原作にかなり忠実

「渡された場面」
原作松本清張三浦友和佐野史郎高岡早紀石倉三郎寺田農

前日、たまたま大学生協書籍部で松本清張の『Dの複合』を買い求めようとしたとき、近くに並んであった『渡された場面』に見慣れぬ帯がかけられていることに気づいた。訝しく思い棚から抜いてみたところ、テレビ東京系でドラマ放映決定という宣伝の帯だったのである。ドラマ放映日の前日に知るというあたり、まだ天は我を見はなしていない。
ドラマは原作に忠実でなかなか良かった。むろんそこは「ドラマ」だから、中央文壇志向の地方在住作家佐野史郎に殺されてしまう高岡早紀の人物像、捜査を指揮する三浦友和の人物像がそれぞれ深く掘り下げられている。原作はもっともっと冷淡(とりわけ高岡早紀の役に)だったはずだ。
九州と四国で起きたまったく無関係の殺人事件が、ある小説の文章をきっかけに結びつくというストーリーの妙に、あらためて感じ入る。
原作では、読書好きの高岡早紀が読んでいる本が、林芙美子の『放浪記』という設定だった。現代のドラマだから、このあたりきっと変えられているに違いない、変えられているとするなら、どんな小説になっているのか、興味深く見ていたら、何と『放浪記』そのままだった。