あわれ田中邦衛

兵隊やくざ脱獄」(1966年、大映
監督森一生/原作有馬頼義/脚本舟橋和郎勝新太郎田村高廣小川真由美田中邦衛中谷一郎/草薙幸二郎

さすがにシリーズ第四作ともなると、観る方としても惰性になりかかってきていけない。
兵隊やくざ DVD-BOX 上巻前作ラスト、憲兵隊営舎内で大暴れした挙げ句サイドカー付オートバイで脱走した二人だが、逃走中結局また軍に取り囲まれ、脱走兵として陸軍刑務所送りになる。処刑覚悟で厳しい刑務所暮らしを強いられた二人に幸運だったのは、処置を担当する将校が田村と大学で同期の中谷一郎だったこと。中谷のおかげで二人は処刑をまぬがれたものの、ソ満国境地帯の最前線にある部隊への転属となる。
今回の作品はボコボコシーンはさほど多くない。そのぶん精神的なネチネチいじめが出てくる。勝新太郎をして、「これまで出会った奴のなかで一番タチが悪い」と言わしめたのが、その国境部隊にいる軍曹草薙幸二郎。いずれ身請けして一緒に内地に帰るつもりであった娼婦小川真由美が勝に入れあげているので面白くない。
陸軍刑務所にいたとき、勝と仲良くなった模範囚が田中邦衛。彼は兵舎で盗みを働いたため刑務所にいたが、模範囚だったため一足先に釈放される。国境部隊に赴いた二人は、偶然そこの部隊に配属されていた田中と再会する。
この映画で哀れなのは田中邦衛だった。小川真由美を身請けしたい草薙は、田中を騙して外出させ、それを追いかけ脱走兵だとして射殺してしまう。殺した目的は、田中が内地に帰るときのために密かにため込んでいた翡翠のかけらだった。草薙はその翡翠を奪い、換金して小川を身請けしようとしたのだった。
とうとうソ連が日本攻撃を開始したとき、草薙は真っ先に逃げ出す。田村と勝はこれを見逃さず、田中の仇を討つのである。
さて次作にまた成田三樹夫が登場する。どういう展開になるのだろうか。