都筑映画の傑作

ヤバいことなら銭になる」(1962年、日活)
監督中平康/原作都筑道夫/脚本池田一朗山崎忠昭宍戸錠長門裕之浅丘ルリ子/草薙幸二郎/左卜全/武智豊子

都筑道夫『紙の罠』(本の感想は7/24条)の映画化。これが都筑作品のもっとも早い映画化らしい。そういう流れでこの映画を知り、さらに おおさかあゆむさんとのやりとりに刺激を受け、たまたまチャンネルNECOで放映されることを知り、録画することができた。
加えて興味深いのは、いつも楽しく拝見している「黌門客」(id:higonosuke:0807)において、中平康作品のなかでの位置づけ、また、「『ルパン三世』のオリジン」という評価があるという指摘がなされていたこと。こうなると録画したまましばらく放っておくわけにはいかなくなった。
一見、面白い! 都筑映画は以前『なめくじに聞いてみろ』の映画化である岡本喜八監督の「殺人狂時代」を観たことがある(→6/6条)。これと比べると、原作は『なめくじ〜』が勝ち、映画は「危い〜」が勝ちといったところだろうか。
紙幣印刷用の紙が盗まれ、それを刷るために敵味方入り乱れて製版職人(左卜全)を奪い合うという単純にしてスリリングなストーリーが幸いしたのだと思う。原作と違うオチにはびっくりしたが(このオチは原作がよりミステリ的どんでん返しがあってすぐれていた)、一つの話としてはすっきり完結している。
出演者のなかでは、やはり浅丘ルリ子が素敵にキュートで惚れ惚れしてしまう。笑顔も、ぷっとふくれた顔も、しかめっ面までも可愛い。アクション映画のヒロインとして大上吉。
その浅丘が時速20キロしか出ない、紙幣用紙を積んだポンコツ車を運転して東京の町中を走りまわるシークエンスがゾクゾクする面白さ。昭和30年代後半の東京。都電がまだ走るなか、軌道の石畳が中央に敷かれた大通りの交差点上でエンコし立ち往生するあたり、見飽きない。あの交差点はどのあたりなのだろうという興味がストーリーにまさってしまう。たぶん日活アクション映画は、どれもこんな楽しみ方ができるのだろうな。
映画の細かな演出や、日活アクション映画、中平作品のなかでの位置づけなど、大きな文脈のなかでこの映画がどのような意義をもつのか、そのあたりはhigonosukeさんのご感想を楽しみに待つことにしたい。
監督の中平康といえば、最近読んだ茺田研吾『脇役本』*1(右文書院、→8/1条)のなかで、渋い脇役の菅井一郎を撮影中の映画からおろしたため、菅井の著書で痛烈な恨み言を書かれた監督として印象に残っている。