増村保造作品漬けの連休

「巨人と玩具」(1958年、大映
監督増村保造/原作開高健/脚本白坂依志夫川口浩野添ひとみ高松英郎伊藤雄之助/信欣三/山茶花究小野道子/藤山浩一
「くちづけ」(1957年、大映
監督増村保造/原作川口松太郎/脚本舟橋和郎川口浩野添ひとみ三益愛子小沢栄太郎/村瀬幸子/若松健/見明凡太朗

増村保造監督作品で、川口浩野添ひとみが登場するものを続けざまに観ている。ただ、この組み合わせのなかでも傑作と言われている作品をまだ観ていない。今回のラピュタ阿佐ヶ谷での野添ひとみ特集にも入っているのだが、観ることができなかった。「巨人と玩具」「くちづけ」二本である。いずれも増村保造作品のなかでも傑作の誉れ高いものだ。さいわい録画DVDがあるので、この機会に一気に観ることにした。
「巨人と玩具」は開高健原作。菓子メーカーの宣伝合戦を取り上げ、マスメディアを揶揄するような批判的精神がある。高松・川口の二人が、自社商品の宣伝のため、たまたま街で見かけた女の子をスカウトし、キャンペーンガールとして使ったところ、彼女がメキメキと頭角を現して人気スターになってしまう。マスコミがつくりあげられた虚像に振り回される高松・川口コンビに、自ら虚像であることを自覚しない野添ひとみ開高健増村保造の強烈な諷刺に笑う。
インチキくさい売れっ子カメラマンが伊藤雄之助。いかにも伊藤雄之助らしい存在感。信欣三は胃を患った古いタイプの宣伝部長。部下であり娘婿でもある宣伝課長の高松英郎から相手にされない。
この作品での野添ひとみは、野暮ったくて貧乏長屋暮らしの女の子という設定で、しかも前歯にひどい虫歯がある。醜悪このうえないのだが、スターに変貌してからの姿も、本来の可憐さとはほど遠い。作品自体も、出演者本位というより、ストーリー本位で、俳優が目立つ作品ではない。むろんこれらはみな演出であるわけだが、野添目当てもあって増村作品を観ているわたしとしては、ちょっと物足りない。
それに反して、増村監督のデビュー作だという「くちづけ」には堪能させられた。小菅とおぼしい拘置所で出会った男女(川口浩野添ひとみ)が、その日のうちに意気投合して後楽園の競輪場でデートし、さらにバイクにまたがって湘南に向かい、海で遊ぶ。若者の刹那的な恋愛にうっとり。野添ひとみにもうっとり。それにしても、川口浩の母親役である実母の三益愛子は、いつ見てもそう思うのだが、目元が涼しすぎるというか、冷たすぎてこわい。

巨人と玩具 [DVD]

巨人と玩具 [DVD]

くちづけ [DVD]

くちづけ [DVD]