求めたもの

現代の歌舞伎役者を錦絵(風)に描いたものを見たことがある。役者の顔を知っているからか、けっこう似ているものだなあというのが第一印象だった。役者錦絵というものは、雰囲気だけ伝えれば、似ているか似ていないかは二の次だろうと根拠もなく思っていた…

ベスト・コメディ

孤高のニッポン・モダニスト 映画監督中平康@ラピュタ阿佐ヶ谷 「あした晴れるか」(1960年、日活)※三度目 監督・脚本中平康/原作菊村到/脚本池田一朗/石原裕次郎/芦川いづみ/中原早苗/西村晃/東野英治郎/渡辺美佐子/杉山俊夫/三島雅夫/信欣三…

通俗映画こその面白さ

小学館文庫『シネマ大吟醸―魅惑のニッポン古典映画たち』より 昭和の原風景@神保町シアター 「とんかつ大将」(1952年、松竹大船) 監督・脚本川島雄三/原作富田常雄/音楽木下忠司/佐野周二/津島恵子/角梨枝子/高橋貞二/幾野道子/三井弘次/徳大寺…

松本清張と印刷

松本清張展―清張文学との新たな邂逅@世田谷文学館 去年の夏、念願かなって小倉の松本清張記念館を訪れることができた。汗がしたたりおちるような猛暑の一日だった。来年(つまり今年)が松本清張の生誕100年にあたり、各種イベントが開かれることを知ったの…

「ごてる」と「ごねる」

昨年の晩秋だったか、ある会合に顔を出すため仙台を訪れたとき、東北大学片平キャンパスの北門前にある古本屋熊谷書店で、『久保田万太郎全集』第12巻(中央公論社)を800円で購った。「随筆三」の巻である。熊谷書店には他に数冊、万太郎全集の端本があった…

iPodと落語とジャズ

「新・読前読後」の更新ができないでいたあいだ、自分のなかでちょっとした嗜好の変化があった。ひと言でいえば「落語とジャズ」である。 嬉しい副収入があったので、そのお金でiPodを買ったのである。最初はユーミンやサザン、スピッツなど、好きでいながら…

清張映画の限界

生誕100年 原作・松本清張 映像の世界@日本映画専門チャンネル 「危険な女」(1959年、日活) 監督若杉光夫/原作松本清張/脚本原源一郎/渡辺美佐子/芦田伸介/高友子/大滝秀治/下元勉/南風洋子/嵯峨善兵/鈴木瑞穂 以前「松本清張作品と映画は相性…

第10 山と川のある町ふたたび

先月出張で熊本をおとずれた。当地でお世話になる方々と夜に飲む約束をして待ち合わせ場所になったのが、熊本で有名な古書店舒文堂河島書店だった。いや、正確にいえば、当地の方と連絡を取った同僚についていったらそこが河島書店で、先方もそこにいらした…

荷風全集のまえに

あと一週間で『荷風全集』の刊行がはじまってしまう。大学生協書籍部に予約購読の申し込みをしたいのだが、そのまえにやらなければならないことがある。予約購読をしていながらまだ引き取っていない本を引き取ること。その本というのは、『決定版三島由紀夫…

ステップアップ『点と線』

この半年の“逼塞期間”には、休みの日もあまり外出せず、家に閉じこもることが多かった。すっかりそんな怠惰な生活が身についてしまい、容易にこの癖はなおりそうもない。先の週末も、あんなに天気が良かったのに、言葉どおりの意味で一歩も外に出なかった。 …

シングルファーザー今昔

2月から3月にかけ神保町シアターで組まれていた特集「東宝文芸映画の世界」のうち、堀川弘通監督の「娘と私」を観に行った。2004年1月にラピュタ阿佐ヶ谷で観て以来、二度目である(→2004/1/25条)。 前回も観ながら目が潤んできたが、そういう映画であると…

節目の年もう一人

昨日色川武大没後20年、松本清張・田中絹代(ついでに太宰治)生誕100年、獅子文六没後40年と書いたが、もう一人大事な人を忘れていた。 永井荷風。生誕130年および没後50年。今日の朝刊にあった岩波書店の広告で、『文学』が荷風特集をやることを知り思い出…

行く雲は見えずして

今年の桜の季節、谷中墓地を訪れるのは今日で三度目になる。この4月で、東京に住んで丸11年になり、東京暮らしは12年目に突入した。東京に住み始めた当初は桜の季節にかかわらず、朝の出勤時しばしばコースを変えて谷中墓地を通ったものだった。 いまでも谷…