山形に素晴らしい古本屋ができた!

午前中、四店舗ある山形市内のブックオフ、残りの二店をめぐる。

都筑道夫『サタデイ・ナイト・ムービー』(集英社文庫
カバー、105円。都筑さんの映画評集成。装丁和田誠さん。今度の帰省における山形ブックオフでの最大の収穫。ISBN:4087507211
野坂昭如『騒動師たち』(集英社文庫
カバー、105円。あまり目にしたことがない長篇。
五木寛之『風に吹かれて』(集英社文庫
カバー、105円。佐野繁次郎装丁本。ダブり。もういっぽうのあかねヶ丘店でも見つけたが、そちらは別のカバーになっていた。いつから切り替わったのだろう。
野坂昭如『ひとでなし』(中央公論社
カバー、500円。自伝的作品。先日読んだ『東京小説』にて野坂さんの生い立ちに興味を持った。97年刊行だが、文庫にならないのだろうか。ISBN:4120027201
野坂昭如『処女の時間』(講談社
カバー、500円。短篇集。
福永武彦『夢百首雑百首』(中央公論社
函、500円。歌集・句集。小ぶりな函に入り、著者自らのカヤツリグサが函を飾っている。同じ中央公論社の『玩草亭百花譜』を思い出す。

総じて集英社文庫野坂昭如作品に縁があった二店舗めぐりだった。あかねヶ丘店では単行本500円セールだったので目を皿にして探した結果、上記三冊。
昨日書いたブックオフ山形馬見ヶ崎店を訪れた帰りの車の中で、妻が「あれ、あんなところに古本屋がある」と教えてくれた。もともとそこには古本屋はなかったはず。山形は古い町であり、県庁所在地でもあるし、大学だってないわけでもないのだが、古本屋には恵まれていない。わたしが高校生の頃までは市内のところどころに数軒あったのを憶えているが、それもここ十数年の間になくなってしまった。だから帰省のたび訪れる先はブックオフに限られてしまう。ブックオフではない古本屋がとうとう山形にできたか…。
昨日は訪れる余裕がなかったので、一日経った今日、午後の暑い中、その古本屋を目指し、散歩がてら歩いて向かうことにした。山形の町は知っていそうで知らないところだらけ。わたしが過ごしたのは高校生までであり、中心部を隈なく知っているわけではない。散歩の愉しさを知ったのは東京に来てからである。
とはいえ地図は頭のなかに入っているので、方向感覚に迷いはない。あてどなく、気の向くまま歩くのが愉しそうな路地裏を選びながら、目指す古本屋へ向かった。
その古本屋は、山形城二の丸、現在霞城公園となっている場所の大手門外にある最上義光記念館の向かい側にある。香澄堂書店という。
何と言っても最高気温日本記録を持っている町のこと、今日も真夏のように暑い。汗を拭きつつ、でも路地裏を歩むと不思議に暑さを忘れる。そんな繰り返しで30分の散歩の果て、目的地にたどりついた。
店内に入って一驚。単行本や文庫本が整然と棚に並べられている。種類は小説、とりわけミステリやSFが充実している。まさにわたし好みの古本屋さんだ。小林信彦さんや都筑道夫さん、田中小実昌さんなどの単行本でも、なかなか東京では見ないような古本がずらりと並んでいるのに興奮した。東京に比べて安いのかもしれないけれども、だからといって無闇に安いわけではない。高そうなものはそれなりに高いことからは、その店の見識というものがうかがわれる。
文庫本もなかなかのもの。中公文庫や旺文社文庫講談社文庫の古めのもの、各社文庫の古めのものが綺麗に版元別に整理されている。ミステリの新書(ノベルス)も「へえ、こんな本があったのか」と思うような本がずらり。これはなかなかすごい古本屋さんだ。東京にもこれだけミステリが並ぶ古本屋さんはあまりない。
それがわが郷里山形にあるという幸福。帰省するときの愉しみがひとつ増えて、いまとても幸せな気持ちに満たされている。
会計のとき店主さんにお訊ねしたところ、今年三月に開店したばかりとのことで、名刺も頂戴した。そこに刷られていた同店のサイトはこちら。場所は前記のとおりだが、山形駅からでも歩いて十数分といったところだから、そんなに遠くない。何しろ新しいお店だから野村宏平『ミステリーファンのための古書店ガイド』*1光文社文庫)には拾われなかったものの、ミステリという分野では、かなりの高位置にランクできるお店であることは、たぶんあの店を訪れた人なら誰でも太鼓判をおすのではなかろうか。
今日買った本は下記のとおり。こうした本はすでにお持ちの方も多いだろう。こんな本が平然と並んでいるようなお店であるということで、店の中を想像していただきたい。ああ、初めて足を踏み入れた古本屋が、興奮させる品揃えであったことの嬉しさは、古本好き冥利に尽きる。しかも山形だから、なおのこと嬉しい。

  • 香澄堂書店
都筑道夫都筑道夫のミステリイ指南』(講談社文庫)
カバー、100円(店頭本)。店内には同じ本がもう一冊あった(400円)。こちらは「ムレ」と明記してある。ISBN:4061847163
都筑道夫『紙の罠』(角川文庫)
カバー、600円。読みたいと思っていた長篇。
色川武大『唄えば天国ジャズソング』(ちくま文庫
カバー、500円。ISBN:4480024964
殿山泰司『日本女地図』(角川文庫)
カバー、400円。ISBN:4041542014
和田誠『シネマッド・ティーパーティ』(講談社文庫)
カバー・帯、300円。映画エッセイ集。ISBN:4061831011
都筑道夫『なめくじ長屋捕物さわぎ からくり砂絵』(桃源社
カバー、100円(店頭本)。元版。
戸板康二團十郎切腹事件』(河出書房新社
カバー・帯、1000円。直木賞受賞作の元版。ただし再版。それであっても、帯もあって状態はまずまずだから、満足。