2007-05-01から1ヶ月間の記事一覧

明朗とサスペンス

添えもの映画百花繚乱 SPパラダイス!!@ラピュタ阿佐ヶ谷 「お嬢さんの散歩道」(1960年、日活) 監督堀池清/脚本関屋清・浦山桐郎/笹森礼子/沢本忠雄/松尾嘉代/宮城千賀子/清水将夫/伊藤孝雄 「ある脅迫」(1960年、日活) 監督蔵原惟繕/原作多岐川…

大過なく、とにかく大過なく

若者には未来がある。とこう言えば、物理的な時間としての「未来」なら、長短違うだけで若者にだって年輩者にだってあると反論できる。ならばこう言い換えよう。若者には、予測できない未来がある、と。 もちろんこれにだっていかようにも反論可能だ。人間で…

「動植綵絵」の出張中には

香淳皇后の御絵と画伯たち展@宮内庁三の丸尚蔵館 相国寺に「動植綵絵」が出陳されているあいだ、これらを所蔵している宮内庁三の丸尚蔵館では何をやっているのだろう。こんな意地悪で悪趣味な気持ちが芽生え、確かめてみることにした。もとより三の丸尚蔵館…

第90 上野浅草初めてづくし

この週末、妻が母方の従妹の結婚式に出席するため、泊まりがけで出かけることになった。子供も一緒に来ていいよとお誘いを受けたのだが、ちょうど日曜に長男のそろばん検定試験が入っていたため、長男が行けなくなった。したがってわが家は、妻と次男、わた…

「池辺群虫図」を選ぶ

開基足利義満六〇〇年忌記念 若冲展@相国寺承天閣美術館

第5 京都日帰り若冲展

相国寺承天閣美術館で若冲展が開催されているということを知ったのはつい先日のこと。滅多にない展示であるということで観逃したくなかったが、すでに会期末が近く、美術館のサイトを見ると週末は大行列になっているという。 仕事が立て込んでいるので、貴重…

映画人の書いた本

映画人の書いた本を読むたび、「映画は総合芸術だなあ」としみじみ嬉しくなる。監督や脚本家、俳優だけでなく、カメラマンや美術、音楽や音声、そして編集やスクリプターに至るまで、たぶんどの分野でも関係なく、その分野のしかるべき立場の人が書いた本は…

廃墟好きの心理

よく“廃墟マニア”という言葉を目にするが、あれは具体的にどういった嗜好を持つ人たちをそう呼んでいるのだろう。かつては栄華をとどめていた建物が廃墟と化したという無常観を好む人なのか、誰にも見向きされなくなった廃墟という廃れきった様子が好きな人…

阪妻の迫力

ニッポン無声映画探検隊(第14回)@衛星劇場(録画HDD) 「雄呂血」(1925年、阪東妻三郎プロダクション・マキノプロダクション) 監督二川文太郎/原作・脚本寿々喜多呂九平/活弁松田春翠/阪東妻三郎/関操/環歌子/森静子/中村吉松/山村桃太郎/春路…

吉右衛門の法界坊

新橋演舞場五月大歌舞伎・夜の部(三階A席) 妹背山婦女庭訓 三笠山御殿の場 隅田川続俤 法界坊

市川崑の大学教師物

監督市川崑の映画たち@日本映画専門チャンネル(録画HDD) 「青色革命」(1953年、東宝) 監督市川崑/原作石川達三/脚本猪俣勝人/千田是也/沢村貞子/太刀川洋一/江原達怡/久慈あさみ/三國連太郎/伊藤雄之助/加東大介/木暮実千代/中村伸郎/青山…

美女と悪役

添えもの映画百花繚乱 SPパラダイス!!@ラピュタ阿佐ヶ谷 「トップ屋取材帖 悪魔のためいき」(1960年、日活) 監督井田探/原作島田一男/脚本星川清司/水島道太郎/筑波久子/二本柳寛/高品格/葵真木子/中村万寿子 「トップ屋取材帖 影のない妖婦」(1…

兄と弟の問題

衛星劇場シアター@衛星劇場(録画HDD) 「ゆれる」(2006年、『ゆれる』製作委員会) 監督・脚本西川美和/オダギリジョー/香川照之/真木よう子/伊武雅刀/蟹江敬三/新井浩文/木村祐一/ピエール瀧/田口トモロヲ

読まずに観てから読んだ

シリーズ物の感想が書きづらいという点では、小林信彦さんの『週刊文春』連載コラムをまとめた最新刊『昭和が遠くなって―本音を申せば』*1(文藝春秋)もそうだった。 けっこう同じことを繰り返し書いているというのが理由のひとつだが、良い意味でとれば、…

シリーズ物はむずかしい

シリーズ物の本の感想はなかなか書きにくい。たいてい最初の出会いのときに全体的な面白さを書いているいるからで、二冊目以降は局所的な感想にとどまらざるをえず、書こうとしてもいまひとつ気分が乗らないのである。 最近読んだもので言えば、北村薫さんの…

幸田文を読む豊かな時間

その人の文章を読むと、心に余裕が生じ、豊かな時間を過ごしていることを実感させられる作家が何人かいる。そのうちの一人が幸田文さんである。 ならば年中幸田作品を読んでいればずっと心豊かにいられるだろうにと言われると反論のしようがないのだが、なか…

血の風呂に浮かぶ球体

『ゲゲゲの鬼太郎』公開記念Part1 漫画×映画特集@衛星劇場(録画HDD) 「0課の女 赤い手錠」(1974年、東映) 監督野田幸男/原作篠原とおる/脚本神波史男・松田寛夫/杉本美樹/郷?治/丹波哲郎/室田日出男/三原葉子/荒木一郎/岸ひろみ/戸浦六宏 鹿…

GWのしめくくり

生誕100年特集 監督小津安二郎@NHK-BS2(録画ビデオ) 「東京物語」(1953年、松竹) 監督・脚本小津安二郎/脚本野田高梧/笠智衆/東山千栄子/原節子/山村聰/杉村春子/大坂志郎/香川京子/三宅邦子/中村伸郎/東野英治郎/十朱久雄/長岡輝子/桜む…

東宝争議を勉強する

戦後日本映画を観て、それに関する本などを読んでいると、いやでも目に入ってくるのが「東宝争議」である。敗戦直後の1946年から48年までの足かけ3年、三次にわたって繰り広げられた映画人と経営側の大衝突。「来なかったのは軍艦だけ」という言葉で有名な大…

妖怪が実写になると

MOVIX亀有 「ゲゲゲの鬼太郎」(2007年、2007ゲゲゲの鬼太郎フィルムパートナーズ・松竹) 監督本木克英/原作水木しげる/脚本羽原大介/ウエンツ瑛士/井上真央/田中麗奈/大泉洋/間寛平/室井滋/西田敏行/小雪/YOU/中村獅童/谷啓/橋本さとし/利…

寡婦は強し

添えもの映画百花繚乱 SPパラダイス!!@ラピュタ阿佐ヶ谷 「乾杯!見合結婚」(1958年、東京映画・東宝) 監督瑞穂春海/原作摂津茂和/脚本長瀬喜伴/香川京子/仲代達矢/若山セツ子/坪内美詠子/平幹二朗/中谷一郎/都家かつ江/岩崎加根子 「下町(ダ…

星新一作品の古い版を探せ

最相葉月さんの『あのころの未来―星新一の預言』*1(新潮社)は面白い本だった(→2003/5/21条)。現代最先端の科学技術を論じる切り口として星新一作品を取り上げるという文理融合型の刺激的な本。単純なわたしゆえ、この本を読んで星新一が読みたくったこと…

日活アクションとあの刑事ドラマ

デビュー50周年 石原裕次郎の軌跡@チャンネルNECO(録画HDD) 「夜霧のブルース」(1963年、日活) 監督野村孝/原作菊田一夫/脚本國弘威雄/石原裕次郎/浅丘ルリ子/山茶花究/岩崎加根子/小池朝雄/芦田伸介/垂水悟朗/天坊準/郷硏治/沢本忠雄/松…

杉村春子の大怪演

「監督 豊田四郎の世界」@日本映画専門チャンネル(録画DVD) 「女の四季」(1950年、東宝) 監督豊田四郎/原作丹羽文雄/脚本八住利雄/若山セツコ/杉村春子/池部良/東山千栄子/薄田研二/荒木道子/藤原釜足/赤木蘭子/渡辺篤/中北千枝子/谷間小…

鉄道文化史家の少年時代

最近「あれから○年、早いものだ」などと時間の流れの早さに思いを馳せるような、懐古的な物言いが多くなったと自覚している。このさいだからもう一回似たようなことを言わせてもらえば、原武史さんの新著『鉄道ひとつばなし2』*1(講談社現代新書)に接して…

同時代の映画を観ること

沢木耕太郎さんの映画エッセイ集『世界は「使われなかった人生」であふれてる』*1(幻冬舎文庫)を読み終えた。 本書は沢木さんが『暮しの手帖』誌に連載した「映画評」のうち30篇を選んで、2001年11月に暮しの手帖社から単行本化されたものの文庫版である。…