2005-04-01から1ヶ月間の記事一覧

旅のお供に大満足

小林信彦さんの『読書中毒―ブックレシピ61』*1(文春文庫)を読んだ直後、出張にでかけることになっていたわけだから、志向は当然物語に向けられており、車中読書に何を選ぶか、例によって今度もはなはだしく迷った。 同書を読んで気になった作家を選ぶのが…

第68 横手にて

いま出張で横手にいる。2月の大雪のときと同じ駅前のホテルに泊まっているが、そのときにはなかったLAN接続のコネクタとケーブルが部屋に備え付けてあって、持参していたノートPCからネットにつなぐことができた。 もとより明日の不忍ブックストリートは、実…

賭けに負けても読書の快楽

先日の池袋西口公園古本まつりにて、小林信彦さんの『小説探検』*1(本の雑誌社)という本を購った。 同書を目にしたとき、買おうか買うまいかしばし迷った。少なくとも私の持っている小林さんの文庫本に同じタイトルのものはないからだ。入っているとすれば…

やっぱり大好き成瀬さん

成瀬巳喜男監督の映画は、ロケではなく、たいていセット(オープンセットもしくはスタジオセット)が組まれ撮られていたということは、成瀬ファン周知の事柄に属するのだろう。 わたしは、先月見た世田谷文学館での「成瀬巳喜男展」やその前後に読んだ佐藤忠…

断簡零墨趣味者の小冒険

ひと月経つのは早いもので、このあいだ『司馬遼太郎が考えたこと5』*1(新潮文庫、→4/10条)を買ったと思ったら、もう次の『司馬遼太郎が考えたこと6』*2が出てしまった。今月の新潮文庫(5月の新刊)はゴールデン・ウィークのためか発売が前倒しになってい…

地団駄を踏む内田百間

内田百間の文業については、テーマ別に再編集したアンソロジーを中心とした作品集が福武文庫(29冊)と最近のちくま文庫(24冊)に入っている。また別に、これらに先行して、単行本ごとにそのまま文庫化された旺文社文庫版(39冊)がある。 福武文庫版もちく…

銀座に川があった頃

録画DVD@日本映画専門チャンネル 「銀座化粧」(1951年、新東宝) 監督成瀬巳喜男/美術河野鷹思/田中絹代/花井蘭子/東野英治郎/堀雄二/香川京子 映画はスクリーンで観るのがベターである。映画館という空間が苦手な私でもそう思う。家で観ると、とり…

待ち伏せ体験の喜び

北村薫さんの『続・詩歌の待ち伏せ』*1(文藝春秋)が出るというので、いつも本を買うお店に入るのを待っていたのだけれど、なかなか入らない。「あれ、まだ出てないのかしらん」と調べてみると、すでに大書店には入っている。もう少し待ってみようと我慢し…

買い過ぎた。はあ…

池袋西口公園古本まつり ★和田誠『似顔絵物語』(白水社) カバー・帯、600円。同じ版元の『装丁物語』を読んで以来気になっていた本。退屈男さんとの山藤章二・和田誠似顔絵に関する対話からも触発されていた。【ブックス丈】ISBN:4560046638 ★野口冨士男『…

開拓者の物語

庄野潤三さんの『せきれい』(文春文庫)を読み、日常生活の隅々にひそんでいるささやかな幸福を拾いあげることで構築されている作品世界に魅了された。そしてこの作品を含む一連の「老夫婦物」全体に関心が広がった(→1/23条・1/28条)。 1/28条では、はじ…

川男の物語

文庫に入った重松清さんのエッセイ集『明日があるさ』(朝日文庫)を買おうとして、同じ朝日文庫の新刊として隣に積まれていたシンプルなデザインの本が目にとまった。佐伯一麦さんの『川筋物語』*1という本である。 帯には「仙台に戻り、みちのくの山や川を…

第67 「歴史の証人」たらんとして

昨夜仕事で渋谷方面に出かけるにあたり、ひらめいたことがあった。仕事が終わったらその足で神宮球場にかけつけ、古田の2000本安打を観てこよう、と。これを思いついたときから心躍っていたのだったが、あいにくの雨模様。午後早々に試合中止が決まってがっ…

原作にかなり忠実

テレビドラマ@テレビ東京 「渡された場面」 原作松本清張/三浦友和/佐野史郎/高岡早紀/石倉三郎/寺田農 前日、たまたま大学生協書籍部で松本清張の『Dの複合』を買い求めようとしたとき、近くに並んであった『渡された場面』に見慣れぬ帯がかけられて…

小説家の歌声

ある日、子どもたちも寝静まった時間に、疲れ果てて帰宅した。もう何もせず風呂に入って早く眠りたい。ただ、今日手に抱えてきた本は、この暗く落ち込んだ気持ちをひょっとしたら上向きに変えてくれるかもしれない。そんな期待を持ちながら、そそくさと風呂…

懐古趣味とミーハー趣味のあいだ

むかしの日本映画を観ようとする動機を考えてみる。わたしの場合、川本三郎さんの著作をひとつのきっかけとして関心を持つようになったことからもわかるように、ストーリーや演じている俳優よりも、映画に映る過去の東京の情景、さりげなく演出される昔の日…

伝説の絵日記

数日前山藤章二さんの『アタクシ絵日記 忘月忘日8』(文春文庫)を手に入れ、1月から集め始めた同シリーズ既刊分8冊がメデタク揃った。これまで1と2の2冊を読んでいたが、いい機会なので、残り6冊をこの週末一気に読むことにした。 いま既刊分と書いたが、続…

佐野繁次郎のデッサンを買おう

「佐野繁次郎展 絵 装幀 デザイン」@東京ステーションギャラリー 先月世田谷文学館を訪れたさい(→3/19条)、他館のチラシなどのあるスペースに、この「佐野繁次郎展」の招待券の束(上端部が糊で綴じられたもの)が無造作に置いてあったので、これ幸いと一…

8冊揃った!

自宅近くの古本屋 ★山藤章二『アタクシ絵日記 忘月某日PART8』(文春文庫) カバー、300円。これで既刊8冊すべて揃った。メデタシメデタシ。ISBN:4167463083 ★色川武大『寄席放浪記―なつかしい芸人たち』(廣済堂文庫) カバー、280円。新潮文庫『なつかしい…

しかしお定さんがお好きですね

今年度、半期だけだが都内の某大学で週に一度教壇に立つことになった。ここは、丸谷才一さんの小説中随一の傑作だと思っている『笹まくら』*1(新潮文庫)で、徴兵忌避者の主人公が戦後事務職員として勤務した学校のモデルだ。 これは丸谷さんご自身の大学教…

官能的なスリム帯

棚澤書店(店頭本)@東大正門前 ★大岡昇平『酸素』(新潮文庫) カバー、100円。あまり古本屋で見たことがない本で、即物的なタイトルが気になった。大岡さんは戦時中日仏合弁の酸素会社に勤めた経験があり、それがもとになっているらしい。 ★阿川弘之『乗…

洲之内コレクション展情報

「気まぐれ美術館 洲之内コレクション」展@茨城県近代美術館 今日の朝日新聞夕刊で知る。6月5日まで。同美術館のサイトを見ると、鑑賞ポイントを紹介するリーフレットがPDFでダウンロード可能で、なんと洲之内さんのイラストが鑑賞ポイントを案内してくれる…

少年時代の自分に送る本

広瀬正さんの『エロス』を読み終えたとき、「余韻が消えないうち『マイナス・ゼロ』を読まねば」と書いたのは、偽らざる心境だった。とはいえ、同じ作者の似た系統の作品を続けて読むのをためらうという“読み惜しみ”体質の自分のこと、あいだに別の本を挟み…

杉の植林と花粉症

シーズン前、今年は史上最大の杉花粉飛散量になると予想され、実際そのとおりになった。これまで花粉症の「か」の字すらなかった私も、この直撃を喰らい、花粉症にかかってしまったようだ。 いま、「ようだ」と断定を避け曖昧な表現を使ったのは、花粉症にな…

ビギンはbeguine

先日読んだ井崎博之『エノケンと呼ばれた男』*1(講談社文庫、→3/31条)のなかに、戦後榎本健一・古川ロッパ・柳家金五楼の三大喜劇スターが大合同して大当たりをとった「アチャラカ誕生」について、和田誠さんの著書『ビギン・ザ・ビギン』の一節が引用され…

「独立愚連隊」評判記

録画@日本映画専門チャンネル 「独立愚連隊西へ」(1960年、東宝) 監督岡本喜八/脚本関沢新一・岡本喜八/加山雄三/佐藤允/中谷一郎/平田昭彦/中丸忠雄/フランキー堺/水野久美 「独立愚連隊」シリーズ第二弾。加山雄三初主演作なのだそうだ*1。軍旗…

乱歩物ミステリの隠れた秀作

長男の誕生日プレゼントを買いに行くため、知人から車を借りた。東京で車を運転する機会は年に一、二度あるかないかなので、ついでに、これまで段ボール箱にためていた処分予定本を古本屋に売りに行くことにした。 そこでせっかくの機会だから、できるだけ処…

戦前東京の細部を描くSF

『司馬遼太郎が考えたこと5』*1(新潮文庫)を購い、同書に収録されている直木賞選評を拾い読みしているうち、読みたくなってきた本があった。ときおり手にとって読む機会をうかがっていたものだったから、いよいよ読む機が到来したかと思っていたのである。…

アウラを大事にする男

坪内祐三さんをめぐる晩鮭亭さん(id:vanjacketei)と四谷書房さんとの間でのやりとりのなかで、「巧みな本の案内人」であるというキャッチフレーズが提起され、「そうそう」と深くうなずいた。ちょうど、『私の体を通り過ぎていった雑誌たち』*1(新潮社)を…

おもしろいす

川上弘美さんと堀江敏幸さんの本は二卵性双生児のようだ。 一昨年の秋も深まった頃、川上さんの『ニシノユキヒコの恋と冒険』*1と、堀江さんの『雪沼とその周辺』*2があいついで新潮社から出た(それぞれ2003/11/29条・2003/11/30条参照)。どちらもハードカ…

グレン隊考

録画@日本映画専門チャンネル 「独立愚連隊」(1959年、東宝) 監督・脚本岡本喜八/佐藤允/中谷一郎/三船敏郎/中丸忠雄/鶴田浩二/上原美佐/雪村いづみ/中北千枝子 現在“日本映画専門チャンネル”では、成瀬巳喜男特集と並行して、その成瀬監督の下で…