佐野繁次郎のデッサンを買おう

いま道のべに

先月世田谷文学館を訪れたさい(→3/19条)、他館のチラシなどのあるスペースに、この「佐野繁次郎展」の招待券の束(上端部が糊で綴じられたもの)が無造作に置いてあったので、これ幸いと一枚だけ頂戴してきた。
赤瀬川原平さんの提唱にもとづき、ふところに数百万円持って展示物のうち何か一点を購入するつもりで見ることにする。
佐野繁次郎の作品についての印象を言葉にしようとしても、適当な表現が見あたらず困惑する。とりわけ油絵やコラージュがそうだ。油絵で買うとすれば、「アトリエ」か、「画家の肖像(死んだ画家)」。ただそれよりも、鉛筆による「裸婦」やパリの街角のデッサンがいい。これに決める。
装釘を手がけた横光利一の本や『銀座百点』がずらりと並ぶ展示室は圧巻。吉井勇『東京紅燈集』、宇野信夫『花にふる雨』の装画に描かれる瓦屋根の町並は、山藤章二さんのイラストを想起させる。源氏鶏太作品も多いけれど、なにか特別なつながりがあったのだろうか。
図録と一緒に売られていた小冊子『sano100 佐野繁次郎とその装釘』(sano100 associe編)に装釘本リストがまとめられており、私が持っている佐野装釘本としては、野口冨士男『いま道のべに』*1講談社、書影参照)があった。