新潟に油田があることを学んだ頃

「男が命を賭ける時」(1959年、日活)
監督・脚本松尾昭典/原作菊村到/脚本山田信夫石原裕次郎芦川いづみ二谷英明南田洋子川地民夫神山繁大坂志郎近藤宏内田良平深江章喜

船医の裕次郎が開業医になるため陸に上がるものの、医院はまだ建築中で、木が乾くまでしばらく時間がかかるという。仕方ないと好きな猟に出て山で鳥を撃っていると、そこに死体を発見、すわ誤射かというところからストーリーが動く。
死体はその土地の開業医で、東京に別居していた子どもが芦川いづみ川地民夫姉弟。とうぜん芦川と裕次郎の間に、ほのかな恋情がきざす。川地は医学生で、最初裕次郎に反撥心を持つものの、亡夫のもとに盲腸の急患の連絡が入り、代わりに裕次郎が執刀してにわか助手として彼のメスさばきを間近で観たことで、すっかり裕次郎に心酔してしまう。
山を通る鉄道工事をめぐる建設会社同士の対立が大きな話の流れで、そこに裕次郎の旧友二谷英明とその内縁の妻(でも本当は裕次郎に気がある)南田洋子の二人の関係が絡む。「顔のない死体」のトリックが使われるなど、なかなかの出だしだったのだが、途中からどうも気の抜けた展開になってしまった。
見せ場は、敵側の重要人物である神山繁裕次郎らが対決する場所。それは新潟の油田なのである。あれはどういう装置なのだろうか、荒野のなかに、木で作られたポンプのような棒が何本も立ち、風に吹かれて動いているかのようにキコキコと音を立てている情景が、実に殺風景で、逆にそうした装置を知らないわたしにしてみればきわめて新鮮。
そういえば小学校や中学校の社会で、日本は石油輸入大国だけれど、唯一新潟では油田があるのだと学んだことを思い出した。いまでも採掘は続けられているのだろうか。あまり聞かない。
火気厳禁のその油田で、煙草を吸う神山繁。そのため摺ったマッチを採った石油を貯蔵する池のような場所に投げ入れて火が上がるという危なっかしさ。
火を出す場面はおくとしても、あれが油田でロケされているのであれば(新潟駅は本物のようだった)、盛んに営業していた時期の、珍しい日本の油田風景をとらえたユニークな作品ということになるだろう。