二度目はスクリーンで

紅の翼」(1958年、日活) ※二度目
監督中平康/原作菊村到/脚本中平康松尾昭典石原裕次郎中原早苗二谷英明芦川いづみ滝沢修大坂志郎芦田伸介西村晃小沢昭一/安部徹/岡田真澄相馬幸子東恵美子/峯品子/清水まゆみ/山岡久乃/下條正己

先日DVDで観て面白かった「紅の翼」だが(→7/12条)、今回フィルムセンターの日活アクション映画特集でも上映されることを知り、躊躇せず再見することを決めた。ずいぶん前のように感じてしまうが、実は間隔は一ヶ月半しか空いていない。
入場開始の18時30分直前にフィルムセンターに到着すると、並んでいる人が十数人しかいないので拍子抜けした。その後上映開始の19時までに人も増えたが、決して多いとは言えない。いい映画なのになあ。
大スクリーンで、大勢の人と一緒に観た二度目、さらに堪能した。裕次郎が唄う主題歌「紅の翼」は、タイトルバックとラストに流れる。これがよく、胸が高鳴る。観終えたあとに入ったトイレで、鼻歌で主題歌を唄っているおじさんがいたが、気持ちがよくわかる。わたしの頭のなかにもメロディがエンドレスで流れていたから。
サスペンスフルで至るところに伏線が張られている。今回気づいて感心したのは、声だけの二谷が安部徹を射殺する冒頭場面だった。どんな伏線なのかは、むろん書かない。加えて今回気づいたのは、意外にユーモアにも満ちているということ。
遭難連絡直後消息を絶ったセスナのパイロット石原裕次郎と同乗した中原早苗の家族(芦川いづみ滝沢修)の前で、小沢昭一が彼らを「遺族」呼ばわりしたことに笑わされたのは前回も書いた。いっぽうそのとき、「石原との約束を反古にしたため石原がセスナを操縦することになったと泣きわめく恋人でスチュワーデスの峯品子に向かい、毅然と抗議する芦川いづみの凛々しさ」と書いた。
ここで芦川は、自分の兄(石原)は、恋人との約束が反故になったから仕方なく八丈島に向かうような人間ではない。兄は破傷風による高熱で瀕死の床にいる少年のため、血清を届けるのだという崇高な目的を抱いて飛ぶことを決めた、そういう人間なのだと「凛々しく」力説する。その場面、両手を胸の前で組み、神を仰ぐかのように兄の崇高さを歌い上げるように訴える姿は、実は観ていて笑えるのだ。場内からも失笑に近い笑いが漏れた。この過剰な表現は中平監督による演出なのだろう。
時あたかもクリスマスイブ。場面が変わって新島で夜を過ごしている石原と中原(と二谷)。石原に「どうせ家にいたって妹の賛美歌を聞かされるだけだから」という台詞を喋らせている。直前の芦川いづみの場面と対応しているのである。芦川は敬虔なクリスチャンであることがわかり、前の場面が際立つ。
そんなこんなで、三度・四度と観れば、また新たな発見があるに違いない。