池袋モンパルナスふたたび

池袋モンパルナス展

1930〜40年代を池袋モンパルナスで過ごした画家のうち、板橋区にゆかりのある寺田政明(俳優寺田農さんの父)・古沢岩美・井上長三郎を中心に、池袋モンパルナスに暮らした画家たちの作品を展示した展覧会。
板橋区立美術館を訪れるのは二度目。4年半ぶりだ。以前も池袋モンパルナス展だった(→2007/3/18条)。このときの図録が手もとにないので、何を観たのかすっかり忘れてしまっている。
今回はやはり、長谷川利行松本竣介靉光の三人かなあ、と思う。長谷川利行では、大作の「水泳場」。以前観たことがあるのかどうか、これまた忘れている。少なくとも、2004年に練馬区立美術館で観た「小熊秀雄展」には出ていない(→2004/9/23条)。長谷川利行展の図録にも載っていない。目を近づけると、絵の具をこってりと盛りつけたマティエールに圧倒され、いったい何を描いているのかわからないのだが、離れて経つと、混み合うプールの情景が浮かび上がってくる。“白の長谷川利行”の明るい絵だ。
利行の「靉光像」と、靉光自身による「自画像」を見比べるのも一興。今回展示されていたのは、2007年に東京国立近代美術館で開催された靉光展図録の表紙にもなっている、有名な“白衣の自画像”だ。前述の小熊秀雄展では、利行の靉光像と、靉光の別の自画像「梢のある自画像」を見比べている。会場がそれほど広くないので、利行の絵と靉光の絵を交互に見比べることができるほどの距離にこの二作品が展示されている。
靉光作品からは、これも有名な「シシ」と、宮城県立美術館洲之内コレクションの「鳥」が並ぶ。洲之内コレクションといえば、「鳥」のほか、長谷川利行の「酒祭り・花島喜世子」と、松本竣介の「ニコライ堂」が出ていた。松本竣介はほかに「建物」「自画像」「りんご」と合わせて四作品。暗い色調の作品群で、この一角が独特の雰囲気になっている。
田英夫の作品(「婦人像」)を観ることができたのも嬉しいが、その隣にあった北川民次という画家の「ランチェロの唄」という作品が、今回もっとも気になった絵となった。何でも北川は20代の頃からアメリカやメキシコで暮らしたという。野田作品と並んで、エスニックな雰囲気をたたえた、そこはかとなく哀愁も漂うあたりに惹かれる。今後要注目の画家である。