髭面の美輪明宏

「銀座退屈娘」(1960年、東宝
監督山本嘉次郎/脚本若尾徳平/中島そのみ/小泉博/柳家金悟楼/水野久美/丸山明宏/塩沢とき村上冬樹

やけに威勢が良くて甲高い声が印象に残る中島そのみという女優さんは、たぶん「サラリーマン忠臣蔵」で“堀部安兵衛”の役を演じたものを観て知ったはず。団玲子・重山規子と三人で「お姐ちゃん」シリーズで売り出されたというのは後付けの知識だ。
「銀座」と名がつくので録画しておいた映画。銀座の顔役(金悟楼)の娘で、喧嘩っ早くて腕っ節もべらぼうに強い中島そのみが、借金取り立てをめぐるトラブルに巻き込まれるという筋。取り立てにあたる弁護士が小泉博で、二人のロマンスがなかに入る。
面白かったのは美輪(当時は丸山)明宏。クラブのようなところで即興めいたシャンソンを歌う歌手役なのだが、鼻の下だけでなく顎髭もたくわえた精悍な(平井堅のような)顔だちに驚いた。唄い方や話し方は現在の美輪さんとほとんど変わらない。
でもあとでこの髭は付け髭であることがわかる仕掛け。「なあんだ、やっぱりな」となるけれど、それにしたって丸山明宏の髭面は見物であるに違いない。彼もまた、中島そのみを口説いたためぶん殴られ、伸びてしまう可哀相な人なのであった。