なぜ和田誠に惹かれるのか

和田誠展書物と映画

世田谷文学館にて昨日からはじまった和田誠展に行く。つい最近たばこと塩の博物館にて、煙草を主題にしたイラストの展覧会を観たばかりだと思っていたが、半年以上経つのか(→2010/10/24条)。
昨夏自家用車を購入してから、仙台で暮らしていたときの感覚が戻り、すっかり車にたよる生活になってしまった。東京で暮らす身でまさかそうなるとは思っていなかった。昨日の館林はまだしも、烏山にある世田谷文学館に車で行くようになるとは、これまた想像だにしていなかった。
車を使うのも一長一短だ。電車のなかで本を読む時間を失った。電車を乗りつぎ、駅から歩いて目的の場所に向かうまで、町歩きをするなかで、自分の足と目で東京という都市の隅々で発見したかもしれない「何か」を失った。これが短所。いっぽう長所はさほど疲れずに目的の場所まで行けること。もう一つは、車内というプライベートの空間を味わえること。
昨夜NHKBSプレミアムABBAの特番を観た。三十数年前、小学校高学年から中学生の頃に熱中したアバの音楽を映像つきで楽しむことができた。ローティーンの頃アバの4人(とくに女性2人)を見て、「おばさんだなあ」と思っていたが、二人は当時20代後半から30歳前後。いま見ると金髪のアグネッタは綺麗だなあとうっとりする。
テレビ番組でアバの曲に触れ、あらためてじっくり聴き込んでみたくなる。カーステレオのハードディスクには『Gold』『More Gold』2枚のベストを入れてあるので、アバの曲を聴きながらドライブして世田谷文学館に行こう。昨夜のうちにそう決めてしまったのである。
昨日テレビで流れなかった曲にも、「Super Trouper」「Angeleyes」「One Of Us」「When All Is Said And Done」などの名曲があるなあなどと、小中学生の頃耳で聴いて適当におぼえた(だから正しくない)英語の歌詞を口ずさみながら運転するのが気持ちいい。
さて、お目当ての和田誠展である。二階の展示室への階段を上った先に、ポスターにもある「書物と映画」のロゴが目に入って和田さんの世界へ誘ってくれる。そのタイトルどおり、装幀を担当した本の現物や、挿絵や装画の原画、ポスターなどなど、和田ファンにはたまらない贅沢な空間のなかに身をおいていることの幸福感。
わが本置き部屋にも少なからず和田さんの手にかかった本はあるはずであり、現にパソコンの左手には丸谷さんの本が並び、また『お楽しみはこれからだ』なども見え隠れしている。あれも、これも、自分の部屋にあるのに、あのような展示空間でほかの作品と一緒に並べられている様子を見て、まるではじめてそれに接したかのように興奮するのだから不思議である。
「書物」篇では、とくに丸谷才一井上ひさし村上春樹谷川俊太郎四氏の著作を中心に画業が紹介されている。線描から水彩画まで、なぜ自分は和田さんの絵に惹かれるのだろうと自問しながら観たのだが、納得してもらえるような解答は浮かんでこない。なぜ和田さんの絵を目の前にするとワクワクしてくるのだろう。なぜ和田さんの装幀の本を見るとウキウキしてくるのだろう。
図録(1200円)は展覧会に間に合わなかったようで、8月13日にならないとできあがらないらしく、予約申し込みするにとどまった。予約特典としてA3判の展覧会ポスターをいただく(先着何人かまでの限定らしい)。ミュージアムショップに並ぶ和田さんの本に持っていないものも多く、どれも喉から手が出るほどほしかったのだが、我慢して、『本漫画』*1毎日新聞社)1冊だけにする。2009年1月に出た本。迂闊にもまったく知らなかった。