危険なヒーロー信号

「続・兵隊やくざ」(1965年、大映
監督田中徳三/原作有馬頼義/脚本舟橋和郎勝新太郎田村高廣小山明子水谷良重芦屋雁之助芦屋小雁/上野山功一/睦五郎/須賀不二男

前作ラスト、南方派遣となった所属部隊が汽車で移動している途中で、機関車を乗っ取り、機関車と客車を切り離すことに成功して、まんまと脱走に成功するという痛快な場面で終わった。この第二作はここから始まる。兵隊やくざ DVD-BOX 上巻
乗っ取った機関車が走る線路に爆弾が仕掛けられており、二人は機関車ごと吹き飛ばされ、気づいてみれば陸軍野戦病院。大けがをして寝ている二人のところに憲兵(むろん成田三樹夫ではない)がやってきて、機関車の件で尋問を受ける。いつ、誰が機関車と客車を切り離したのか知らないと白を切り通し、切り離されたおかげで部隊全体に被害が及ばなかったのだからよかったではないかとうそぶく。
憲兵のほうも、中国のゲリラによる線路爆破を明るみに出したくない事情もあって、結局二人の脱走という軍規違反は免罪となる。このあたりはよく考えられている。
所属部隊はとっくに南方に送られたため、いよいよ除隊、内地帰還だとそわそわしながら準備している二人のもとに、別の部隊への転属命令が言い渡され、田村高廣は憤る。
この作品では、転属先の北支独立守備隊のなかでの二人の活躍が描かれる。また、入院した陸軍病院で二人を看護した美貌の看護婦小山明子(ホントにきれい)に勝新太郎が惚れてしまうというロマンスも入ってくる。一人で一番風呂につかり、浪花節をうなっていた勝を上官と見間違え、背中を流してしまう二人の軍曹(芦屋雁之助・小雁)とのやりとりもあって、ユーモアに富んでいる。
いっぽう前作ほど苛酷な制裁場面は多くないのだが、軍隊内部の不条理なリンチは健在。日本人と限定すべきなのか、軍隊という組織に限定すべきなのかわからないが、人間が集団になると狂気を帯び、それが暴力となる恐ろしさ。集団(組織)というものからは距離を置き、客観的に眺めるにしくはない。
二人の反軍隊的行動もますますヒートアップして痛快きわまりないのだが、逆にヒーローになりすぎ、話が二人の反軍的ヒーロー物語に単純化してしまうのではないかという懸念をもつ。果たして第三作、成田三樹夫が登場してどうなるのだろう。