展覧会

速水御舟に惹かれる心

「速水御舟―日本美術院の精鋭たち―」@山種美術館 年のせいか最近油絵の具を使ったいわゆる洋画から、絹本・紙本に顔料で描いた日本画に惹かれることが多くなった。東京国立近代美術館など大きな美術館の常設展示などでも、日本画の空間にやすらぎをおぼえる…

ファイナル平野政吉美術館

藤田嗣治の祈り 平野政吉の夢 まだ雪の残る3月に秋田を訪れたとき、ツイッターにて、平野政吉美術館にて藤田嗣治の「秋田の行事」を観るのもこれで最後だろうと書いた。ところがはからずも最後の最後にまた訪れることができたのは幸いだった。6月30日いっぱ…

府中には長谷川利行がある

近代洋画にみる夢 河野保雄コレクションの全貌@府中市美術館 土日に出張があった代休を利用して、府中市美術館に行く。前回のデルヴォー展のおりは車で行き、渋滞で往復に苦労したので、今回は京王線とバスを使う。最近美術館の展覧会情報はネット経由で知…

葉山にてふたたび松本竣介

松本竣介展@神奈川県立近代美術館(葉山館) 美術館に行くということで、妻を日曜の葉山ドライブに誘い出した。わが家族のなかでもっとも絵心のある次男もついてきた。長男は自宅で留守番するという。神奈川県立近代美術館の葉山館を訪れるのは二度目だが、…

対照的な日本画

吉川霊華展 近代に生まれた線の探求者@東京国立近代美術館 所蔵作品展@東京国立近代美術館 最近毎週金曜日の仕事帰りは美術館通いが習慣になってきた。 現在東京国立近代美術館で開催されている所蔵作品展(常設展)の会期後半に、鏑木清方の「明治風俗十…

ブリヂストン美術館ふたたび

あなたに見せたい絵があります。―ブリヂストン美術館開館60周年記念@ブリヂストン美術館 このところ毎週のように金曜日は仕事帰りに美術館に立ち寄っている。やらねばならないことがあまりに多すぎて、せめて絵を観て頭をすっきりさせたいという気持ちなの…

震災後の洲之内コレクション

常設展@宮城県立美術館 毎年この季節は、出身大学・研究室の同窓学会があって、なるべく仙台に行くようにしている。先生や先輩・同輩・後輩に会うことはもちろんだが、第二の故郷である仙台は、その町にいるだけでいい心持ちになるからだ。 同窓学会では、…

カフェ・パウリスタを観に

所蔵作品展「近代日本の美術」@東京国立近代美術館 子どもにあわせて早起きしているため、とにかくこのところ金曜日になるとがっくり疲れてくる。 東京国立近代美術館開館60周年の公式ツイッターにて、大好きな長谷川利行の「カフェ・パウリスタ」をめぐる…

岩手で観る松本竣介

生誕100年松本竣介展@岩手県立美術館 今年のゴールデンウィーク、無謀にも妻の実家がある岩手に帰省することにした。渋滞が嫌なので最初渋っていたけれども、盛岡にある県立美術館にて松本竣介展が開催中であることを知り、ならばと行くことに決めた。とこ…

山形人にとっての高橋由一

近代洋画の開拓者 高橋由一@東京藝術大学大学美術館 おそらくこの展覧会の中心的な企画者なのだろう、芸大の先生である古田亮さんの『高橋由一―日本洋画の父』*1を読んで、万全の体制で観に行った。本当は昨日の昼休みに行く予定だったが、外に出てまもなく…

仕事と趣味

館蔵品展「奥絵師・木挽町狩野家」@板橋区立美術館 「趣味と仕事(食べていくための職業)が一致する人はしあわせだ」とよく言われるが、わたしはそれに同意しかねる。 以下はあくまでわたし個人の例にすぎないことをおことわりしておく。たとえばわたしは…

時間感覚の不思議

所蔵作品展「近代日本の美術」@東京国立近代美術館 先週金曜夜のブリヂストン美術館に味をしめて、また金曜夜に美術館に行く。ブリヂストン美術館は京橋にあるが、今度は竹橋。東京国立近代美術館である。実はこの美術館もブリヂストン創業者の石橋正二郎氏…

花押変幻自在

蕭白ショック!! 曾我蕭白と京の画家たち@千葉市美術館 子供のサッカー練習の合間に、千葉市美術館で開催中の曾我蕭白展を妻と観に行く。同僚に招待券を恵んでいただいた。感謝申し上げます。行く前に、辻惟雄さんの『奇想の系譜』*1(ちくま学芸文庫)にて…

金曜日は美術館へ

あなたに見せたい絵があります。―ブリヂストン美術館開館60周年記念@ブリヂストン美術館 仕事帰りにブリヂストン美術館へ行き、開催中の「あなたに見せたい絵があります。」展を観る。金曜は20時まで開いている。以前岡鹿之助展を観に訪れたときも金曜だっ…

ふたつの写真展からさんま坂へ

幻のモダニスト 写真家堀野正雄の世界@東京都写真美術館 生誕100年記念写真展 ロベール・ドアノー@東京都写真美術館 「幻のモダニスト」という名前に惹かれ、観に行こうと思っていたところ、はからずもほぼ同時期にロベール・ドアノー展も開催されるという…

いつしか遠く旅したと

生誕100年藤牧義夫展 モダン都市の光と影@神奈川県立近代美術館鎌倉館 昨年7月、藤牧の郷里館林にある群馬県立館林美術館で開催された藤牧義夫展のときは、会期の比較的早い時期に観にいったが(→2011/7/30条)、今回は最終日にぎりぎり間に合った。それに…

西片町と阿部家

「収蔵品展 伯爵家のまちづくり―学者町・西片の誕生―」@文京ふるさと歴史館 18日までということで、昼休みに観にいく。ぎりぎり間に合った。特別展・企画展というほど大規模なものでなく、地下の展示室を全面使ったものではないこぢんまりとした展覧会であ…

都市から郊外へ

「都市から郊外へ―1930年代の東京」@世田谷文学館 川本さんの『白秋望景』を集中して読む時間と空間を確保したいという気持ちもあって、雨のため子どものサッカーへのつきあいがなくなった土曜日、電車を乗りついで烏山の世田谷文学館へと足を運んだ。この…

巴水を買いに

平木浮世絵美術館 クリスマスで賑わうららぽーと豊洲の平木浮世絵美術館に行く。 先日ここを訪れたとき(→11/26条)、川瀬巴水の版画作品が限定販売(70枚)されていたのを知り(もっとも知ったのは会場でなくホームページだったかもしれない)、心を動かさ…

洲崎パラダイス縦断

石版画のパイオニア 織田一磨展 「東京風景」と「大阪風景」@平木浮世絵美術館 池袋にある某大学にて開催された某学会に出席し、聴きたかった報告がすんで休み時間に入るとすぐ有楽町線に乗って豊洲まで出た。目指すは、ららぽーと豊洲にある平木浮世絵美術…

裸体画づくし

ぬぐ絵画 日本のヌード1880-1945@東京国立近代美術館 締切が迫った仕事の校正のため、竹橋の国立公文書館に行く。そのあとはお決まりのコース。隣の近代美術館へ。金曜は20時までということで、公文書館の開館時間ぎりぎりまで調べ物をしても、余裕で観るこ…

池袋モンパルナスふたたび

池袋モンパルナス展@板橋区立美術館 1930〜40年代を池袋モンパルナスで過ごした画家のうち、板橋区にゆかりのある寺田政明(俳優寺田農さんの父)・古沢岩美・井上長三郎を中心に、池袋モンパルナスに暮らした画家たちの作品を展示した展覧会。 板橋区立美…

浮世絵からわかること

浮世絵戦国絵巻〜城と武将@太田記念美術館 午前中職場で所用をすませ、地下鉄を乗りついで表参道までゆく。そこから表参道を神宮前の太田記念美術館まで歩いた。いま読んでいる吉田篤弘さんの『木挽町月光夜咄』*1(筑摩書房)に、表参道A4番出口という語句…

東京の坂道には風情がある

坂道・ぶんきょう展@文京ふるさと歴史館 通勤にはいつも東京メトロ千代田線を使っている。職場は本郷台地上にあり、地下鉄は本郷台地と上野台地に挟まれた谷間の下を走っているから、坂道を登らなければ職場にたどりつけない。 その日の気分や体調、仕事の…

抱一を堪能する

酒井抱一と江戸琳派の全貌@千葉市美術館 酒井抱一という名前を知ったきっかけは漱石の小説だった。いま『漱石全集』の総索引(第28巻)にて調べてみると、『虞美人草』に最初に出てくる。逆に立てたのは二枚折の銀屏である。一面に冴へ返る月の色の方六尺の…

なぜ和田誠に惹かれるのか

和田誠展「書物と映画」@世田谷文学館 世田谷文学館にて昨日からはじまった和田誠展に行く。つい最近たばこと塩の博物館にて、煙草を主題にしたイラストの展覧会を観たばかりだと思っていたが、半年以上経つのか(→2010/10/24条)。 昨夏自家用車を購入して…

絵巻を流して見ると

生誕100年藤牧義夫展@群馬県立館林美術館 妻に群馬までのドライブ・デートを誘ったものの、テニスに行く、と断られたため、やむをえず、ひとり車で群馬県立館林美術館に行く。サブ・ドライバーがいれば安心だというもくろみを鋭く察知されてしまったらしい…

濹東綺譚の新聞連載原稿

開館80周年記念特別展―新収稀覯本を中心に―@天理ギャラリー 同僚からこの展覧会のことを教わった。そもそも天理ギャラリーという天理図書館の東京出張所のようなところがあることすら知らなかった。神田錦町にある「東京天理ビル」の9階にある(http://www.…

牛島憲之をなぜ知っていたのか

開館三〇周年記念特別展 牛島憲之 至高なる静謐@渋谷区立松濤美術館 どこか美術館にでも行きたいなあと、展覧会情報をチェックしていたら、松濤美術館での「牛島憲之展」が目に飛びこんできた。その瞬間「行こう」と決断する。 ただ、牛島憲之という画家の…

写実絵画の不思議

開館記念特別展@ホキ美術館 ホキ美術館は、千葉市の東、住所でいえば緑区あすみが丘東というところにある。外房線JR土気駅が最寄駅である。昭和の森という森林公園に接している。…とわかったように書いているけれど、土気という駅、あすみが丘という地名は…