2005-08-01から1ヶ月間の記事一覧

金田一耕助の冒険

大学堂書店@本郷三丁目 ★横溝正史『金田一耕助の冒険1』(角川文庫) カバー・帯、100円。 ★横溝正史『金田一耕助の冒険2』(角川文庫) カバー・帯、100円。 いずれも帯は「悪霊島」「蔵の中」映画化を機にした「さよなら金田一耕助」フェアのもの。懐かし…

『エロトピア』と「山藤挿絵」の誕生

夕刊フジ連載エッセイで確立された山藤章二さんの挿絵スタイル、いわゆる「山藤流挿絵」は、『週刊文春』で1969年から71年の足かけ三年にわたり連載された野坂昭如さんの『エロトピア』に濫觴が求められる。このことは山藤さんご自身が繰り返し述べていると…

戦中派の感慨?

監督・岡本喜八の世界@日本映画専門チャンネル(録画HDD) 「肉弾」(1968年、「肉弾」をつくる会・ATG) 監督岡本喜八/寺田農/大谷直子/伊藤雄之助/小沢昭一/田中邦衛/笠智衆/中谷一郎/高橋悦史/天本英世/北林谷栄/春川ますみ/菅井きん/仲代…

夏休み最後の日の本にまつわる

今日で夏休みが終わってしまう。とはいっても、子供のころ味わった寂寞感に襲われるわけではない。ゴールデンウィークや正月休みなどのほうがかえって休めるせいか、年数を重ねるにつれ、仕事のペースが身についてきたせいか、夏休みといっても帰省するだけ…

得な作家

本を買い、買ったことを報告するだけにかまけていてはいけない。買った本を読むこと。当然それが次に本を買うための原動力となる。本を買うために時間をかけ、それを入力しサイトにアップすることにとらわれていると、読む時間を失うという矛盾。お祭りは終…

「男性自身シリーズ」完集!

何日か前に「古本を買わなくなった」「執着心がなくなった」と書いたが、あれはたんに買いたいと思わせる本に出会わなかっただけ、一過性の鬱状態に過ぎなかった。東京を離れてからというもの、一転躁状態になって買いまくっている。 今日も午前中、ブックオ…

第73 非戦災都市山形

わたしは山形市の北辺部で生まれ育った。大学に入学して仙台でひとり暮らしをはじめてから、実家は市内中心部(城下町の名残を町名に残すいわゆる「旧市内」)に引っ越した。帰省中の生活圏は市内中心部に移ったことになる。 とはいえ車中心の生活だから、買…

山藤挿絵本&夕刊フジ本に収穫あり

今日から夏期休暇。仙台経由で山形入りしたが、途中下車して愛子開成堂書店(仙台萬葉堂書店の姉妹店)に立ち寄る。 ここでは、山藤章二さん・飯沢匡さんが関係する本、夕刊フジ連載エッセイ本などに収穫があった。『飯沢匡の社会望遠鏡』『オタマジャクシ酩…

ミステリとは違う社会派

最近ふじたさん(id:foujita)をはじめとする方々の刺激で、石川達三の本が気になるようになってきた。古本屋に行き、文庫のコーナー、いや、店頭本のコーナーに目をやると、新潮文庫の水色の背表紙が視界に飛び込んでくる。石川達三と言えば水色。これまでは…

古本を買わなくなった?

国立では、駅からエソラまで歩いていく途中に、国立古書流通センター・谷川書店・ユマニテ書店の三つの古書店がある。せっかく久しぶりに中央線に乗ったのだから、帰りに荻窪で途中下車し、南口のささま書店と岩森書店二店にも立ち寄った。昼は、初めてささ…

没後10年山口瞳展

「没後10年 山口瞳展」@ギャラリーエソラ(国立) 国立を訪れるのは、前回エソラで開催された山口瞳展以来かもしれない。そういうきっかけがないかぎり、滅多に訪れない町になってしまった。 今回は水彩の風景画ばかりが展示されていた。値段は一点15万〜20…

あだ名と似顔絵

和田誠さんの『似顔絵物語』*1(白水社、→8/10条)の記憶が薄れないうちに、山藤章二さんの似顔絵論『カラー版 似顔絵』*2(岩波新書)を入手することができた。 山藤さんの本は語り下ろしで、似顔絵を職業とするにいたった経緯や、「似顔絵とは何か」という…

ドロドロがたまらない

レンタルDVD 「白い巨塔」(1966年、大映) 監督山本薩夫/原作山崎豊子/脚色橋本忍/田宮二郎/東野英治郎/小沢栄太郎/加藤嘉/田村高廣/下絛正巳/船越英二/滝沢修/加藤武/石山健二郎/藤村志保/岸輝子/小川真由美/見明凡太朗 話題になった唐沢…

言葉とモノのあいだ

書籍部の新刊コーナーで新刊書を眺めていたら、ひときわ鮮やかな真紅の本が目に飛び込んできた。クラフト・エヴィング商會の新刊『アナ・トレントの鞄』*1(新潮社)である。これまでは原色系を避けた淡い雰囲気の本が多かったような気がするが、今度はその…

想像力を働かせる小説とは

書棚の“和田誠文庫コーナー”は、ある棚の最下段に位置している。その棚の前には積ん読本の山がいくつもそびえ立っているから、それらにすっかり隠され、コーナーがあることすら忘れかけていた。このところ和田誠さんの文庫本を何冊か買っているけれど、コー…

わるいくせ

給料日になると、つい仕事帰りに古本屋に立ち寄りたくなるのは悪い癖である。でも、給料日直後は心が広くなり余裕があるので、古本屋の棚を見てまわるときの意識が研ぎ澄まされ、いい本が目にはいるのも事実なのだ。 オヨヨ書林@根津 ★飯沢匡『セルパン股蔵…

橋本忍の世界へ

村井淳志さんの新書新刊『脚本家・橋本忍の世界』*1(集英社新書)を読み終えた。わたしのような旧作日本映画初心者にとって、このうえないガイドブックであった。 著者は映画批評家でも映画研究者でもない。金沢大学教育学部教授で、社会科教育論を専門に研…

男冥利に尽きる話

どういう風の吹き回しだったか曖昧だが、昨年の夏頃、野口冨士男さんの(わたしでも買うことができる手頃な売値の)小説集をネット古書店で探したことがあった。昨年7月に生前最後の短篇集『しあわせ』*1(講談社、→2004/7/21条)を読んでいるから、その影響…

夕刊フジ連載の秘訣

なぜわたしが夕刊フジ連載エッセイを好んで読むようになったかと言えば、好きな作家が歴代の執筆者に名前を連ねていることはもちろんなのだが、一回一回が文庫本3ページ(原稿用紙3枚程度)という短章がたくさん集まってできているというスタイルによるとこ…

重松作品の文学的想像力

先日読んだ堀江敏幸『もののはずみ』*1(角川書店、→8/4条)中の一篇「ネームタグ」のなかにこんな一節があって、深い共感をおぼえた。首のまわりの形を確認し、サイズや社名を記したネームタグをよく見ながら腕を袖に通してすぽっと首を穴から突き出すと、…

最寄駅近くの古本屋から

自宅最寄駅から自宅に歩いて帰るまで、途中に3軒の古本屋がある。いずれも漫画が半分を占める小さな古本屋だ。うち1軒は、以前は文庫本もそれなりにあったが、いまや漫画とゲームにスペースを占領されてしまい、最近訪れていない。ここでは獅子文六『父の乳…

間違えて録った映画だが

日本映画専門チャンネル(録画HDD) 「首」(1968年、東宝) 監督森谷司郎/原作正木ひろし/脚本橋本忍/小林桂樹/南風洋子/下川辰平/佐々木孝丸/三津田健/神山繁/大滝秀治 もともと先日観た「与太郎戦記」(→8/6条)を録画しようとして、間違って録…

ちふこつちや

内田百間の『鶴』(旺文社文庫)を読んだ。 本書は百鬼園先生4冊目の文集にあたる。旺文社文庫に入っている百鬼園先生の文集を最初から読んでいこうとこころざし、4月に『無弦琴』を読み(→4/25条)、これが2冊目ということになる(『百鬼園随筆』『続百鬼園…

日記文学の冒険

活字になっているテキストという前提で、「日記」と「日記文学」の違いは何かという愚問を発してみる。 日記は私的なもの、日記文学はおおやけを意識したものと言えようか。いや、しかし活字という前提だから、公私の区別はほとんど意味をなさない。あくまで…

外面と内面の交差点

最近、映画「金田一耕助の冒険」を観たり、井上ひさし『円生と志ん生』(集英社)を読んだりしたことで、和田誠さんの名前が脳裏に刻まれたことから、かねがね読もうと思っていた和田さんの著書『似顔絵物語』*1(白水社)をこの機会に読もうと思い立った。 …

都筑映画の傑作

「危ヤバいことなら銭になる」(1962年、日活) 監督中平康/原作都筑道夫/脚本池田一朗・山崎忠昭/宍戸錠/長門裕之/浅丘ルリ子/草薙幸二郎/左卜全/武智豊子 都筑道夫『紙の罠』(本の感想は7/24条)の映画化。これが都筑作品のもっとも早い映画化ら…

受け身の文学、あるいは火葬場文学

木山捷平「最晩年」(カバー裏の紹介文より)の文集『井伏鱒二/弥次郎兵衛/ななかまど』*1(講談社文芸文庫)を読み終えた。 去年7月に読んだ『下駄にふる雨/月桂樹/赤い靴下』*2(講談社文芸文庫、→2004/7/29条)のほうはたんに「晩年」とだけあったが…

影響されどおし

お金もないことだし、暑いし、この週末は蟄居して読書と映画三昧で過ごそうと思っていたのだけれど、退屈男さんほかの影響で古本屋に行きたくてムズムズしてきたので、柏へ行くことにした。 柏では、ようやく新装開店なった太平書林に行くことができた。新装…

落語の「移り替え」について

古今亭志ん生と三遊亭円生が終戦直前満州に渡り、当地で敗戦の報に接してしばらく日本に帰れなかった話は、あまり落語(および落語家)に詳しくないわたしでも知っている。志ん生の半生記『なめくじ艦隊』ちくま文庫版*1の巻末年譜を見ると、昭和20年5月6日…

増村保造×2+与太郎

チャンネルNECO(録画HDD) 「与太郎戦記」(1969年、大映) 監督弓削太郎/原作春風亭柳昇/フランキー堺/春風亭柳橋/柳家金語楼/三遊亭金馬/露口茂/春風亭柳昇/菅井きん/水木正子/南美川洋子 若手噺家の秋本与太郎が応召され、体験する兵営生活、…