松本清張と印刷

松本清張展

去年の夏、念願かなって小倉の松本清張記念館を訪れることができた。汗がしたたりおちるような猛暑の一日だった。来年(つまり今年)が松本清張の生誕100年にあたり、各種イベントが開かれることを知ったのもそのときではなかったか。それなら訪れるのは今年にすればよかったと、ちょっぴり悔やまないでもなかった。
とはいえこのように巡回展で東京でも展覧会があるのは嬉しい。さすがに松本清張。老若男女を問わずたくさんの観覧者がいる。
今回の展示で気になったのは、松本清張と印刷の関わりだった。作家デビュー時の清張は朝日新聞九州支社の広告部に勤めていたことは有名な話だが、それ以前は印刷所で働き、石版印刷の職人として広告印刷に従事していた。のち独立したという。
このあたりの経験は、長篇『遠い接近』(文春文庫)に投影されている。今回の展覧会ではその時代も取り上げられ、『遠い接近』が紹介されていた。
『遠い接近』といえば、以前森史朗『松本清張への召集令状*1(文春新書、→2008/3/28条)を読んだときにはじめて知った作品であった。以来探求本としてインプットされていたのだが、運よく入手でき、しばらく更新を休んでいたあいだに読んでいた*2。どこで手に入れたものだったか、こういう直近の記憶がすっかり抜け落ちている。だから感想を書いておかねばならないのである。
そのほか印刷所を取り上げている長篇として『連環』も紹介されていた。これもはじめて知った作品だった。『遠い接近』のときと同じく、いずれ見つけて読もうと頭のなかにインプットしたのだが、今回の展覧会に合わせてミュージアムショップで数多く販売されている清張本のなかに並んでいたのを見つけた。講談社文庫*3。何冊か積まれていたが、すべて小口が削られていたのは残念。2006年10月16日の46刷。
ついでにいえば文春文庫版『遠い接近』も並んでいた。『松本清張への召集令状』読後に調べたときには品切れだったはず。さすが清張本、一時的に品切れになることはあっても、絶版にはならず、待っていればいずれは手に入るということか。

*1:ISBN:9784166606245

*2:来月日本映画専門チャンネル小林桂樹さん主演のテレビドラマ(和田勉演出)が放映される予定で、これも楽しみ。

*3:ISBN:4061312448