夏休み最後の日の本にまつわる

男性自身シリーズ

今日で夏休みが終わってしまう。とはいっても、子供のころ味わった寂寞感に襲われるわけではない。ゴールデンウィークや正月休みなどのほうがかえって休めるせいか、年数を重ねるにつれ、仕事のペースが身についてきたせいか、夏休みといっても帰省するだけで、特別なところに旅行するわけではないせいか、明日からの仕事の日々を思い鬱々と沈む気分になることがなくなった。
最後の一日は家にいて気ままな時間を過ごした。午前中、休み前近所の眼科医にお願いしていたハード・コンタクトレンズを受け取りに行った。
横溝正史アガサ・クリスティをはじめとするミステリの読み過ぎにより、それまで両眼2.0を誇っていた視力が低下し、眼鏡をかけ始めたのは高校生の頃。それから20年ほど眼鏡にお世話になる生活が続いていたが、数年前長男に眼鏡を壊されたことがきっかけで、ソフト・コンタクトレンズ使用を決心した。
もっとも最初はやはり慣れず、同時に神保町の看板建築三鈴堂眼鏡店で大枚払って買い求めたジョン・レノンオーバル眼鏡をかける日のほうが多かった。ところがその眼鏡もレンズが傷つき始めて、ようやくコンタクト一本槍でいくことにしたのである。この間コンタクトも一日使い捨て、二週間使い捨てとステップを踏みながら、着脱も容易にできるようになった。
ソフトを毎日使ううち、二週間レンズの使用日数を数えるのが面倒くさくなり、またレンズ代やケア用品代を考えると何となく不経済に感じるようになってきた。そこでより眼にやさしいと言われ、わたしのような近眼(0.01程度)にも適し、経済的にもお得感のあるハード移行を決意したのである。
初めてハードレンズを装着するときは激しい痛みや違和感をともなうと言われたものの、ソフトに慣れたせいか、違和感はかなりあるにせよ痛みを感じるところまではいかなかった。今日はさらに違和感が減じ、着脱も眼科助手の女性に褒められるほどすぐマスターしてしまった。
ハードコンタクト装着を乗り越えた嬉しさに、山形滞在中に購った本の整理をする心も軽い。昨日実家から送った段ボール箱が朝到着した。一冊一冊箱から取り出して、ブックオフの本には値札剥がしを塗布して値札を剥がしつつ、「男性自身シリーズ」を並べるためのスペース確保作業にいそしむ。井上章一さんの本と丸谷才一さんの本の一部が書棚からはじき出され、行き場を失った。ずらり27冊並んだ「男性自身シリーズ」を眺めひとり悦に入る。
この留守中、珍しくわたしが寄稿した雑誌が2冊も届いていた。封を開け確かめる。ウェブに書いた文章であれば、繰り返しチェックすることを怠らないのだが、活字媒体に書いた拙文を読むのがなぜか恥ずかしく、もう二度と読みたくないという気分になるのである。拙文が載ったのは次の2冊。書店で見かけたら手に取ってみてください。

留守中に届いたものに『通販生活』の最新号(2005年秋号)があった。前の号まで連載されていた谷口ジローさんの「散歩もの」は単行本になったのだろうか。この号では、愛読していた連載、阿奈井文彦さんの名画座時代―消えた映画館を探して―」が最終回を迎えた。連載の途中から読み始めたので、連載終結はとても残念で、未読の分も読みたいなあと思っていたところ、末尾に「近く岩波書店より単行本化される予定」と書いてあったので、それを楽しみに待つことにしよう。