2005-05-01から1ヶ月間の記事一覧

古本病注意報

オヨヨ書林@根津 ★小泉喜美子『月下の蘭』(徳間文庫) カバー、100円。歌舞伎を下敷きにした現代ミステリ短篇集。4篇あるうち、それぞれ「双面水照月」「田舎源氏露東雲」「土蜘蛛」「積恋雪関扉」がモチーフになっている。小泉さんらしい趣向。解説は須永…

坪内さんにがんじがらめ

昨日坪内祐三さんの新著『古本的』*1(毎日新聞社)を購い、帰宅後そのまま読み始めたら止まらなくなって、即日読み終えてしまった。思わず夜ふかししてしまったのだけれど、朝早く起きることができたので、あの興奮を忘れないうちにと、異例ながら朝のうち…

「読んでみたら」とすすめる日まで

井上ひさしさんの新作小説『イソップ株式会社』*1(中央公論新社)を読み終えた。本書は、2004年5月から今年1月まで、読売新聞土曜日朝刊に連載されたものである。 わたしの家ではいま朝日新聞を購読している。これに対し実家では、わたしが子どもの頃から読…

親類づきあいの不思議

「4ヶ月まるごと成瀬巳喜男劇場」@日本映画専門チャンネル(録画DVD) 「めし」(1951年、東宝)※二度目 監督成瀬巳喜男/原作林芙美子/脚色井出俊郎・田中澄江/美術中古智/上原謙/原節子/島崎雪子/杉葉子/杉村春子/小林桂樹/中北千枝子/浦辺粂子…

はじめての学園祭古本市

東京大学五月祭古本市 ★渡辺保『俳優の運命』(講談社) カバー、170円。『女形の運命』なら岩波現代文庫に入ったが、これはまだのはず。初代吉右衛門、観世寿夫、吉田文五郎、坂東玉三郎、千田是也、滝沢修、白石加代子、鈴木忠志らが取り上げられている。

『なめくじに聞いてみろ』の東京

来月「日本映画専門チャンネル」の岡本喜八監督特集(「監督 岡本喜八の世界」)で、いよいよ「殺人狂時代」が放映される*1。都筑道夫の『なめくじに聞いてみろ』を映画化したものである*2。そのまえに原作を読んでおくことにした。平野甲賀さんの装幀がいつ…

祖師ヶ谷大蔵と経堂の古本屋

ブックオフ祖師ヶ谷大蔵駅前店 ★有明夏夫『なにわの源蔵事件帳 蔵屋敷の怪事件』(講談社文庫) カバー、105円。直木賞を受賞した「大浪花諸人往来」も含まれるシリーズの一冊。明治の大阪を舞台にした捕物帳である。このシリーズは何冊か持っているので、ダ…

ウナセラ・デイ・トーキョー

「ウナセラ・デイ・トーキョー―残像の東京物語 1935〜1992」@世田谷美術館 内容は上記参照。

第70 ふたたび砧の地を

世田谷美術館で明日までに迫っていた「ウナセラ・デイ・トーキョー」展を見るため、先日瀧口修造展を見に行ったとき(→3/27条)と同じように、祖師ヶ谷大蔵駅から歩くことにする。駅前にブックオフはあるし、南に伸びる祖師谷南商店街に古本屋もあるし、これ…

千葉泰樹三連発あるいは東野英治郎という時代

10年目の結婚記念日という節目にあたるので、休暇をとって妻と銀座に食事に行く。食事のあとは少し買い物。せっかく休みをとったので、そのまま帰るのはもったいなく、三百人劇場に立ち寄って映画を観まくる。 「東宝娯楽映画のエース 千葉泰樹」@三百人劇…

冗談言っちゃいけない?

「監督 岡本喜八の世界」@日本映画専門チャンネル(録画DVD) 「江分利満氏の優雅な生活」(1963年、東宝)※三度目 監督岡本喜八/原作山口瞳/脚色井出俊郎/小林桂樹/新珠三千代/東野英治郎/矢内茂/横山道代/中丸忠雄/ジェリー伊藤/天本英世/砂塚…

きりきりバスに乗りたくなって

先日読んだ滝田ゆう『昭和夢草紙』*1(新潮文庫、→5/19条)のうちの一篇「裏町バス通り」に、次のような一節がある。あのくねくねと町中を走って行く、あの頃のバスというものは、なんでこんなとこまで入って来るのかと思うほど、ややっこしい道筋を平常の路…

偶然に驚く

非常勤講師の仕事を終え、今夜もまた、いまのところ東京で歩いていてもっとも気持ちのいい通りのひとつ、表参道の青山通りから明治通りまで緩やかに下る道を、ウキウキしながら歩いた。 久しぶりに原宿のブックオフに立ち寄ってみる。ここは書友密偵おまささ…

「武州公秘話」あれこれ

ここで書いている駄文のタイトルが「読前読後」である以上、「読後」の感想だけでなく、買った本や読む前の本についても取り上げるという意思を持ってつづけているつもりだ。もっとも「読前」本について書くとき、当然感想にはなりえないわけなので、周辺の…

都筑道夫コレクションは何冊目だ?

大学堂書店@本郷三丁目 ★出久根達郎『かわうその祭り』(朝日新聞社) カバー・帯、900円。朝日新聞の購読者のくせに、連載中は読まずに、本になってから買う。しかも古本。ISBN:4022500123 ★都筑道夫『都筑道夫コレクション《本格推理篇》七十五羽の烏』(…

人と酒に愛された男の酒

亡くなったことをきっかけに、故人の著書を読み出すというのは、大声で自慢できるような話ではない。山本夏彦さんといい、先日読んだ阪田寛夫さんといい、わたしにはそういうきっかけで読むようになるということが少なくなく、自分でも「いかんなあ」と反省…

役者が語る成瀬巳喜男

村川英編『成瀬巳喜男演出術―役者が語る演技の現場』*1(ワイズ出版)を読み終えた。先日読んだ中古智・蓮實重彦『成瀬巳喜男の設計―美術監督は回想する』*2(筑摩書房、→4/27条)同様、成瀬映画を観てゆくうえで恰好の副読本となるものである。 サブタイト…

微熱で映画2本

レンタルDVD 「阿弥陀堂だより」(2002年、東宝) 監督・脚本小泉堯史/原作南木佳士/寺尾聰/樋口可南子/北林谷栄/小西真奈美/田村高廣/香川京子/吉岡秀隆/井川比佐志 微熱の状態がつづき、なかなか下がりきらないので、外出をひかえた。去年入院し…

藤森的縄文建築宣言

藤森照信さんの新著『人類と建築の歴史』*1(ちくまプリマー新書)を読んでうなった。最近発刊された新シリーズ「プリマー新書」は、その名前からして若者向け・初心者向けだと思われるのだが、シリーズ中の一冊であることを裏切らない見事な歴史書になって…

風邪っぴきによくない本

インフルエンザに罹り寝込んだのが遠い昔のようだが、あれは2月のことであり、せいぜい3ヶ月前のことなのだ。あれから、月に一度かならず風邪をひくようになった。突然喉や胃が痛くなり、熱が高くなる。 いずれも、一日、一晩寝ていれば次の日には熱も下がり…

イラストと散文詩で煮染め感

根津や谷中、本郷の路地裏を歩いていると、ささら(簓)子下見の木造家屋がよく目につく。東京に来てから意識しだしたのだが、きわめてありふれた民家の建て方である。 ときどきささら子下見の外壁が張り替えられ、まっさらな白木になっている家を目にするこ…

夏休みに読みたい

棚澤書店(店頭本)@東大正門前 ★北杜夫『楡家の人びと』(新潮社) 函・帯、100円。元版だが昭和47年の41刷。函の裏に三島由紀夫の推薦の辞が直に印刷されている。ずっと読みたいと思っていて、状態のいい文庫本に出会ったら買おうと思っていた。その前に…

一族の顔合わせ

『宝塚というユートピア』*1(岩波新書)を読んだきっかけのひとつに、庄野潤三作品をあげた。庄野さんは親友である阪田寛夫さんの娘大浦みずきさんの縁で、宝塚歌劇を毎年観に行く。 わたしの場合、今年に入ってから読みはじめた庄野作品を通して阪田寛夫と…

獅子文六三昧・映画編

「東宝娯楽映画のエース 千葉泰樹」@三百人劇場 「大番」(1957年、東宝) 監督千葉泰樹/脚色笠原良三/美術中古智/加東大介/原節子/淡島千景/仲代達矢/多々良純/河津清三郎/東野英治郎/小林桂樹/三木のり平 この映画の美術を担当した中古智さん…

獅子文六三昧・書物編

山本周五郎から谷崎潤一郎へとつながった“横浜読書”のラインは、実は細々とつづいていた。先日訪れた県立神奈川近代文学館の常設展に獅子文六のコーナーもあったことは触れた(→5/3条)。獅子文六こと岩田豊雄が横浜生まれであることを、あらためて認識させ…

観ずに死ねない?

川崎賢子さんの『宝塚というユートピア』*1(岩波新書)を読み終えた。 東京に何年住むことになるのか、死ぬまで住むのかわからないが、いつかは東京宝塚劇場に「宝塚歌劇」を観に行きたいと考えている。こんな気持ちが芽生えてきたのは、東京に住むようにな…

遠藤周作も夕刊フジ

古本市場保木間店 ★遠藤周作『ぐうたら人間学―狐狸庵閑話』(講談社文庫) カバー、200円。夕刊フジ連載エッセイ。1972年の1月から5月まで「狐狸庵閑話 人情編」のタイトルで連載されていたもの。ちょうど梶山季之「あたりちらす」と山口瞳「飲酒者の自己弁…

一週間の疲れを癒そう

録画DVD@日本映画専門チャンネル 「おかあさん」(1952年、新東宝) 監督成瀬巳喜男/脚本水木洋子/田中絹代/香川京子/三島雅夫/岡田英次/加東大介/中北千枝子/沢村貞子 世の中の一般的なあり方からすれば何にも珍しくないことだろうが、自分にとっ…

書巻の気のただよわせかた

森銑三の怪異小品集『物いふ小箱』が増補のうえ『新編 物いう小箱』として講談社文芸文庫に入った*1のは、近来の快事であった。…と書いているが、例のごとく読んでいるわけではない。筑摩書房から出た元版*2はかつて奥村書店銀座三丁目店で手に入れたものの…

夫婦・家族の心の裏側

わたしが筒井康隆さんの熱心な読者となったのは、『虚人たち』『虚航船団』『パプリカ』『残像に口紅を』『驚愕の曠野』といった実験的な傑作を次々と発表していた80年代末頃だから、初期のSF作家としての仕事はほとんど読んだことがない。 もっとも、先年徳…