スター未満が集合すれば

「大学の暴れん坊」(1959年、日活)
監督・脚本古川卓巳/原案城戸禮/脚本高岩肇/葉山良二/赤木圭一郎芦川いづみ内田良平梅野泰靖/稲垣美穂子/佐野淺夫/白木マリ/藤村有弘/二本柳寛/野呂圭介

田舎から東京に出てきて、東京の大学で柔道部にいるのが赤木圭一郎。彼はスポーツ万能で、しかも手加減を知らず、柔道の試合で相手の梅野泰靖を怪我させてしまう。また、ラグビー部からも応援出場の要請を受けるが、試合で敵の選手にタックルするとき柔道技をかけて投げ飛ばし(!)これまた怪我をさせてしまうという野生児なのである。
彼をやさしく指導するのが、大学の先輩で弁護士の葉山良二。いちおう主演は葉山なのだろう。芦川いづみは梅野の妹役で、葉山と仲が良い。
拳銃無頼帖シリーズの赤木圭一郎がいいためか、そうではない本作品について、渡辺武信さんの評価は低い。「なによりも、ここには後年、彼をスターの座に押しあげた、つねに孤独な男の哀しみを発散する視線の神話的な魅力がない」(『日活アクションの華麗な世界』179頁)というのである。
そう言われれば何も反論できないのだが、いっぽうで、まだ赤木圭一郎一人をスターとして遇するのではなく、裕次郎小林旭も出ていないこのような作品ゆえに、出演者一人一人がそれなりの見せ場を持って存在感を見せている点、なかなか面白いものだった。
芦川いづみファンとしては、例によって“男中心の映画”ゆえに彼女が目立たなかったのは残念なのだが、内田良平も、梅野泰靖も、白木マリも、佐野淺夫や野呂圭介でさえも、それぞれの見せ場がある。
とりわけラストのアクションシーンでは、泥酔した梅野泰靖が喧嘩しながら柔道技をかけまくって相手を倒すのが、ジャッキー・チェンの「酔拳」を思わせてなかなか。完全に一人で主役の看板を背負いきれない人たちが集まる映画には、それなりの楽しみ方があるだろう。