遺憾な図録品切

川瀬巴水展

この企画展を知ったのが最終日近くになってからだったのは迂闊であった。すでにホームページでは図録品切が断られていたので、観に行くことを躊躇したけれども、展示されている巴水の東京版画を観るだけでも眼福になるだろうと出かけることを決めた。
今回の展示でユニークだったのは、実際にできあがった摺りと、そのために巴水が描いた原画、原画を元にした試摺の三点がセットで並んでいたことだろう。原画から版画になる過程で色合いが変わったり、人物配置が変わったり、原画になかった細雨が書き込まれたりなど、微妙な違いに感じ入る。
そしてもちろんいつものように巴水が描く東京風景の閑かさにはうっとりだった。博物館に来ればもしかしたら図録が…という密かな期待は叶うはずもなく、やはり品切。三月時点ですでに品切だったというのだから、重版してもよかったのではないかと、いっぽうで憤慨してしまったのは巴水に悪い。