金曜日は日活アクション

「赤い波止場」(1958年、日活)
監督舛田利雄/脚本池田一朗舛田利雄石原裕次郎北原三枝大坂志郎中原早苗轟夕起子岡田真澄二谷英明/清水まり子/柳沢真一/土方弘/二本柳寛

この「赤い波止場」は、前に観た「夜の牙」と同じ年に作られ、封切られている。「夜の牙」を観たときには、「顔のない死体」や「一人二役」といった派手なトリックが仕掛けられた山あり谷ありのミステリ映画が自分の好みだと感じたものだが(→6/30条)、まるで正反対の雰囲気をもった「赤い波止場」を観て、これもまたいいと考えるようになった。
舞台は神戸港石原裕次郎は射撃が得意なやくざで、決して尻尾をつかませず、警察に捕まったことがない。東京から神戸に逃げているところで、神戸の刑事大坂志郎が執拗につきまとっている。現地では弟分の岡田真澄とともに行動し、キャバレーのダンサー中原早苗のところに身を寄せている。女性にも人気のある石原だが、ある日北原三枝と出会い、彼女に一目惚れする。北原は東京で大学に通っていたが、兄を石原に謀殺されたあと兄の経営するレストランを手伝うため神戸に帰ってきていた。石原は信頼していた東京の兄貴分である二谷英明から殺し屋を差し向けられ、命を狙われ、逆に彼を殺害する。
毎度同じく、ストーリーは石原と北原の恋愛模様が絡んでゆくが、燃え上がるような恋愛ドラマというわけでないから、二人だけが突出していない。アクションもことさら派手派手しくない。ことほどさようにこの作品は、すべての面にわたって抑制されており、上品上質な仕上がりとなっているのである。逃げまわったすえ石原も最後には大坂に両手を差し出してしまうから、北原との恋のゆくえも宙づりにされたままになる。
石原につきまとう刑事の大坂志郎がやはりいい。紡錘形の紙袋に入った南京豆をひっきりなしに口に入れている仕草が印象的。ある日「港まつり」で石原と並んで歩いているとき、豆を食べ尽くして入れ物をくちゃくちゃに丸めたあと、石原が通りすがりの屋台から同じ紡錘形の豆を買って大坂に手渡す何気ないシーンが好きだ。
この映画は、大坂志郎のほか、二谷を殺したあと香港に逃げようとする石原を影で助けようと奔走する船員ホテルの女将轟夕起子の二人のベテラン、石原に献身的なほど尽くす中原早苗岡田真澄ら脇役によって支えられているといっても過言ではない。「ホモ的兄貴・舎弟愛」を見せていた宍戸錠ジェリー藤尾コンビとくらべ、「夜の牙」と同じ石原・岡田の「兄貴・舎弟愛」はピュアな印象で、これは岡田真澄の「子分肌」的キャラクターがジェリー藤尾のそれと違うことに由来しているのだと思うが、では岡田真澄の「子分肌」がいかなるものであるのか、うまく言葉にまとめることができない。
なかなかの名作と感じたので、DVDに保存することにした。
赤い波止場 [DVD]