2004-01-01から1ヶ月間の記事一覧

葛飾区郷土と天文の博物館の帰りに立ち寄った新古書店 ★山下洋輔『ドバラダ乱入帖』(集英社文庫)ISBN4087486885 あの名作『ドバラダ門』から3年後、その「ノート」という体裁の長篇エッセイ。『ドバラダ門』が面白かっただけに、この本を手に入れることが…

鈴木博之「荒川放水路の〈地霊〉ゲニウス・ロキ」@葛飾区郷土と天文の博物館(参加費100円)

「川の手 放水路のある風景」@葛飾区郷土と天文の博物館(入館料100円)

放水路のある風景

仙台(東北地方)に住んでいたころ、上京のため新幹線に乗っていて「東京に来たなあ」という心もちになったのは荒川に架かる鉄橋を越えたときである。現在東北から戻ってくるときも心境はそう変わらない。現実的にも荒川は埼玉県と東京都の境界である。その…

ポケモンという知的遊戯

中沢新一さんの文庫新刊『ポケットの中の野生―ポケモンと子ども』*1(新潮文庫)を読み終えた。中沢さんの本を買って読むのはずいぶん久しぶりだ。 あたりのやわらかい、独特の息づかいをもったあの文体にしびれていたことがある。『悪党的思考』がすでに話…

本に対する執着心のなくし方

インターネットの発達によって、新刊・古本を問わず、実際の店舗に足を運ばずとも家にいながらにして書籍購入が可能となる時代が到来した。 それだけでない。“Amazon”や“Easy Seek”のようなネット通販大手のシステムを利用すれば、一般の個人が自分の本を売…

寄席の紳士たち

小林信彦さんの『名人―志ん生、そして志ん朝』*1(朝日選書、→1/25条)には安藤鶴夫の名前が頻出する。概して好意的である。わけてもその著書『落語鑑賞』が多く取り上げられているのだが、あいにくその本は持っていない。 次に読む本は何かないものかと書棚…

レンタルビデオ 「砂の器」(1974年、松竹) 野村芳太郎監督/加藤剛/丹波哲郎/森田健作/加藤嘉/島田陽子/笠智衆/渥美清/緒方拳/佐分利信/山口果林 刑事の物語である原作を、その味を損なうことなく枝葉をそぎ落とし、感動的な親子の物語に見事に換…

飾らない女優高峰秀子

昨年あたりから、昭和20〜30年代の日本映画をまめに見に行くようになった。川本三郎さんの影響が大きい。 制作公開後40〜50年を経過してなお現在も上映される映画ということだから、そこにはプログラムを組む映画館の見識ばかりでなく、一般的な世評も介在し…

大家族のクロニクル

中野翠さんの『無茶な人びと』*1(文春文庫、→1/15条)を読んで読書欲をそそられた一冊に、里見紝の長篇『極楽とんぼ』(岩波文庫『極楽とんぼ 他一篇』)がある。中野さんに以下のようなことを書かれたら、もう、読まずにはいられなくなるではないか。私は…

今井書店@阿佐ヶ谷 ★飯嶋和一『雷電本紀』(河出文庫)ISBN4309404863 カバー、300円。 ブックオフ阿佐ヶ谷店 ★ジャン=ジャック・フィシュテル(榊原晃三訳)『私家版』(創元推理文庫)ISBN4488208029 カバー、300円。

ラピュタ阿佐ヶ谷 「娘と私」(1962年東京映画) 堀川弘通監督・獅子文六原作/山村聰/星由里子/原節子/山崎努/杉村春子/フランソワーズ・モレシャン/小沢栄太郎/東野英治郎 獅子文六の自伝的作品。最初のフランス人妻に先立たれた序盤と、二番目の妻…

志ん朝、そして志ん生―本、そして映画

片手で数える程度にすぎない乏しいわが寄席経験ではあるけれども、一度だけ亡き志ん朝の高座を聴いたことがある。ある方からは、今となっては自慢していいことだと言われ、何だかくすぐったかった。そんなことをいえば、私の妻のほうがすごい。唯一聴いた寄…

新生堂奥村書店 ★中野翠『あやしい本棚』(文藝春秋)ISBN4163573607 カバー帯、700円。 ★北上次郎『別れのあとさき』(毎日新聞社)ISBN4620315389 カバー帯、600円。この二冊とも書評集なのですが、文庫に入るかどうか不安なところもあるので購入。

島村利正を読んで

堀江敏幸さんの『いつか王子駅で』*1(新潮社)を読み終え、ただちに島村利正の『奈良登大路町/妙高の秋』*2(講談社文芸文庫)を読み始めた。この短篇集には「仙酔島」「残菊抄」「奈良登大路町」「焦土」「妙高の秋」「斑鳩ゆき」「神田連雀町」「佃島薄…

大学堂書店@本郷三丁目 ★新藤兼人『小説 田中絹代』(文春文庫) 評伝小説。カバー帯、200円。文学座アトリエに「大寺学校」を見にいったとき、隣の隣くらいに座っていた新藤監督のお姿を思い出しました。あのときは長岡輝子さんや丹阿弥谷津子さんもいらし…

事件としての文庫化

『BOOKISH』第6号*1(特集:戸板康二への招待)が出たおりもおり、戸板康二さんの代表的著作『歌舞伎への招待』*2が岩波現代文庫に入ったのは「事件」であったといってよい。 本書を世に出した花森安治に遠慮して文庫化の申し入れを断りつづけたといういわく…

島村利正を読むまえに

島村利正の作品集が文庫に入った。『奈良登大路町/妙高の秋』*1(講談社文芸文庫)である。 書友やっきさんのご教示によると、島村の作品が文庫になったのは中公文庫『妙高の秋』に次いでこれが二冊目らしい。単行本短篇集そのままの文庫化でなく、佳品を集…

棚澤書店@本郷 ★臼井吉見『安曇野(第一部)』(ちくま文庫)ISBN4480021310★同『安曇野(第二部)』(ちくま文庫)ISBN4480021329★同『安曇野(第三部)』(ちくま文庫)ISBN4480021337★同『安曇野(第四部)』(ちくま文庫)ISBN4480021345★同『安曇野(…

「張込み」(松竹ホームビデオ) 野村芳太郎監督・橋本忍脚本・松本清張原作。大木実/高峰秀子/宮口精二/菅井きん/田村高廣/高千穂ちづる/浦辺粂子など。現地佐賀の刑事で見たことがある顔だなあと思っていたら、それが多々良純。懐かしい。

入れ込みすぎて

先日映画版「砂の器」のビデオを借りようとしたら貸出中で借りることができなかった。代わりにといっては何だが、同じ松本清張原作・野村芳太郎監督・橋本忍脚本の「張込み」を借りた。書友モシキさんが高く評価されていたのを以前その読書日記で目にして以…

明治職人の世界に遊ぶ

ときどき明治・大正時代に遊びに行く。もちろん読書の世界での話である。並行的に読んでいる本のうち、一冊はこの時期について書かれたものであることが多く、だから頭の何分の一かは常に明治・大正の時代に置いているのである。不思議なもので、この時期に…

『砂の器』漬けの週末

一週間の仕事を終えたとき、「よし、週末は松本清張の『砂の器』を読むぞ」と私にしては珍しく気合いを入れた。諸事に追われ何かと忙しかったことの反動かもしれない。 明日18日から、TBS系にて中居正広主演で「砂の器」がリメイクドラマ化される。昨年この…

日本語のオノマトペ

人前で話すのが苦手で機転もきかないから、先生という職業はおよそ私に向いていない。そんな私でも非常勤講師の経験がないわけではない。東京に移ってからも、一年間だけだったが、北関東のとある女子大に出講したことがある。自宅を出てから学校に着くまで…

足の裏の強さ

中野翠さんの文庫新刊『無茶な人びと』*1(文春文庫)を読み終えた。本書は1996年11月から翌97年11月までの一年間に書かれたコラム(大半は初出が『サンデー毎日』?)をまとめたもので、97年12月に刊行されている。刊行から7年が経過しているわけである。私…

漂流する精神

中野美代子さんのエッセイ集『あたまの漂流』*1(岩波書店)を読み終えた。中野さんの本を読んだのは久しぶりだ。『肉麻図譜』*2(作品社、感想は2002/1/5条)以来二年ぶりか。昨年古稀を迎えられた中野さんだが、古今東西を問わず好奇心旺盛にイメージの収…

「一葉神話」の崩壊

和田芳恵『一葉の日記』*1(講談社文芸文庫)を読み終えた。もとより忌日である11月23日に読もうと考えていたが、のばしのばしになったすえ年末年始に読む本のなかに加わった。同じく年末年始に持っていった大村彦次郎さんの『文壇栄華物語』*2(筑摩書房、…

最寄駅構内の仮設ワゴン ★戸板康二『才女の喪服』(河出文庫)ISBN4309401953 長篇ミステリ。改札をくぐる前に時間があったのでのぞいていたら発見。ダブりだったけれど、つい。250円。先日の『塗りつぶされた顔』と同じく、入り用の方、ご連絡ください。 ★…

第54 浅草から上野へ

浅草界隈を歩こうと思った。東武伊勢崎線の業平橋駅で降りる。これまで業平橋駅は散歩の終点として、そこから電車に乗って帰るために何度か利用したことがある。散歩の起点として、しかも駅の北へ出るのは初めてのことだ。駅のすぐ北に小さな古本屋をさっそ…

病の記憶の残る本

昨年の11月中旬出張先で風邪をひいた。ホテルの部屋が乾燥していたため、喉をやられたのである。 そのうえ東京に戻ると精神的に辛い仕事が待ちかまえていて、12月初頭のある出来事がきっかけで左胸・肩・背中・腕に重い痛みが走り、加えて喉の詰まりを感じる…