憲兵成田三樹夫と懐かしの玉川良一

「新・兵隊やくざ」(1966年、大映
監督田中徳三/原作有馬頼義舟橋和郎勝新太郎田村高廣/瑳峨三智子/成田三樹夫/神田隆/藤岡琢也玉川良一/見明凡太朗

第二作(→2/2条)ラストは、部隊のトラックを強奪した勝・田村コンビが、小山明子を拾いあげたあと兵営内をさんざん暴走したあげく脱走し、途中小山明子を降ろしたところで終わった。
この第三作は、そのあと二人の乗ったトラックがガス欠してしまうところで幕を開ける。車を捨て徒歩で逃げる途中八路軍に襲われるが、間一髪のところで八路軍を攻撃した日本軍部隊により救われた。ところがその部隊に強制的に編入されてしまう羽目に。兵隊やくざ DVD-BOX 上巻
その部隊は「鬼部隊」と呼ばれる厳しいところで、訓練のきつさに音をあげた二人はここも脱走*1、天津までたどりつく。金のない二人は天津の軍倉庫にある物資を盗み、それを横流しして稼ごうとする。偶然出会った見張り兵藤岡琢也(豊後一等兵)は二人の素性を見抜くが、逆に二人に好意的に接し、物資強奪に協力する。
横流しして儲けた金で二人は女郎屋に遊ぶ。ところがそこに訪れた憲兵二人(神田隆・成田三樹夫)にお気に入りの瑳峨三智子を奪われ面白くない。そこで店のおやじは勝を博奕に誘い込み、まんまと有り金すべてを巻き上げられてしまったばかりか、借金もこしらえる。結局女郎屋の下働きでそれを返す羽目になったが、そこでの娼婦たちの待遇に憤った二人は娼婦たちを連れて逃げ、別の場所で女郎屋を開業したところまではいいが、そこに憲兵伍長の成田三樹夫が乗り込んできて、二人の旧悪を暴くという流れ。
いよいよ本作で鹿島茂さんが強く推す成田三樹夫が活躍する。たしかに鹿島さんの指摘するとおり、拳銃早撃ちの場面は「成田屋!」のかけ声をかけたくなる名場面だった。
過去の罪状をネタにゆすってきた成田三樹夫に対し、勝・田村は取り引きを拒絶、拘引されて散々な拷問にあってしまう。とうとう成田三樹夫の手で処刑されることが決まるが、その直前、成田の隙をついて勝が成田をボコボコに殴り倒し、神田隆率いる憲兵部隊で大暴れして逃げてゆくといういつもの幕切れ。
いかにも冷酷無比という憲兵に似合いの成田三樹夫だったが、結局勝新太郎にボコボコにされてしまう無残な結末となった。第一作からそうだが、この映画でのボコボコ・メイクは観るほうも痛くなってくるようなひどいもので、格闘シーンは毎度息をのんでしまう迫真のものだった。ひどく殴られた勝が口から血のまじった唾液をはき出すシーンは毎度目をそむけたくなる。
本作では、勝と瑳峨三智子が祝言をあげるというので、藤岡琢也に無理矢理連れてこられた本職僧侶の同僚玉川良一(上州一等兵)が、二人の前で結婚式のお経(?)をあげるというシークエンスが笑えた。読経しながら、列席している人間はどうせお経などわかりっこないだろうとたかをくくり、途中から浪花節を唸りはじめたところ、やはり浪花節を愛する勝がこれに気づいて玉川良一をジロリと睨む。
玉川良一、うーん、懐かしい。

*1:勝は風呂に入って気持ちよく浪花節を唸っていたところに田村に促され、全裸で部隊を脱走する!