国民的作家の人気

阿佐ヶ谷で映画を観たあと、中央線・総武線でまっすぐ両国まで。江戸博で開催中の「漱石展」を観る。先日観た「東北大学の至宝展」同様、先生から招待券を頂戴していた。ありがとうございます。
入口に漱石等身大人形がお出迎え。復元した声が自著の一節を朗読している。その声は、うーん、誰の声に近いだろうか。波平さんか、あるいは信欣三か。思っていたより軽い。「江戸っ子の気むずかしいおやじ」が似合う声。
読書メモがびっしり細かな字で書き込まれた紙片やノート、書き込みの入った蔵書を見ているうち、かつてこれらを東北大学附属図書館の特別収蔵庫で直接見たことをやはり思い出してしまった(→9/1条)。
あのときはこうした本を直接手にとって見ることができたのだが、なにぶん洋書がほとんどであり、書き込みも英語なので、ただたんに「漱石の肉筆を間近で見た」ということにしかならなかった。今回のように一定の意図のもとに体系づけられ、展示されている蔵書やメモ類を見ると、よりいっそう漱石の息づかいがリアルに感じられるような気がする。
それにしても人が多い。日本人は夏目漱石が好きなのだなあ。
ミュージアムショップでは、漱石グッズがいろいろ並んでいた。定番のTシャツやマグカップ漱石の著作など。
こころ動かされたのは、「漱石風つけ髭」。ちゃんと白髪も交じって、漱石の気分になれるつけ髭は、なんと4200円! それだけ本格的なものなのだろう。いや、「本格的なつけ髭」が4200円程度ですむものなのか、わからないけれど。
もちろんつけ髭を買うほど酔狂でもなし、お金もないので、漱石山房原稿用紙を小さくした一筆箋を購う。600円なり。東北大学が、仙台の和菓子の老舗白松がモナカ本舗と共同開発したという、「漱石の愉しみ」と名づけられた“漱石羊羹”も売られていた。漱石の初版本を模した小箱に入れられている。
先生から話には聞いていたものの、現物を見るのは初めて。まあこれはいずれ仙台に行ったときにでも買うことにして、今回はあえて見送った。どこの大学も法人化であれやこれやのグッズづくりに大変なようだ。