2006-07-01から1ヶ月間の記事一覧

裕次郎映画という大きな流れ

日活名画館・石原裕次郎シアター@チャンネルNECO(録画DVD) 「素晴しき男性」(1958年、日活) 監督・脚本井上梅次/石原裕次郎/北原三枝/月丘夢路/大坂志郎/山岡久乃/待田京介/三島雅夫/清川玉枝/金子信雄/林茂朗/西村晃/白木マリ/柳沢真一 …

松竹映画史兼松竹映画人列伝

松竹に関わった映画人の本を読んでいるとかならず目にするのは、大船撮影所の前にあったという松竹映画人御用達の食堂「ミカサ」「月ヶ瀬」「松尾」の名前である。先日来読んできた高橋治『人間ぱあてい』『絢爛たる影絵 小津安二郎』にもむろん登場する。こ…

森雅之の頭頂部

「監督 黒澤明の仕事」@日本映画専門チャンネル(録画HDD) 「悪い奴ほどよく眠る」(1960年、東宝・黒澤プロダクション) 監督黒澤明/脚本小国英雄・久板栄二郎・黒澤明・菊島隆三・橋本忍/三船敏郎/森雅之/香川京子/三橋達也/志村喬/西村晃/加藤…

喜ばしき映画ハシゴ

昭和の銀幕に輝くヒロイン第29弾 団令子スペシャル@ラピュタ阿佐ヶ谷 「重役の椅子」(1958年、東宝) 監督筧正典/原作源氏鶏太/脚本猪俣勝人/池部良/団令子/杉葉子/淡路恵子/河津清三郎/水野久美/藤間紫/柳永二郎/十朱久雄/東郷晴子/佐々木孝…

芦川いづみの引退作

日活映画館@チャンネルNECO(録画HDD) 「孤島の太陽」(1968年、日活) 監督吉田憲二/原作伊藤桂一/脚本千葉茂樹/樫山文枝/勝呂誉/芦川いづみ/宇野重吉/前田吟/二木てるみ/浜村純/下條正巳/嵯峨善兵/浦辺粂子 この映画が芦川いづみの最後の出…

小津映画への入り口

『人間ぱあてい』(→7/22条)の高橋治さんは、作家活動に入る以前は松竹の映画監督であり、また助監督時代には小津安二郎監督の代表作「東京物語」にもついていた。『人間ぱあてい』でも小津安二郎が取り上げられ、その独特なたたずまいに言及されている。 …

佐分利信謎の自殺

小林正樹監督没後10年特集@衛星劇場(録画HDD) 「泉」(1956年、松竹) 監督小林正樹/原作岸田國士/脚本松山善三/有馬稲子/佐田啓二/佐分利信/桂木洋子/加東大介/小林トシ子/夏川静江/織田政雄/小川虎之助/西村晃/内田良平/渡辺文雄/山本和…

月並みな感想

北村薫さんの最新長篇『ひとがた流し』*1(朝日新聞社)を読み終えた。北村さん初の新聞連載小説である。 わが家も購読している朝日新聞に連載されたものだが、最初の数回読んだきり「いいや、あとは単行本になってから読もう」と読みつづけるのを放棄した。…

鉄っちゃん

また夏休みがやって来た。小1の長男は今年もJR東日本の企画「ポケモン・スタンプラリー」の全駅制覇に意欲満々で、彼の母親はいまから憂鬱な顔をしている。『夏休み時刻表 ポケモン・スタンプラリー特別号』がこれに合わせて発売された。スタンプラリーでス…

スペクタクルとハートウォーミング

東宝パニック特撮の世界@日本映画専門チャンネル(録画HDD) 「日本沈没」(1973年、東宝) 監督森谷司郎/原作小松左京/脚本橋本忍/小林桂樹/藤岡弘/いしだあゆみ/丹波哲郎/島田正吾/二谷英明/中丸忠雄/村井国夫/中村伸郎/夏八木勲/角ゆり子/…

宇野重吉の決断

デビュー50周年 石原裕次郎の軌跡@チャンネルNECO(録画HDD) 「風速40米」(1958年、日活) 監督蔵原惟繕/原作・脚本松浦健郎/石原裕次郎/北原三枝/宇野重吉/川地民夫/渡辺美佐子/金子信雄/山岡久乃/小高雄二 「紅の翼」の緊張感のあと観ると、ち…

不思議な組織松竹

先日の山形帰省で、ようやく高橋治さんの『人間ぱあてい』*1(講談社文庫)を入手した。本書は夕刊フジ連載エッセイをまとめた本である(→2005/12/22条)。 文庫になっていながら、なかなか出会うことができなかった。夕刊フジ連載未入手本のなかでも、この…

風俗とドラマ

衛星映画劇場@NHK-BS2 「女の園」(1949年、松竹大船) 監督・脚本木下恵介/原作阿部知二/高峰三枝子/高峰秀子/岸惠子/久我美子/田村高廣/金子信雄/東山千栄子/毛利菊枝/田浦正己/望月優子/浪花千栄子/井川邦子/山本和子 わたしがむかしの日…

人間関係としての同級生

文藝春秋編『同級生交歓』*1(文春新書)を読み終えた。新書新刊で平積みされていたのを手に取りパラパラめくると、これが面白い。あの人やこの人が出ている、そんな驚きが積み重なって、買うことにした。 本書は月刊『文藝春秋』誌の名物グラビア記事で、そ…

ヒトの見え方

凶悪犯罪事件の犯人が、日常生活においてはごくふつうの、ともすれば善人であり、周囲の人びとは信じられない気持ちで事実を受けとめる。最近では凶悪事件が起こるたび、たいていそんなパターンなので、もはやそうしたギャップがあることは意外でもなんでも…

山形で買った本

ブックオフ山形寿店 小林信彦『合言葉はオヨヨ』(ちくま文庫) カバー、550円。ISBN:4480027963 海老沢泰久『二重唱〈デュエット〉』(文春文庫) カバー、400円。ISBN:4167414104 『江戸川乱歩全集19 十字路』(光文社文庫) カバー・帯、500円。光文社文…

狐の正体

びっくりしたなあ。 書店の新書新刊コーナーに並んでいた山村修『〈狐〉が選んだ入門書』*1(ちくま新書)に反応してしまった。〈狐〉という箇所に。このヤマ括弧部分に反応する人は、わたしと同じように本好き読書好きに違いなく、でも多数派とは言えないか…

悠久なる時間の流れ

庄野潤三さんの『貝がらと海の音』*1(新潮文庫)を読み終えた。 本書は現在まで続く「老夫婦物」の第1作である。リストについては去年1/28条でまとめた。そのとき読んだのが、文春文庫に入ったばかりの『せきれい』で、これは第3作目だった。この世界にすっ…

対照的な香川京子と久我美子

銀幕の東京〜失われた風景を探して@ラピュタ阿佐ヶ谷 「女であること」(1958年、東京映画) 監督川島雄三/原作川端康成/脚本田中澄江・井手俊郎・川島雄三/森雅之/原節子/久我美子/香川京子/三橋達也/芦田伸介/太刀川洋一/中北千枝子/石浜朗/…

現代日本人の「お約束」

泉麻人さんの文庫新刊『「お約束」考現学』*1(SB文庫)を読み終えた。 本書の言う「お約束」とは、生活のさまざまな場面において、わたしたち現代の日本人が無意識にとってしまう行動や口から出る言葉づかいといった「お決まりのパターン」のことである。誰…

サスペンスフルな90分

デビュー50周年 石原裕次郎の軌跡@チャンネルNECO(録画HDD) 「紅の翼」(1958年、日活) 監督中平康/原作菊村到/脚本中平康・松尾昭典/石原裕次郎/中原早苗/二谷英明/芦川いづみ/滝沢修/大坂志郎/芦田伸介/西村晃/小沢昭一/安部徹/岡田真澄…

明治のメディアミックス映画

明治末年頃の日本では、桃中軒雲右衛門を中心にして、浪花節が爆発的な人気をさらっていた。これは一昨日書いたとおりである。もっともだからといって、このころの日本人の娯楽芸能的志向が、江戸時代以来の芸能の流れを汲み、義理人情・忠君愛国的な色合い…

気配りするベテラン女優

杉浦日向子さんの『ごくらくちんみ』*1(新潮文庫、→7/5条)につづけて、食べ物について書かれたエッセイ集を読みたいと思った。 ちょうど目についた場所にあったのが、沢村貞子さんの『わたしの台所』*2(光文社文庫)である。最近光文社文庫から「〈食〉の…

映画を観て、明治の昔を思う

「4ヶ月まるごと成瀬巳喜男劇場」@日本映画専門チャンネル(録画DVD) 「桃中軒雲右衛門」(1936年、P.C.L.) 監督・脚本成瀬巳喜男/原作真山青果/月形龍之介/細川ちか子/千葉早智子/藤原釜足/伊藤薫/三島雅夫/市川朝太郎/小杉義男/御橋公/伊達…

本を読み、映画を観る

兵藤裕己さんの『〈声〉の国民国家・日本』*1(NHKブックス)を読み終えた。本書は浪花節という口承芸能が日本における近代国民国家形成に果たした役割を考察するものである。 兵藤さんによれば、近代日本の国民国家の形成から解体に至る明治20年代から昭和2…

ともだちよこれがわたしの…

毎日最低一本は古い日本映画を見つづけるという一週間をすごした。ストレス解消に端を発したとはいえ、われながら常軌を逸した狂乱の一週間だった。 月曜日に観た「牛乳屋フランキー」の感想に「月曜からスラップスティック」というタイトルを付けたときは、…

土曜日は大船喜劇

喜劇特急第六弾 女の子たちの喜劇特急@シネマアートン下北沢 「千客万来」(1962年、松竹大船) 監督中村登/脚本野田高梧・柳井隆雄・富田義朗/岩下志麻/川津祐介/山村聰/三宅邦子/鰐淵晴子/佐田啓二/岡田茉莉子/伊藤雄之助/水戸光子/桑野みゆき…

金曜日は日活アクション

デビュー50周年 石原裕次郎の軌跡@チャンネルNECO(録画HDD) 「赤い波止場」(1958年、日活) 監督舛田利雄/脚本池田一朗・舛田利雄/石原裕次郎/北原三枝/大坂志郎/中原早苗/轟夕起子/岡田真澄/二谷英明/清水まり子/柳沢真一/土方弘/二本柳寛 …

木曜日はオーバーアクト

脇役列伝〜脇役で輝いた名優たち〜@新文芸坐 「拳銃コルトは俺のパスポート」(1967年、日活) 監督野村孝/原作藤原審爾/脚本山田信夫・永原秀一/宍戸錠/小林千登勢/ジェリー藤尾/嵐寛寿郎/内田朝雄/武智豊子/佐々木孝丸/杉良太郎/江角英明/草…

星の翁に救いを求め

明日は七夕だ。天気はどうなのだろう。いずれにせよ最近七夕と聞いて夜空を見上げることもなくなりつつあるし、そもそも見上げても天気が悪かったり、晴れていても星の輝きが冬ほど鮮やかでなくはっきりしないことが多い。 織女星(ヴェガ)の右下に斜め長方…