2005-07-01から1ヶ月間の記事一覧

装丁浪漫

企画展「装丁浪漫―ブックデザイン懐古―」@さいたま文学館 ちいさな子供を持つ親にとって地獄の季節がやってきた。昨日から首都圏のJR各駅を対象にした「ポケモン・スタンプラリー2005」が始まったのである。去年全駅制覇した*1長男は今年も意欲満々。昨日は…

原作=主演という不思議

「太平洋戦争と日本映画」@日本映画専門チャンネル(録画DVD) 「南の島に雪が降る」(1961年、東京映画・東宝) 監督久松静児/原作加東大介/加東大介/伴淳三郎/有島一郎/西村晃/渥美清/桂小金治/志村喬/三橋達也/森繁久彌/小林桂樹/三木のり平…

渾身という生き方

いま、幸田文作品が読みたくてムズムズし、我慢できない心持ちになっている。わたしをこんな状態にさせたのは、ほかでもない、村松友視さんの新著『幸田文のマッチ箱』*1(河出書房新社)だ。 たまたま読んでいる本のなかに幸田文さんの文章の一節が引用され…

長谷川利行の文庫本カバー

「所蔵作品展 近代日本の美術」@東京国立近代美術館 竹橋紀伊國坂にある国立公文書館(内閣文庫)に調べ物の用事があった。閲覧時間ぎりぎりまで粘ったあと、疲れた体をひきずり、隣にある東京国立近代美術館に入る。金曜日は20時まで開館しているから、わ…

曲がり角の多い人生

迂闊にもまったく意識していなかったのだが、昨日触れた宮田昇『戦後「翻訳」風雲録―翻訳者が神々だった時代』*1(本の雑誌社)を自宅で読むいっぽう、電車本として選んだのが清水俊二さんの『映画字幕スーパー五十年』*2(ハヤカワ文庫)だった。 宮田さん…

翻訳(者)はむずかしい

翻訳物をあまり読まないゆえか、翻訳という仕事に対する理解度も低い。とはいえ、どのようにして翻訳がなされ、一冊の本として仕上がってゆくのか、興味がまったくないというわけではなく、むしろ逆に大いに興味があった。 先日の市川古本屋めぐりツアーで入…

阪田寛夫さんの署名本

大学堂書店@本郷三丁目 ★都筑道夫『妖精悪女解剖図』(角川文庫) カバー、100円。短篇集。「さまざまな女たちが、日常生活のなかで心の奥底に秘めている〝妄想〟からひき起こされるコワークて妖しい、女たちの奇妙な物語」(カバー袖紹介文より)。ISBN:40…

お洒落な会話も苦吟の賜物?

都筑道夫さんのユーモア&アクション長篇『紙の罠』(角川文庫)を読み終えた。 つい先日山形の古本屋香澄堂書店で手に入れた本だが、東京に戻る新幹線で、携えていった小林信彦さんの『笑学百科』(新潮文庫、→7/18条)をすぐ読み終えてしまったため、リュ…

ストーリーも魅力の『食道楽』

村井弦斎の『食道楽』が面白そうな本であることを知ったのは、せいぜい一年ちょっと前のことにすぎない。阿川弘之さんの『食味風々録』*1(新潮文庫、→2004/4/8条)を読んだことがきっかけだった。 この食味随筆集に収められた「牛の尾のシチュー」という一…

成金たちの夢の果て

「成金」という言葉ほど、「絶妙だなあ」と感心させるものはない。将棋の「歩兵」が敵陣に入ると裏返り、「金将」と同じ働きをする。「(転じて)急に金持になること。また、その人。俄分限」(『日本国語大辞典 第二版』)。 紀田順一郎さんの新著『カネが…

シナリオ本

棚澤書店@東大正門前 ★阿佐田哲也(原作)和田誠・澤井信一郎(脚本)『シナリオ麻雀放浪記』(角川文庫) 店頭本、カバー、100円。阿佐田哲也×和田誠対談「映画の舞台裏」収録。映画の感想はこちら(→2004/12/9条)。ISBN:4041459990

スタジアムは原初の喜び

野球をはじめとしたスポーツを生で観る醍醐味はどこにあるのだろう。スタジアムに近づき、建物の威容を見上げたときの昂揚感。切符を求め入場してうす暗い通路を歩き、スタンドに通じる入り口をくぐって、目の前に広がるフィールドを目の当たりにしたときの…

高密度にしてノンストップのエッセイ

今回の帰省でメインに読むつもりで携えたのは、昨日触れた小沼丹『風光る丘』*1(未知谷)だった。ただなにせかさばる本である。内容的に軽快とはいえ、物理的な重さはいかんともしがたい。 そこで、『風光る丘』を読むのに疲れたとき手にする本としてもう一…

山形に素晴らしい古本屋ができた!

午前中、四店舗ある山形市内のブックオフ、残りの二店をめぐる。 ブックオフ山形桜田店 ★都筑道夫『サタデイ・ナイト・ムービー』(集英社文庫) カバー、105円。都筑さんの映画評集成。装丁和田誠さん。今度の帰省における山形ブックオフでの最大の収穫。IS…

小沼丹幻の長篇

先日『小沼丹全集』第四巻のことを書いたとき、版元未知谷のサイトをのぞいてみた。 そこで同社のサイトのあちこちを渡り歩いていたら、堀江敏幸さんが毎日新聞に書いた小沼丹の長篇『風光る丘』*1の書評が転載されていたのに出くわした。それを読んでいたら…

山形にて

法事のためこの連休実家に帰っている。当然ながらブックオフ詣では欠かせない。ただし今回は不作の模様。 ブックオフ山形馬見ヶ崎店 ★都筑道夫『やぶにらみの時計』(中公文庫) カバー、105円。光文社文庫都筑道夫コレクション版で既読だが、真鍋博さんによ…

急げ綾瀬へ

ブックオフ綾瀬駅前店 ★松浦寿輝『青天有月』(思潮社) カバー・帯、950円。読み終えたばかりの松浦寿輝『もののたはむれ』(文春文庫)の解説で、三浦雅士さんが本書(随想集)をあげ、『もののたはむれ』の双子であり、「松浦寿輝を小説家にした」本であ…

時間と空間

松浦寿輝さんの処女短篇集『もののたはむれ』*1(文春文庫)を読み終えた。松浦さんの作品を読むのは本書が初めてである。 松浦寿輝と言えば蓮實重彦直系の弟子というイメージがある。事実として教え子なのかどうかわからないけれど、専攻分野も職場も同じだ…

藤本義一の直木賞受賞作品

最寄り駅前の古本屋 ★藤本義一『鬼の詩』(講談社文庫) 店頭本、カバー、100円。表題作が直木賞受賞作品。カバー裏には、「芸の修羅場をのたうちまわり、果ては破滅して散っていった上方寄席芸人の鬼気迫る生きざまを描いた」とある。表題作ほか、「泣尼」…

叡智の結集としての「お言葉ですが…」

高島俊男さんの『お言葉ですが…6 イチレツランパン破裂して』*1(文春文庫)を読み終えた。 最近このシリーズはたいてい文庫発売後ほどなく読んでいる。新読前読後として「はてな」に場所を移してからは、『4 広辞苑の神話』(→2003/5/26条、ただしこれは旧…

饒舌が似合う都市

野坂昭如さんの連作短篇集『東京小説』*1(講談社文芸文庫)を読み終えた。 最後に配された「山椒媼」を除き、各篇が「東京小説 ○○篇」というタイトルで統一された短篇小説の連なりから構成されているが、それぞれが内容的に関係しているわけではない。いず…

はじめての角田光代

何が情報源だったか、誰の指摘だったか忘れたけれど、最近の文学には市井の商店街を舞台にしたような作品が多いという話があって、その代表としてあげられていたのが、堀江敏幸さんであり、角田光代さんだったように記憶している。 大好きな堀江さんであれば…

日本人には書きにくい本

いまの世の中、過去の事物をなつかしがるという風潮が日ましに強くなっている。もう少し対象を限定すれば、たとえば「昭和」である。昭和にあった建物、モノ、風俗、そうしたものを「レトロ」と呼んで新しい価値を与える。 建築物のような文化財的価値のある…

なつかしの森村泰昌

森村泰昌さんの文庫新刊『時を駆ける美術―芸術家Mの空想ギャラリー』*1(知恵の森文庫)を読み終えた。 本書は森村さんの作品集というものではなく、森村さんが古今東西の芸術作品(多くは絵画、建築物や仏像などもある)を取り上げ、その見方・楽しみ方を…

エラリー・クイーンの愉しみ方

推理作家エラリー・クイーンが、マンフレッド・リーとフレデリック・ダネイという従兄弟同士の二人の合同ペンネームであることは、ミステリ好きなら(ミステリ好きでなくとも?)誰でも知っていることである。 彼の作品としては、引退したシェークスピア俳優…

エッセイよりイラストエッセイ

五木寛之さんの『重箱の隅』*1(文春文庫)を読み終えた。 五木さんの本を読むのはこれが初めてである。この本が夕刊フジ連載山藤挿絵本でなければ、五木さんの作品とは一生縁がなかったかもしれない。いや、もう一冊、佐野繁次郎のカバー装幀で一部で話題に…

『小沼丹全集』の周辺

ボーナスが出たらようやく買えるという情けない話だけれど、半年ぶりに『小沼丹全集』を1冊買い求めた。随筆が集成された『小沼丹全集』第四巻*1(未知谷)である。 予約購入をしていながら1年近く(本書が出たのは昨年9月)店ざらしにしたままで、ようやく…

「川本四郎」の世界

川本三郎さんにまつわるエピソードのなかで、とびきり大好きで忘れがたいのは、『東京おもひで草』*1(ちくま文庫)の解説で岡崎武志さんが披露している話である。 岡崎さんは、川本さんの著作のなかでも、最初の小説集『遠い声』*2(発行・スイッチ書籍出版…

郵便学から苦手意識を考える

「外国」「外国人」がどうも苦手だ。これは好悪の判断とはちょっと違う。実際「外国」、たとえばパリや東欧の都市(ブダペストやプラハ)への漠然とした憧れはあるし、現実の外国人との付き合いだって皆無ではない。別に苦手だから冷たく接したことはなく、…

ふたたび経堂へ

待望の夏のボーナスが出た。妻からおこづかいをもらったので、それを手に、目指すは経堂。5月下旬に初めて経堂の大河堂書店を訪れたとき、前々から欲しいと思っていた本を見つけたのだけれど、高くて買えなかったのだった。一ヶ月余り経ち、まだ並んでいるか…