2007-10-01から1ヶ月間の記事一覧

川本本の連鎖のことなど

川本三郎さんの新著『ミステリと東京』*1(平凡社)を読み終えた。 待ちに待った待望の本だった。本書が出る直前、別の新著『映画を見ればわかること2』の嬉しい不意打ちにも出くわした。秋田出張から帰り、その足で上野駅構内の新刊書店に飛び込んで、500頁…

映画を観たらわかったこと

レンタルDVD 「博士の愛した数式」(2005年、「博士の愛した数式」製作委員会/アスミック・エース) 監督・脚本小泉堯史/原作小川洋子/音楽加古隆/寺尾聰/深津絵里/斎藤隆成/吉岡秀隆/浅丘ルリ子/頭師佳孝

映画を観て原作のよさを知る

川本三郎さんの『映画を見ればわかること2』*1(キネマ旬報社、→10/25条)を読んで気になったのは、ひところ小説も、その小説を原作とした映画も話題になっていた『博士の愛した数式』であった。出張の機会にまず原作から読むことにする。 『博士の愛した数…

いまさら気づく長寿連載

東海林さだおさんの文庫新刊『丸かじり劇場メモリアルBOX』*1(朝日文庫)を読み終えた。 実は東海林さんの本を購入し、読んだのは本書が初めてなのだった。つい「メモリアルBOX」なんて書名につられて手に取り、触れられていた様々な食べ物のラインナップが…

不意打ちの愉しみ

いま出張先の秋田でこれを書いている。 出かける時間が朝の通勤ラッシュと重なってしまい、大きな荷物を抱えた人間にとって上野駅まで行きつくのがひと仕事だった。上野駅でも、ちょうど通勤電車から降りた人たちがいっせいにあの大改札口へ殺到する時間帯と…

三十代訣別の辞

とうとう30代の残り時間もわずかとなってきた。もうすぐ40歳の誕生日を迎えるのである。不惑である。惑わないのである。40歳という年齢を迎えるなんて想像したことはあまりなかったし、まだ40代になるという実感も薄い。30代なんてあっという間だったなあと…

1958年の映画と映画の1958年

川本三郎編 映画の昭和雑貨店2 昭和30年代ノスタルジア@神保町シアター 「一粒の麦」(1958年、大映) 監督吉村公三郎/脚本新藤兼人・千葉茂樹/菅原謙二/若尾文子/東野英治郎/松山英太郎/浦辺粂子/田中筆子/殿山泰司/上田吉二郎/見明凡太朗/潮万…

自縄自縛の恋愛

映画監督松林宗恵@ラピュタ阿佐ヶ谷 「ひかげの娘」(1957年、東宝・東京映画) 監督松林宗恵/原作野口赫宙/脚本新藤兼人/香川京子/山田五十鈴/東野英治郎/仲代達矢/伊藤久哉/中村伸郎/淡路恵子/三好栄子/中北千枝子/千秋実/若山セツ子/田中…

読書史の5W1H

永嶺重敏さんの新著『東大生はどんな本を読んできたか―本郷・駒場の読書生活130年―』*1(平凡社新書)を読みながら、ふと5W1Hということが頭に浮かんだ。 読書史には(いや、読書史に限るまいが、とにかく読書史には)5W1Hの観点が必要だ。誰が(Who)、何を…

十数年越しの宿願

17日付朝日新聞夕刊に、作家出久根達郎さんが江戸博で開催中の「文豪 夏目漱石展」を観るという特集記事が掲載されていた。そのなかに、新潮文庫の漱石作品売り上げ十傑が出ている。 一位こころ、二位坊っちゃん、三位三四郎、四位それから、五位吾輩は猫で…

野球解説が芸だった頃

銀幕の美女シリーズ(芦川いづみ)@衛星劇場(録画DVD) 「東京の孤独」(1959年、日活) 監督・脚本井上梅次/原作井上友一郎/脚本松浦健郎/美術中村公彦/小林旭/芦川いづみ/大坂志郎/月丘夢路/宍戸錠/西村晃/清水まゆみ/安部徹/殿山泰司/植村…

笠智衆の悲しみ

レンタルDVD 「東京暮色」(1957年、松竹) 監督小津安二郎/脚本小津安二郎・野田高梧/笠智衆/原節子/有馬稲子/山田五十鈴/中村伸郎/杉村春子/信欣三/高橋貞二/藤原釜足/山村聰/宮口精二/浦辺粂子/三好栄子/長岡輝子/桜むつ子/菅原通済/市…

第92 「東京暮色」の坂道

何事にも億劫になって、滅多に人の集まる場所に出かけることがなくなった。ましてや同業者の集まりは敬遠している。それでも諸般の事情で顔を出さねばならないこともある。そんなこんなで久しぶりに同業者の集まりに出かけた。 出かけてみると、旧友と会った…

銭ゲバ復権

先月シネマヴェーラ渋谷に「結婚の夜」を観に行ったとき(→9/12条)、二本立てだったため「ついでに」観たのが、唐十郎主演の「銭ゲバ」だった。 「結婚の夜」も面白かったのだが、70年代的なわびしさ(わたしにとっては懐かしさ)を感じさせる画面の「銭ゲ…

増村保造作品漬けの連休

増村保造レトロスペクティブ@日本映画専門チャンネル(録画DVD) 「巨人と玩具」(1958年、大映) 監督増村保造/原作開高健/脚本白坂依志夫/川口浩/野添ひとみ/高松英郎/伊藤雄之助/信欣三/山茶花究/小野道子/藤山浩一 品田雄吉のこれだけは語り…

すぐれた書評本の条件

例によって大学生協書籍部は買いたい本を入れてくれない。しかも本郷店にはなく、駒場店だけに入っているのも癪だ。ただ、目当ての本が一割引で買わねばならないほど高価で手が出ないというわけではなく、それが鹿島茂さんの本であることが救われた。『鹿島…

国民的作家の人気

特別展「文豪・夏目漱石―そのこころとまなざし―」@江戸東京博物館 阿佐ヶ谷で映画を観たあと、中央線・総武線でまっすぐ両国まで。江戸博で開催中の「漱石展」を観る。先日観た「東北大学の至宝展」同様、先生から招待券を頂戴していた。ありがとうございま…

聖と賤の弁証法

昭和の銀幕に輝くヒロイン第36弾 野添ひとみ@ラピュタ阿佐ヶ谷 「不敵な男」(1958年、大映) 監督増村保造/脚本新藤兼人/川口浩/野添ひとみ/船越英二/永井智雄/市川和子/岸田今日子 売春防止法後も裏で売春組織を経営し、女性を売り飛ばしている永…

記憶と時間と謎と

自分だって書友の影響で読みはじめたくせに、そして、読んだ面白さをこのようなところに書いて推薦しまくっているくせに、その反面あまのじゃくなものだから、いざ多くの人が読みはじめて輪が広がってくるとそこから一歩身を引きたくなる。われながら身勝手…

越境する本たち

先日、趣味とはまったく別にとある本*1を読んでいたところ、最近の歴史学では、「情報」というものを考えるとき、その質や量を考慮する段階に至っているという指摘がなされていた。 つまり、たとえば風聞など裏づけがない未分析段階の情報をインフォメーショ…

刑務所で観た記憶

日活名画館・小林旭シアター@チャンネルNECO 「赤い夕陽の渡り鳥」(1960年、日活) 監督斎藤武市/原作原健三郎/脚本山崎巌・大川久男/美術中村公彦/小林旭/浅丘ルリ子/宍戸錠/白木マリ/大坂志郎/近藤宏/深江章喜/島津雅彦/村瀬辰也 単純化すれ…

男の手料理

学生時代ひとり暮らしの自炊生活をしていたが、だから料理ができるかと問われれば、自信を持ってうなずくことはできない。 ひと夏中華料理屋でバイトしたことがある。その影響で自ら中華鍋を購入、豆板醤や甜麺醤を駆使して回鍋肉をこしらえることに夢中にな…

美貌に罪あり?

名画 the NIPPON@チャンネルNECO(録画HDD) 「美貌に罪あり」(1959年、大映) 監督増村保造/原作川口松太郎/脚本田中澄江/杉村春子/山本富士子/若尾文子/野添ひとみ/川口浩/川崎敬三/勝新太郎/潮万太郎/村田知栄子/見明凡太朗/村田扶実子/…

『気まぐれ美術館』復刊

月替わりになったので新潮社のサイトを漫然と見ていたら、今月「とんぼの本」シリーズから『洲之内徹 絵のある一生』という本が出ることを知った。これはおそらく『芸術新潮』1994年11月号(特集「今こそ知りたい! 洲之内徹 絵のある人生」)が元になってい…