刑務所で観た記憶
単純化すれば、会津磐梯山にやってきた風来坊(小林旭)が、地元のバス路線開通にあてこんで元湯のある土地を買い占めようとする組織から、土地を持っている牧場を守ろうとする話。悪のリーダーが大坂志郎、手下の頭が近藤宏。守ってあげる側が浅丘ルリ子・白木マリ。旭のライバルとして宍戸錠が登場。
大人になってから「渡り鳥」シリーズを観たのは本作が初めて。渡辺武信『日活アクションの華麗な世界』*1(未來社)によれば本作が五作目。大坂志郎がたんなる悪ではなく人間的で、「第三の悪玉」として深江章喜が登場していることが特徴的であるという。
この作品を観ただけでシリーズとしての位置づけはさっぱりわからぬものの、この映画では、白木マリ・近藤宏・深江章喜という脇役の存在感があったという印象だった。
磐梯山麓の日本離れした風景に、ギターを持って馬にまたがった日本人離れした主人公。それだけで笑え、物語に惹き込まれてしまうのだが、二回ほど登場するJR福島駅の昔の駅舎のたたずまいがとても素晴らしく(赤煉瓦東京駅を木造にしたような雰囲気)強烈な印象に残った。
ところで標題を「刑務所で観た記憶」とした。小学生の頃、町内会の催しで映画上映会があり、町内にあった山形刑務所の講堂で観たのがこんな雰囲気の映画だったことを思い出したのである。
書いてから、かつて「町内会で観たような映画」と題し、小林旭の別のシリーズ物「暴れん坊」シリーズ3作(「東京の暴れん坊」「でかんしょ風来坊」「夢がいっぱい暴れん坊」)の感想を書いた中で、これらの作品を刑務所で観たことがあるような…としていることを思い出した(2006/2/10条)。先に「大人になってからこのシリーズを観たのは初めて」と書いたのは、その意味である。
記憶はあやふやだが、主人公が小林旭であることは奇妙に一致している。でも暴れん坊シリーズよりは、ガンアクションの入った無国籍風のこのシリーズのほうが該当しそうな気がする。吹き替えだろうが、宍戸錠が賭場で小林旭とポーカー勝負をしているときの華麗なカードさばき、先日観た「南國土佐を後にして」での旭のダイスさばきといい、トランプを切るときのカードさばきもまた、わたしたちの子供時代、それをやれる人は人気者だった。やっぱりこの小林旭映画の影響というのは、70年代にも及んでいたのか。