時間感覚の不思議

先週金曜夜のブリヂストン美術館に味をしめて、また金曜夜に美術館に行く。ブリヂストン美術館は京橋にあるが、今度は竹橋。東京国立近代美術館である。実はこの美術館もブリヂストン創業者の石橋正二郎氏と深い関係にある。現在の建物は、石橋氏によって寄付されたものなのだ。それを考えると、石橋氏が日本における近代美術の収集と展示に果たした役割は絶大なものがあると思わざるをえない。
この竹橋の美術館も金曜は20時まで開いており、仕事帰りに立ち寄ることができる。今年は東京国立近代美術館は開館60年を迎えるのだそうで*1、いつも訪れる常設展フロア「所蔵品ギャラリー」はリニューアルのため夏季閉鎖されるのだという。ただしリニューアル後の10月から、開館60年記念特別展として、「美術にぶるっ! ベストセレクション 日本近代美術の100年」という所蔵作品展が開催されるそうだから、楽しみだ。
金曜の仕事帰りに訪れることは何度かあったが、これまでとくらべ、連れだって観に来ている若い女性が多く、全体的に人が多いように感じ、所蔵作品展もだんだんメジャーになってきたのかと思っていたが、どうも少し違っていたようだ。いまちょうど企画展ギャラリーにて、ジャクソン・ポロック展が開かれており、それを観に来た若い人たちが常設展にも流れてきたようなのである。
ポロックという名は耳にしたことがあるものの、その作品をあまり知らない。そもそも現代美術は苦手である。所蔵作品展でも、3階右手奥や2階にある現代美術の空間はほとんど観ないで素通りである。特設ミュージアムショップも賑わっているし、石井竜也さんが音声ガイドを担当しているということも人気の一因なのだろう。
しかしわたしは、展示フロア4階右手奥にある佐伯祐三の「ガス灯と広告」をひと目見てその空間に癒され、一週間の疲れを吹き飛ばすことができたし、松本竣介「Y市の橋」の静寂に頭の中がきれいになった。日本画では速水御舟。「いいなあ」と思う絵のキャプションを見ると、たいてい速水御舟なのである。わたしの好みと画風がぴたり合うのだろう。今回も展示されていた「ひよこ」を見て同様に感じたら、やはり速水御舟作品だった。なぜだろう。
それにしても、ブリヂストン美術館を訪れてからまだ一週間しか経っていない。ずいぶん昔のことのように思えてしまう。だからといって、この一週間が長かったと感じたわけでもない。むしろあっという間に一週間が過ぎたという印象なのだ。なのにブリヂストン美術館体験だけが遠い昔のよう。時間感覚の不思議である。