銀座に川があった頃

「銀座化粧」(1951年、新東宝
監督成瀬巳喜男/美術河野鷹思田中絹代/花井蘭子/東野英治郎/堀雄二/香川京子

映画はスクリーンで観るのがベターである。映画館という空間が苦手な私でもそう思う。家で観ると、とりわけ録画しているものを観ると、一回限りという緊張感が乏しく、集中力が欠ける。楽しみにしていた「銀座化粧」だが、ソファでウトウトしながら観る仕儀となってしまった。
グラフィック・デザイナー河野鷹思が唯一成瀬監督と組んだ作品。といっても私は河野鷹思のことをほとんど知らないのだが、たぶん、タイトルバックのモダンな図柄や田中絹代が勤めるバーの内装などに特徴があらわれていたのではあるまいか。
この映画では、銀座・新富町あたりがよく映っている。銀座にはまだ川があった。川本三郎さんの『銀幕の東京』*1中公新書)によれば、あれは築地川だという。三島由紀夫の「橋づくし」にも描かれている界隈だ。再見を期したい。
最終的に田中絹代が憧れる年下男性を奪ってしまうかたちとなる、田中の妹分香川京子が可愛い。このころの香川京子に心惹かれる。