2007-09-01から1ヶ月間の記事一覧

ボタ餅の上にボタ餅

私には、天井に背をつけて、三十分くらいなら、そのまま宙に止っていられるという特殊技能がある。もう長年やったことがないが、その気になればいまもやれるだろう。「ある超能力者の告白」とでも名づけたくなる一節だが、こんな奇想天外な一文から書き出さ…

ダイスの立て方

日活名画館・小林旭シアター@チャンネルNECO(録画HDD) 「南國土佐を後にして」(1959年、日活) 監督・脚本斎藤武市/原作・脚本川内康範/小林旭/浅丘ルリ子/南田洋子/中原早苗/二本柳寛/西村晃/金子信雄/ペギー葉山/内田良平/高野由美 渡辺武…

まなざしに込めた意思の強さ

昭和の銀幕に輝くヒロイン第36弾 野添ひとみ@ラピュタ阿佐ヶ谷 「親不孝通り」(1958年、大映) 監督増村保造/原作川口松太郎/脚本須崎勝弥/川口浩/野添ひとみ/桂木洋子/船越英二/潮万太郎/市川和子/小林勝彦/三角八郎 この映画もなかなか良かっ…

脱獄の果て

ようこそ「新東宝」の世界へ@チャンネルNECO(録画HDD) 「地平線がぎらぎらっ」(1961年、新東宝) 監督・脚本土居通芳/原作藤原審爾/脚本内田弘三/ジェリー藤尾/多々良純/天知茂/沖竜次/大辻三郎/星輝美/万里昌代/晴海勇三 ソフト化されている…

記号・符号一家言

仕事の最終目的が書物のかたちで出版することであり、また、文章を公表することなので、自然校正という作業がつきものになってくる。印刷所から出てきた校正紙(ゲラ)に赤を入れて返すわけだが、自分の意図した直しが印刷所の担当者に正確に伝わるよう、字…

日露戦争と日本人

先日観た「明治天皇と日露大戦争」の感想を書こうとして、「大ヒットの不思議」と標題を付けたままだった。この作品は明治天皇を嵐寛寿郎が演じたこと、日本映画初のシネマスコープ作品を目指したことなどで知られ、「空前の大ヒットとなった」と言われてい…

アサガヤアタリデ…

井伏鱒二が五言絶句の漢詩「田家春望」の結句「高陽一酒徒」を「アサガヤアタリデ大ザケノンダ」と訳したのは有名な話。もっとも、上の結句だけを対応させてしまうのは、紹介の仕方として問題はあろう。 その井伏鱒二を囲むように中央線文士が「阿佐ヶ谷会」…

大ヒットの不思議

ようこそ新東宝の世界へ@チャンネルNECO(録画HDD) 「明治天皇と日露大戦争」(1957年、新東宝) 監督渡辺邦男/脚本館岡謙之助/嵐寛寿郎/阿部九州男/高田稔/藤田進/江川宇礼雄/田崎潤/林寛/丹波哲郎/宇津井健/高島忠夫/若山富三郎/中山昭二/…

阿古屋と清正

秀山祭九月大歌舞伎・夜の部 壇浦兜軍記 阿古屋 身替座禅 二條城の清正 玉三郎当たり役の「阿古屋」はこれが三度目。今月は吉右衛門主宰の「秀山祭」なのに、吉右衛門が先代から受け継ぎいまや屈指の当たり芸となっている「熊谷陣屋」の出る昼の部を観ずして…

筧作品もう一本追加

リクエスト・アワー@衛星劇場(録画DVD) 「トイレット部長」(1961年、東宝) 監督筧正典/原作藤島茂/脚本松木ひろし/池部良/淡路恵子/島津雅彦/浜美枝/久保明/沢村貞子/藤木悠/桂小金治/森光子/松村達雄/十朱久雄/塩沢とき 前回書いたよう…

身辺整理にご用心

妄執、異形の人々Ⅱ@シネマヴェーラ渋谷 「銭ゲバ」(1970年、近代放映・東宝) 監督和田嘉訓/原作ジョージ秋山/脚本小滝光郎・高畠久/唐十郎/緑魔子/応蘭芳/加藤武/岸田森/横山リエ/曽我廼家明蝶/信欣三/左とん平 「結婚の夜」(1959年、東宝) …

挨拶としての俳句

熱中というほどではないけれど、五年ほど前の一時期、俳句づくりに凝ったことがあった。そのとき詠んだ句は、恥ずかしながら“手石堂詠草”にまとめてある。 その頃は、見たもの、感じたことを五七五の定型で表現しようという心持ちがなぜか強く働いていた。た…

「衝撃のラスト」が気になって

MOVIX亀有 「HERO」(2007年、フジテレビ・東宝・J-dream・FNS27社/東宝) 監督鈴木雅之/脚本福田靖/木村拓哉/松たか子/松本幸四郎/角野卓造/阿部寛/八嶋智人/勝村政信/大塚寧々/小日向文世/児玉清/香川照之/森田一義/中井貴一/綾瀬はるか/…

ベースボールという神話

社会学者の内田隆三さんは、メジャーリーグと日本のプロ野球の違いを次のように書いている。そんな日本人がアメリカに憧れた高度成長の時代、少年漫画『巨人の星』の主人公、星飛雄馬は大リーグボール=養成ギプスという肉体改造用の金属バネを嵌められ、ス…

ゆく川の流れは絶えずして

夏休み最終日の出来事。むろんわたしのことではない。長男の話。毎日毎日、一日何度も、父親からも母親からも「宿題やりなさい」と口を酸っぱくして言われたにもかかわらず、工作などをさっぱりやろうとしないまま、最終日を迎えた。 土壇場になって頼られて…

わが母校の100年

企画展 東北大学の至宝―資料が語る1世紀―@江戸東京博物館 今年わが母校東北大学は創立100周年を迎えた。これを記念して、大学が所蔵する史・資料(古文書や考古遺物、標本など)を一堂に展示する展覧会が今日から始まった。 わたしの出身研究室の先生や先輩…

川の記憶

池内紀さんの『川を旅する』*1(ちくまプリマー新書)を読み終えた。 本書はいまはなき雑誌『FRONT』に連載された。その初めの36回分がまとめられた『川の旅』(青土社)の続編だという。『川の旅』であれば、すでに読んで感想を書いている(→旧読前読後2002…