巴水を買いに

十和田湖

  • 平木浮世絵美術館

クリスマスで賑わうららぽーと豊洲の平木浮世絵美術館に行く。
先日ここを訪れたとき(→11/26条)、川瀬巴水の版画作品が限定販売(70枚)されていたのを知り(もっとも知ったのは会場でなくホームページだったかもしれない)、心を動かされた。しかも額入り。昨年新居に越したとき、家人とのあいだで、玄関かリビングの白い壁面にピクチャーレールを取り付け、いずれは絵を飾りたいという話になっていたが、ようやくそれが実現しようとしている。
以前この美術館で「川瀬巴水と吉田博展」が開催されたとき(迂闊にも知らなかった)、それを記念して制作されたのだという。

風景版画家としての巴水の画名が高まっていた昭和2年、大阪毎日新聞東京日日新聞が企画し、鉄道省の後援により、美術社から「新日本八景」大判8図が刊行されました。その後、好評を受けて中判に仕立てた作品が制作されています。その8図の内、「十和田湖」の版木が発見され、この度、限定出版いたしました。(美術館ホームページ)
というもので、画題は「十和田湖」。値段は額付きで12600円と、わたしでも購入できる値段である。入り口で購入希望を伝えたところ、館内に展示中の展示品しか残っていないとのことで、それをそのまま包装してもらい受け取った。最後の一枚ということなのだろうか(電化製品と違って展示処分品として安くはならなかった)。
たまたま臨時収入(新著の印税ではない。その発売日とおなじころ、BS日テレの某番組に出演した出演料)が入ったこともあり、思い切って購入した。渡邊木版美術画舗でもまだ巴水作品は入手可能だけれど、こちらは額付きで3万近くする。買えないこともないが、ちょっと買う勇気がない。長いことあこがれていた巴水作品をわがものにすることができた喜び。自分へのいいクリスマス・プレゼントになった。欲を言えば、和田誠さんの絵が一枚ほしい。
豊洲から自宅に帰る途中、昨日映画で観た白鬚橋を車で渡った。昭和33年の白鬚橋のおもかげはまったくない。あのあたりに久保明水野久美は手紙を隠したのかと、運転しながら白鬚橋のアーチに目をやる。もちろんそんな“白鬚橋の秘密”を同乗していた家族は知らない。