2007-02-01から1ヶ月間の記事一覧

観者の空間

先ごろ仕事がらみで「宴会の歴史」について考える機会があった。日本人はどのような酒宴を催していたのか。前近代の身分制社会において、酒が入る宴会にはどのような意味があったのか。文字史料や絵画史料に宴会はいかに記録されているのか。発掘遺物からど…

観る一日 夜は歌舞伎

二月大歌舞伎・夜の部 仮名手本忠臣蔵 五段目/六段目/七段目/十一段目 歌舞伎の感想が映画のそれにくらべあまりに投げやりであるという至極もっともで手厳しい指摘(笑)をある方から受け、さて夜の部はまじめに観なければと力を入れる。池部良トークショ…

観る一日 朝昼は映画

二枚目スター池部良の魅力のすべて@新文芸坐 「青い山脈(前編)(後編)」(1949年、東宝) 監督今井正/原作石坂洋次郎/脚本今井正・井手俊郎/原節子/池部良/杉葉子/龍崎一郎/若山セツ子/伊豆肇/木暮実千代/藤原釜足/原緋紗子/三島雅夫/田中…

等身大のチャンバラ劇

シリーズ・日本の撮影監督(2)@東京国立近代美術館フィルムセンター 「下郎の首」(1955年、新東宝) 監督・脚本伊藤大輔/撮影平野好美/田崎潤/高田稔/片山明彦/小沢栄/瑳峨三智子/山本豊三/岡譲司/三井弘次/浦辺粂子/丹波哲郎/高堂国典 「下郎…

司馬遼太郎の熱い思い

広瀬正さんの長篇『ツィス』*1(集英社文庫)を読み終えた。 一昨年の4月、川本三郎・司馬遼太郎両氏に導かれるように、広瀬さんの『エロス』『マイナス・ゼロ』二長篇を読んだ(→2005/4/10条・→2005/4/14条)。わたしはSFのなかではなぜかタイムトラベル物…

あわれ田中邦衛

「兵隊やくざ」シリーズ全9作品一挙放送@日本映画専門チャンネル(録画HDD) 「兵隊やくざ脱獄」(1966年、大映) 監督森一生/原作有馬頼義/脚本舟橋和郎/勝新太郎/田村高廣/小川真由美/田中邦衛/中谷一郎/草薙幸二郎 さすがにシリーズ第四作ともな…

「現代的」な高倉金田一

ミステリ劇場へ、ようこそ。【第2幕】@ラピュタ阿佐ヶ谷 「悪魔の手毬唄」(1961年、東映東京) 監督渡辺邦男/原作横溝正史/脚本渡辺邦男・結束信二/高倉健/志村妙子/八代万智子/小野透/石黒達也/北原しげみ/中村是好/花沢徳衛/神田隆 高倉健が…

小沢昭一の「愛列島心」

最近本を読み終えてもすぐ感想を書かないことが多くなった。しばらく経つと中味を忘れてしまい、そのままという本が増えてゆく。映画は本以上に観終えてすぐ感じたことを書かないと忘れてしまうので、何とか感想を書いているけれど、このため肝心の読前読後…

戦争を生き抜いた人びと

韓国ドラマの原点はここに!松竹メロドラマ大特集@衛星劇場(録画HDD) 「君の名は(第一部)」(1953年、松竹大船) 監督大庭秀雄/原作菊田一夫/脚本柳井隆雄/佐田啓二/岸恵子/淡島千景/月丘夢路/川喜多雄二/笠智衆/小林トシ子/野添ひとみ/淡路…

最初と最後を楽しむ

二月大歌舞伎・昼の部 仮名手本忠臣蔵 大序/三段目/四段目/浄瑠璃道行旅路の花聟 最近めっきり歌舞伎を観る機会が少なくなってきたことに加え、せっかく観に行ってもつい眠ってしまうことが多く、いい観客とは言えない。今回も三段目・四段目あたりに眠っ…

戦争体験を経た日常性について

日経ビジネス人文庫『私の履歴書―第三の新人』*1を読み終えた。本シリーズを読むのは、先に刊行された『私の履歴書―中間小説の黄金時代』(→2006/11/18条)に次いで2冊目。先のものには井伏鱒二・舟橋聖一・井上靖・水上勉の四人の文章が収められていたが、…

一本で元を取る

名匠・吉村公三郎の世界@新文芸坐 「銀座の女」(1955年、日活) 監督吉村公三郎/脚本新藤兼人・高橋二三/轟夕起子/乙羽信子/藤間紫/日高澄子/島田文子/南寿美子/長谷部健/北原三枝/田中筆子/殿山泰司/安部徹/金子信雄/清水将夫/三津田健/…

第88 下山遺跡と山村遺跡

先の週末はせっかくの連休、いろいろ出歩きたいのは山々だったけれど、前に書いたような事情で土曜日の午前中ラピュタ阿佐ヶ谷に「黒い潮」を観に出かけたほかは、我慢して籠居していた。 さすがにずっと籠もりきりだと息苦しくなってくる。また「黒い潮」を…

「黒い潮」と『下山事件』

「黒い潮」を観たことで、また下山事件への関心が沸きあがってきた。阿佐ヶ谷から帰宅した後、買ってそのままになっていた森達也さんの『下山事件シモヤマ・ケース』*1(新潮文庫)を積ん読の山から探し出し、読み始める。 いま「また」と書いたことについて…

憲兵成田三樹夫と懐かしの玉川良一

「兵隊やくざ」シリーズ全9作品一挙放送@日本映画専門チャンネル(録画HDD) 「新・兵隊やくざ」(1966年、大映) 監督田中徳三/原作有馬頼義/舟橋和郎/勝新太郎/田村高廣/瑳峨三智子/成田三樹夫/神田隆/藤岡琢也/玉川良一/見明凡太朗 第二作(→2…

真実はひとつ

昭和の銀幕に輝くヒロイン第32弾 津島恵子スペシャル@ラピュタ阿佐ヶ谷 「黒い潮」(1954年、日活) 監督・出演山村聰/原作井上靖/脚本菊島隆三/津島恵子/左幸子/滝沢修/東野英治郎/信欣三/河野秋武/安部徹/柳谷寛/芦田伸介/浜村純/夏川静江/…

「抵抗」むなしく

名匠・吉村公三郎の世界@新文芸坐 「四十八歳の抵抗」(1956年、大映) 監督吉村公三郎/原作石川達三/脚本新藤兼人/山村聰/若尾文子/雪村いづみ/小野道子/船越英二/川口浩/村田知英子/三津田健/潮万太郎 「電話は夕方に鳴る」(1959年、大映) …

荷風と川本三郎を追いかけて

最近岩波現代文庫に入った前田愛さんの2冊『幻景の明治』*1『幻景の街』*2は、それぞれかつて古本屋で元版を入手ずみであったのだが、読まないまま、結局文庫版も購入してしまった。いずれも川本三郎さんが解説を書いていることも大きな理由である。 その川…

小沢栄太郎のことども

昨日触れた小澤僥謳『火宅の人 俳優小澤栄太郎』*1(角川書店)は、職場近くの古本屋で手に入れた。 この古本屋には昼休みしばしば立ち寄り、その都度文庫本などを買っているから、おばちゃんからは顔をおぼえられている。お金を払うときいつも何か話しかけ…

俳優座三人男

メモリーズ・オブ・若尾文子Part7@衛星劇場(録画HDD) 「十代の性典」(大映、1953年) 監督島耕二/脚本須崎勝弥・赤坂長義/若尾文子/南田洋子/沢村晶子/小田切みき/津村悠子/長谷部健/千田是也/小沢栄/東野英治郎/見明凡太朗 衛星劇場の若尾文…

第87 台地の実感

この週末、ある集まりに参加するため静岡県は菊川という町を訪れた。東海道線に菊川という駅がある。静岡から40分、焼津・藤枝を過ぎ、掛川のひとつ手前だ。もとは菊川町、一昨年の〝大合併〟により、隣接する小笠郡小笠町と合併して菊川市となった。人口5万…

危険なヒーロー信号

「兵隊やくざ」シリーズ全9作品一挙放送@日本映画専門チャンネル(録画HDD) 「続・兵隊やくざ」(1965年、大映) 監督田中徳三/原作有馬頼義/脚本舟橋和郎/勝新太郎/田村高廣/小山明子/水谷良重/芦屋雁之助/芦屋小雁/上野山功一/睦五郎/須賀不…

「白清張」で乗り過ごす

松本清張と言えば「黒」というイメージがある。作品名に『黒い…』と名づけられたものが多いからだけでなく、作品の内容を色彩にたとえても同じだ。文春文庫の背の色の印象が強いのだろう。 実際のところ自分の場合、清張作品は文春文庫より新潮文庫で読んで…