2005-06-01から1ヶ月間の記事一覧

異郷・異国としての山の手/下町

ふだんあまりチェックすることのないPHP文庫新刊棚をたまたま見ていたら、ある1冊の本のカバー表紙に目がとまり、あっ、と思った。その本とは、森本哲郎さんの『懐かしい「東京」を歩く』*1。手に取り確認してみると、案の定予想は当たった。 というのも、本…

中間小説時評読みくらべ

『植草甚一スクラップ・ブック』(晶文社)の全巻復刊が進行中だが、まったく買っていない。第39巻『植草甚一日記』は古本ですでに持っている。移転前の綾瀬デカダン文庫で買ったのだった。第8巻『江戸川乱歩と私』は学生時代からずっと興味を持っているのだ…

マジピンクになりたい

鹿島茂さんの新著『モモレンジャー@秋葉原』*1(文藝春秋)は先月末ないし今月初旬に刊行され、今月4日、東京堂書店にて刊行記念サイン会が開催されている。 わたしはこれまで鹿島さんの本が出たら即買っているほどのファンだが、今度ばかりはそうもいかな…

2行分の空白

約一年前のこと、病床で読んだ都筑道夫さんの『退職刑事』をきっかけに、それまで好きで読んでいた佐野洋さんと都筑さんを推理作家として対比的に見るという癖がついてしまった。この経緯は2004/7/16条に書いた。 この間、もっぱら都筑道夫さんの小説、とり…

第72 念願の市川古本屋めぐり

“http://park17.wakwak.com/~libre/book/index.html”のやましたさん、“種村季弘のウェブ・ラビリントス”のやっきさん、やましたさんの同級生のIさんとわたしの4人をメンバーに、特定の電車路線沿いにある古本屋を巡り歩く催しをときどき行なっている。 これ…

全能神への夢想

丸谷才一さんの最新刊『綾とりで天の川』*1(文藝春秋)を読み終えた。 たんにここ一週間ほどのわたしの気分の問題なのか、いままでの丸谷さんのエッセイ集にくらべ、「書巻の気」が濃い目で、考証随筆の味わいも強くなっていたような気がする。だから、読み…

戦争は人を変える

ちくま文庫に吉村昭さんの『東京の戦争』*1が入った。小林信彦さんが解説を書いているということもあって読もうと思ったが、この本に先行する回想エッセイ『東京の下町』*2(文春文庫)のほうが先だろうと思い直し、そちらを先に読むことにした。年頭買い込…

格安で庄野潤三さんの本

萬葉堂書店@東大赤門前 ★黒井千次『冬の手紙』(中央公論社) カバー・帯、200円。短篇集。 ★庄野潤三『小えびの群れ』(新潮社) カバー・帯、100円。 ★庄野潤三『休みのあくる日』(新潮社) カバー・帯、300円。 庄野さんの本はいずれも短篇集で、『小え…

古本たすき

密偵おまささん(id:mittei-omasa)からご指名を受けました。先日の“Musical Baton”といい、わたしのような者にふっていただき、たいへん光栄です。“Musical Baton”と似た企画だけれど、これから派生したのでしょうか。質問は英語でないから、日本で生まれた企…

君知るや名酒泡盛

国立大学が「国立大学法人」となって1年が過ぎた。教職員は国家公務員から非公務員になり、「教官」という呼び方も「教員」と変わって、ようやく慣れてきたところである。 これにより各大学も経営努力が求められ、中身より先に、外の人に見えやすいところか…

庄野潤三作品の隙間が埋まった

青木書店@堀切菖蒲園 ★和田誠『3人がいっぱい1』(新潮文庫)★和田誠『3人がいっぱい2』 カバー、各300円。作家ほか芸能人らが知人3人のポルトレを書き、それに和田さんが似顔絵を添えたシリーズ。ISBN:4101245010/ISBN:4101245029 ★平岡篤頼『パリその日そ…

赤瀬川原平の埋もれた名作

この春のテレビ番組改編期に、局は忘れたがタモリが出演した情報特番があって、このなかで三省堂の『新明解国語辞典』が取り上げられていた。いまさら、という気がしないでもないが、やはり語釈が面白い。 このとき初めて知ったのは、妻が『新明解』ユーザー…

人間万事金の世の中

「4ヶ月まるごと成瀬巳喜男劇場」@日本映画専門チャンネル(録画DVD) 「晩菊」(1954年、東宝) 監督成瀬巳喜男/原作林芙美子/脚色田中澄江・井出俊郎/杉村春子/沢村貞子/細川ちか子/望月優子/上原謙/小泉博/有馬稲子/見明凡太郎/沢村宗之助/…

Musical Baton

皆さん同様、トラックバックをいただいてはじめてこんな企画があることを知りました。“不幸の手紙”に擬するのは失礼な話ながら、ネットの世界とこういう企画は相性が合うもののようですね。 しかも晩鮭亭さん(id:vanjacketei)とやっきさん(http://zabakaraqu…

今度こそ荷風本最終兵器?

今年1月に「〈書評〉のメルマガ」連載「読まずにホメる」*1で「荷風本の最終兵器?」と題し草森紳一『荷風の永代橋』*2(青土社)を取り上げたあとも、魅力的な荷風本刊行がなおやまない。 最近出た持田叙子『朝寝の荷風』*3(人文書院)、川本三郎・湯川説…

永井龍男の俳句

江國滋さんの『俳句とあそぶ法』*1(朝日文庫、旧読前読後2002/3/23条)ほど、俳句の世界への入門書としてふさわしい本はない。ときどき書棚の“江國滋文庫コーナー”から同書を取り出し、めくることがある。 この本を読んで、久保田万太郎に次いで自分の好み…

山口瞳がしっくりくる季節

先日、文庫で唯一持っていなかった山口瞳『単身赴任』(講談社文庫)を手に入れることができた(→6/8条)。山口さんの文庫本を並べている棚に収め、眺めながら一人悦に入る。 文庫本が揃ったのを機会に、山口さんの本を読もうと思い立ち、『男性自身 生き残…

縄文人は東京に失望するだろう

東京は坂の町である。ということは、台地と低地から成る町ということでもある。決して平坦ではない。この凸凹の地勢をうまく利用して江戸の町ができあがり、現在の東京に受けつがれた。 このあたりは陣内秀信さんの『東京の空間人類学』*1(ちくま学芸文庫)…

あいかわらず都筑道夫

配水塔を見ることができたのはいいが、大山でことごとく古本屋にふられてしまったのには、やはり一抹の物足りなさを感じてしまう。そのまま手ぶらで帰るのも寂しいので(このあたり完全に古本病だ)、北千住のブックオフに寄ってしまう。 ブックオフ北千住駅…

第71 給水塔へ

この週末、家に持ち帰った仕事を仕上げるためパソコンに向かっていたせいか、気分が鬱ぎ気味になっていた。幸い今日は梅雨の晴れ間でいい天気だ。気分転換に出かけることにしよう。 8日の朝日新聞地域版(東京東部版)に、「さよなら東京ロマネスク」という…

散文詩のような映画

日本映画専門チャンネル 「四月物語」(1998年、ロックウェルアイズ) 監督岩井俊二/松たか子/田辺誠一/藤井かほり/加藤和彦/江口洋介/石井竜也/伊武雅刀/松本幸四郎/藤間紀子/松本紀保/市川染五郎/津田寛治 旧知の書友やましたこうしんさんの日…

正しい団塊の世代マニュアル

二子山親方(初代貴乃花)の死は痛恨事だった。ショックだった*1。小学校に入学したあたりにはすでに相撲ファンで、親方の追悼報道でよく流された北の湖との優勝決定戦が昭和50年だから、記憶こそないもののたぶんテレビで見ていたのではなかったか。北の湖…

またしても都筑道夫

フィルムセンターで映画を観終えたあと、人を訪ねる用事があったため、銀座線神田で降り、淡路町へ行く。その帰り、淡路町駅近くの靖国通り沿いにある澤口書店がまだ開いていたので立ち寄る。都筑道夫さんの本ばかり4冊購入。 澤口書店 ★都筑道夫『きまぐれ…

大好きな女優二人の大乱闘

「生誕百年特集 映画監督豊田四郎」@東京国立近代美術館フィルムセンター 「猫と庄造と二人のをんな」(1956年、東京映画) 監督豊田四郎/原作谷崎潤一郎/脚色八住利雄/森繁久彌/香川京子/山田五十鈴/浪花千栄子 疲労困憊だったので、気晴らしに仕事…

親との対話、子との対話、自分との対話

重松清さんのエッセイ集『明日があるさ』*1(朝日文庫)を読み終えた。 本書の元版は『セカンド・ライン』という書名で、「文庫版のためのあとがき」によれば、「バラエティ・ブック」として、「マンガ雑誌のようなザラ紙を何色も使い、本文の組み方やフォン…

最後の山口瞳文庫本

数ある山口瞳さんの文庫本のうち、なぜか講談社文庫の『単身赴任』だけなかなか手に入らなかった。単行本では持っているのだが、文庫好きのわたしとしては、文庫版が手に入らないための代償にすぎなかった。同じ講談社文庫の『婚約』はよく見るのに。 「へえ…

東京で家を建てること

小林信彦さんの『ドリーム・ハウス』*1(新潮文庫)を読み終えた。 この作品は、『怪物がめざめる夜』『ムーン・リヴァーの向こう側』(いずれも新潮文庫)とあわせ、著者みずから「東京三部作」と称しているうちの第一作目にあたる。前2作品は既読で、それ…

あと4冊

最寄駅北口の古本屋 ★都筑道夫『都筑道夫コレクション《ユーモア篇》 悪意銀行』(光文社文庫) カバー、400円。このシリーズもだいぶ集まってきたなあと思ったら、まだあと4冊もある。ISBN:4334734898

仲代達矢の華麗なる変身

「監督 岡本喜八の世界」@日本映画専門チャンネル(録画DVD) 「殺人狂時代」(1967年、東宝) 監督岡本喜八/原作都筑道夫/仲代達矢/団玲子/砂塚秀夫/天本英世 ようやく、都筑道夫『なめくじに聞いてみろ』を原作にしたこの映画を観ることが叶った。 …

屈託だらけの夫、屈託のない妻

「4ヶ月まるごと成瀬巳喜男劇場」@日本映画専門チャンネル(録画DVD) 「夫婦」(1953年、東宝) 監督成瀬巳喜男/上原謙/杉葉子/三國連太郎/小林桂樹/岡田茉莉子/藤原釜足/滝花久子 上原と杉は結婚6年目を迎える夫婦。上原は電気関係の商社に勤めて…