2005-01-01から1ヶ月間の記事一覧

ひろいよみロッパ日記(1)

昭和17年1月31日条 (…)今朝は東京から持参の井上叔母製るところの焼売の如きを、たっぷり食った、これから先の食事、何うなることか。書生等は朝食食ふところなく、僕らの残りをがっつく有様。(…)七時に終って渡辺・石田と新大阪のバーへ近藤清を訪れる…

夢の国の料理

別に知らない町でなくともよい。近所をぶらぶら歩いていて、ふつうの定食屋の前を通ることがある。店頭のボードに見慣れないメニューが書かれているのを見つけたとき、「おっ」と思うことはあるのだが、小心者なので入ることができない。たとえ空腹で食事す…

切手と戦争展

「もうひとつの昭和戦史 切手と戦争展」@切手の博物館(目白) 詳細は上記「平成日和下駄」第63参照。来場者プレゼントの切手「硫黄島に星条旗を立てるアメリカ海兵隊員」(アメリカ、1945年7月発行)を二枚ももらってしまった。これは使えるのでしょうか?

目白と南池袋での収穫

ブックオフ目白駅前店 ★野見山暁治『パリ・キュリイ病院』(弦書房) カバー・帯、500円。買いたいなあと思っていた本。売価1050円のところセールで500円。嬉しい。ISBN:490211626X ★出口裕弘『三島由紀夫・昭和の迷宮』(新潮社) カバー、500円。買い逃し…

第63 目白ウキウキ散歩

この一週間、私には珍しく気を抜く暇がなくあくせくとしていた。昨日土曜日も抜き差しならない所用で一日中拘束され、屈託していた。だから今日は家で本でも読みながら一日ゆっくり休もうと思っていたのだけれど、先日郵便学者内藤陽介さんからご案内をいた…

不惑であれ古稀であれ

筒井康隆さんの山藤章二挿絵・夕刊フジ連載エッセイ集『狂気の沙汰も金次第』*1(新潮文庫)を読み終えた。夕刊フジ連載の順番からいえば梶山季之・山口瞳に次いで三作目、私が読んだ順番でいえば山口・吉行に次いで、これまた三作目となる。筒井さんは1933…

ロッパ日記追加!

昼休み、散歩がてらぶらぶらとオヨヨ書林に行ってみた。すると、床に置かれた段ボール箱の上に無雑作に『古川ロッパ昭和日記』が積まれている。見ると戦前篇・戦中篇・戦後篇の3冊。このうち戦前篇は以前購入したので(→2004/11/5条)、欲しいのは戦中篇と戦…

庄野潤三も強化年間

先日『せきれい』(文春文庫)を読み、庄野潤三さんの作品世界に魅了された。同書は、結婚50年を迎えた老夫婦の日々の生活を書いてみようという意図のもと、1995年から営々と書き継がれているいわば「老夫婦物」とも言うべき一連の長篇小説の、第三作目にあ…

座敷牢の文化小史

先日触れた内田青蔵『「間取り」で楽しむ住宅読本』*1(光文社新書)の第2章「誰もいなくなった部屋」は、住宅の間取りにおける居間・茶の間の変遷から、近代日本における「家族団欒」のあり方の推移を見通す刺激的な考察である。 ただ私は、本章の次の一節…

山の手と下町は別地方

小林信彦さんの長篇小説のなかでも、カタカナ(横文字)タイトルの作品、たとえば『イーストサイド・ワルツ』とか、『イエスタデイ・ワンス・モア』『ドリーム・ハウス』『ハートブレイク・キッズ』といったものには、これまでまったく食指が動かなかった*1…

螺旋のように流れる時間

庄野潤三さんの文庫新刊『せきれい』*1(文春文庫)を読み終えた。庄野さんの本を読むのは初めて。はまってしまった。 これまで、書友の皆さんの感想をはじめ、田辺聖子さんによる帝塚山(庄野一族ゆかりの地)歩きの記(『ほっこりぽくぽく上方さんぽ』*2文…

間取りで見る日本近代住宅史

近代住宅史を専門とする内田青蔵さんの新著『「間取り」で楽しむ住宅読本』*1(光文社新書)を読み終えた。 この本は書名が誤解を与えそうだ。新居建築を考えているような人は、タイトルを見て、間取りを考えるさいの参考書として手に取るかもしれない。逆に…

文壇を語るうえで欠かせぬもの

「壇」という文字が後ろにつく単語を『逆引き広辞苑』で引いてみる。演壇、戒壇、花壇、歌壇、画壇、基壇、教壇、劇壇、講壇、護摩壇、祭壇、詩壇、聖壇、登壇、俳壇、雛壇、仏壇、文壇…。 戒壇や護摩壇といった仏教用語を別にすると、具体的なモノを指す言…

京都でも山藤本

一泊二日で京都に出張に行った。今日は午前中の用務先が京都御所の東辺を南北に走る寺町通り沿いの京都市歴史資料館だったため、仕事を終えたらそのまま寺町通りを南に下り、久しぶりに三月書房に寄ってみようとワクワクしていたら、残念なことに開店前だっ…

山藤挿絵本および夕刊フジ連載随筆研究序説

先日「夕刊フジ」連載に山藤章二さんが挿絵を添えたエッセイ集一覧をまとめ、「山藤章二強化年間」を宣言した(→1/9条)。その時点で掲げた本すべてを入手していなかったため、「いま、古本屋をまわるときの目的がひとつできて、とても浮き浮き気分でいる」…

真夜中にミステリでも…

小林信彦さんの『夢の砦』(新潮社、→1/2条・1/3条)を読んでから気になっていたのは、都筑道夫さんの長篇第一作『やぶにらみの時計』(光文社文庫『都筑道夫コレクション《初期作品集》 女を逃すな』*1所収)だった。この作品については、書友ふじたさんに…

三十代後半男だって悩むのだ

年末年始はたいていだらだらと過ごす。食べて、寝て、本を読む。変化がない。ところが今年はそれに少し変化が加わりそうになった。昨年末、中学時代の同級生から往復はがきが届いた。クラス会の知らせだった。最初男女二人の幹事の名前を見たときは「?」だ…

違和感への共感

中野翠さんの新著『ここに幸あり』*1(毎日新聞社)を読み終えた。 本書は『サンデー毎日』人気コラムの2003年11月-04年11月分をまとめたものである。私は中野さんのこのコラムが大好きだ。けれど、とくに同誌を毎週買ったり、立ち読みして読むほどではない…

各論から総論へ

鹿島茂さんの『絶景、パリ万国博覧会』*1(河出書房新社)が出たのは、元版奥付を見ると1992年12月のこと。購入後すぐ読んだと記憶するから、あれから12年か。現代資本主義を彩るさまざまな現象・事物のルーツを、ナポレオン三世の第二帝政期における1867年…

ひょっとして初めて?

昨日触れた「すこぶる上等な短篇集」とは、池波正太郎さんの『娼婦の眼』*1(講談社文庫)のことである。読み終えるのを惜しみつつ、味わって読んだ。 この年末年始、実家近くのブックオフで本書を入手した。タイトルにもあるように、赤線廃止後の娼婦、すな…

血をサラサラにする「ほ」

今年の冬はめっぽう寒い。 などと言うと、首をかしげる人がいるかもしれない。例年とくらべとりたてて「厳冬」と言われるほどの寒さではない(今のところ)のに何事か、と。 私の職場は昨年4月に法人化された。勤務時間延長やら、競争努力やら、予算削減やら…

山藤章二の都会的感覚

山藤章二さんの『アタクシ絵日記 忘月忘日』*1、『アタクシ絵日記 忘月忘日2』*2(ともに文春文庫)を読んでしまった。「山藤章二読書強化年間」宣言からまもないというのに、もう読む本が2冊減った。「読んでしまった」という嘆きの表現しかとりようがない…

山藤本大量仕入

年末年始でもちょっと買いすぎの気味があるうえに“山藤ぐるい”になってしまい、歯止めがきかなくなってきつつある。ここらで自制しないと。 たなべ書店南砂店 ★筒井康隆『狂気の沙汰も金次第』(新潮文庫) 店頭本。カバー、50円。山藤挿絵本。夕刊フジ連載…

山藤章二強化年間宣言

昨日書いたように、吉行淳之介さんの『贋食物誌』(新潮文庫)を読み、山藤章二さんのイラストレーションにあらためて魅せられた。『酒呑みの自己弁護』などを読んだときにも同様に面白さを感じたのだが、たまたま文庫版『贋食物誌』と一緒に、同じく山藤さ…

絶妙のコラボレーション

山口瞳さんのエッセイ集のうち何が好きかと問われれば、『酒呑みの自己弁護』(新潮文庫)を第一にあげる。「男性自身」シリーズもむろん好きで、本書とさほど内容的にかけ離れているわけではないのだけれど、お酒というテーマが一本ピシッと全体を貫いてい…

小林信彦における素材と調理方法の研究

退屈男さんの「『夢の砦』の記憶が薄れないうちに」という強いプッシュもあって、小林信彦『回想の江戸川乱歩』*1(文春文庫)を読んだ。200頁に満たない薄い本なので、興に乗ったらひと晩で読み終えてしまった。 本書は新刊(97年5月)で買ったのだが、未読…

長部日出雄の短篇集

第一書房(店頭本)@東大正門前 ★長部日出雄『鰐を連れた男』(角川文庫) カバー、100円。このところ本を読んでいて長部さんの名前を目にすることが多くなったような気がするのは、小林信彦さんの本を読んでいたからだろうか。と思ったら、いま読んでいる…

品切になるのが早すぎる

大学堂書店@本郷三丁目 ★水上勉『文壇放浪』(新潮文庫) カバー・帯、200円。禅院の小僧時代から編集者を経、直木賞を受賞して小説家として生きる過程で出会った作家たちとの交友をつづる自伝的回想。水上勉による「昭和文壇史」。2001年4月に出た本なのに…

ヘア初出に関する一資料

昨日書いた井上章一&関西性欲研究会『性の用語集』*1(講談社現代新書)のなかで、昨日はあえて触れずにいたが、もっとも興味深く読んだ項目のひとつは、井上さんが執筆した「ヘア」だった(83-90頁)。 ここで井上さんは、本来頭髪を指すはずの英語の「hair…

あまりに自虐的な

井上章一&関西性欲研究会『性の用語集』*1(講談社現代新書)を読み終えた。 書友ひでかずさんの強いお薦めがきっかけで購入したのだが、こういう本が大好きな私のこと、もとより発売当初から気にならないはずがない。ただ、手にとって逡巡しながら、著者名…